04250759

大町に購入した中古物件に引っ越しつつある。僕の部屋にもともとあった、おそらく20年以上前に製造された密閉式石油ストーブのスイッチを今日初めて入れてみた。2回くらい消火と点火を繰り返してみたのだけど、チッチッチッチ……という小さな音が鳴るばかりで、10分以上経っても点火しなかったので諦めかけていたのだが、3回目につけたとき、キュイイ……というやばそうな音と共にそいつは動き出した。突然爆発したらどうしようと壁に隠れて見守っていたのだけど、大袈裟な音ばかりでしばらく経っても火が点かない。これ以上続けたら本当に爆発するのではと思ってツマミを消化に合わせた直後、送風口から確かに温風が出ていることに気がつく。壊れていなかった。売主から「壊れてるんじゃないですかね」と適当なことを言われていたそいつは、壊れていなかったのである。オオォンと不器用な音を奏でつつも、確かに火は点き、暖かい風を送ってくれているのだ。スター・ウォーズにありそうな、古い宇宙船のスイッチを何十年かぶりに入れるシーンみたいだ。失われた文明の遺産がここにあり、こいつは点火されるのを待っていた。もう壊れてるだの使えないだのと、試してもないのに勝手なことを言う人間なんぞの意識よりもはるかに長い命を、このストーブは持っていたのである。僕は思わず「すごいなお前」と撫でた。

Posted by satoshimurakami