11261002
6時過ぎごろに自動車の走る音で一度起こされ、耳栓をしてもう一度寝たけど8時ごろにカラスが群がって鳴く声でまた起こされた。もういいかと思ってそのまま起き上がった。今は、垂水市の中心からちょっと南のところにある”財宝”というミネラルウォーターを販売している会社がやっている「薩摩明治村」という温泉宿泊施設のすぐそばにある小さな小屋(「山小屋」と呼ばれていた)のそばに置いた家の中でこれを書いている。明治村で敷地を借りようと思ってフロントでスタッフの女性に話をしたら、電話をかけてくれてここを貸してくれた。親戚が持っている土地で、いつもは車を停めさせてもらっているらしい。電話口で「小さい家で絵を描いてるっていう人がね、一晩絵を描くために置かせてくれないかっていうから、あのいつも私が車止めてる山小屋のところ、どうぞって言っていい?」という感じで電話で一生懸命説明してくれた。しかしその女性はめちゃくちゃ忙しそうにしていて(多分土曜日で客がたくさんいたというのもあるんだろう)、その電話を切ったあと、僕に案内をする間も無く、まずスタッフが一人きて宴会の人数が変わっという話をしたりそれが終わるころに電話がかかってきて予約の説明をしたり、それがおわったらまた電話が来たり、とにかくものすごく忙しそうにしている。
僕はそのあいだ、フロントの向かいにある商品棚をみていた。「財宝」ブランドの化粧品や何種類もの焼酎やらが並んでいる。水の販売というとっかかりからこんなにいろいろ商品展開ができるもんなのか。ここには温泉もレストランもある。
電話がひと段落して、この敷地を案内してもらった。忙しいのにすみません、というと「いえいえ~」と。そのあと家を置いて、近所を散歩した。その敷地はすこし山を登ったところにあり、坂の上から海沿いの住宅街が見える。坂を下って行くと、海岸線と平行に走っている道路の海側に「財宝ショップ」という、財宝の商品を扱っているらしき店があり、焼酎の種類が豊富な酒屋があり、ファミリーマートがある。それらの店の向こう側はもうすぐ海になっている。ファミリーマートで缶ビールを買って飲みながら砂浜をぷらぷら散歩しはじめたけど割とすぐに寒さがきつくなって缶ビールを飲みきれずに捨てて坂を登って明治村の温泉に向かった。温泉は古里温泉郷と違って透明で塩っぽくもなかった。看板に「3万年前の温泉」と書いてあった。温泉は深く掘ると透明になるのかもしれない。
風呂から上がったあと「財宝レストラン」にいってカンパチ漬け丼定食と「芋焼酎 財宝スペシャル」のお湯割を飲んで950円。安い。しかし財宝という名前はストレートすぎて書いていても馴染んでこない・・。はじめ、フロントの商品棚に”財宝”と書かれた商品が並んでいるのを見たときは「ここは不用意に入って大丈夫なのか?」と無駄に警戒してしまった。結果的に従業員はみんなとても愛想がよくて良い店だった。そのあとファミリーマートに行って歯を磨いてぷらぷら歩きながら奈保子と長電話をして寝た。お金はどんどん使わせた方がいいという話をした。作品鑑賞にお金を払うことに抵抗を感じる空気が腹立たしい。消費も低迷するわけだ。お金は使った方がいい。
それと桜島の画家N氏の話も。彼の「絵で食っていかなきゃいけない」という責任の取り方、僕の解釈だとこういうことだ。
「私のこんな方法論でも、この社会にとって価値があることを証明しないといけない。価値があることを証明するためには、私は絵画で食っていかなければいけない。」
これには痺れた。
「絵では食えない」とか「才能がない」とか、人をナヨナヨさせる思考をするのが得意な人間は大勢いるが、それとは真逆の考え方。
例えば「ギャラリーの運営だけでお金をやりくりするのは難しいから、他に定職を持って、それが休みのときにギャラリーをひらく」という方法もあるけど、それは彼の考え方でいくと「趣味でやっている」みたいなことになると思う。その方法論には価値があると思うなら国にお金を請求してもいいと思う、と彼は言っていた。
財宝といいN氏といい、鹿児島はすごいところだ。
雨がぱらぱら降っている。この天気だと絵が描けない。どうしたもんか。
昨日は、午前中のうちに古里温泉郷を出発した。朝起きてすぐに、唯一の食料であるおにぎりを食べてしまったからだ。急がないと空腹で動けなくなると思った。しかししばらく、お金がおろせて食べ物が帰るお店(つまりコンビニか)はなかった。けっこう歩いて、そろそろエネルギーがほしいと思ったころ、遠くの方にローソンの看板が見えた時は嬉しかった。ローソンで「鶏飯」とパンとスムージーを買って駐車場で食べた。
古里温泉郷から、東に歩いて、桜島口という地点から大隅半島に入り、合計14キロくらい歩いて垂水のこのあたりに到着した。かなり休み休み歩いた(ローソンの次によったセブンイレブンでは電源とWifiと椅子があるのをいいことに1時間くらい滞在した)ので14キロも歩いた感じがしない。ずっと海沿いを来たけど幸い風もなかった。今日はここから南に下っていく。