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 昔、友達と散歩していて、酒を飲もうということになった。空はまだ明るかったが、僕たちはお互いに酒好きであるということを知っていた。コンビニに入り、安いウイスキーの小瓶とプラカップと袋入りのロックアイスをカゴに入れ、レジに向かった。すると店員のおじさんがレジを打つ前に「これ、ロックで飲むの?」と聞いてきた。「はい、そうしようかと」と僕が答えるとおじさんは「そこのアイスの棚のところに、カップ入りのアイスがある。そっちのほうがいいよ」と言って、にやり、という言葉がぴったりの笑顔を浮かべた。思わぬ提案に驚いたが、気がつけば僕たちもおじさんに触発され、にやり、と笑みを浮かべていた。特に友達のほうは、絵に描いたような悪い顔であった。
 たしかに袋入りのロックアイスは量が多すぎるし、プラカップも五個入りしか売っていなかったので、二人では余ってしまう。最初からカップに入っているアイスを買えば、買い物もひとつですむ。
 僕たちはおじさんに、この素晴らしい提案のお礼を言って、袋入りのロックアイスを商品棚に返し、彼のいう通りカップ入りのアイスをふたつ手にとり、お金を払ってコンビニを出た。店の前ですぐにカップを開けてウイスキーを注ぎ、乾杯をした。夏の夕方。どこからか蝉の声も聞こえてくる。まさかコンビニで、こんなにマジカルで素敵なことが起こるなんて思っていなかった僕たちは、店員のおじさんの半生を想像しながら、それを肴にウイスキーを煽り、坂道を下っていった。
きっとおじさんはこの方法を自分で編み出し、時々そうやって酒を飲んでいるんだろう。おじさんの口調からは、そんな姿が容易に想像できた。

Posted by satoshimurakami