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私は技術を持っている、と私は思っていない。私は技術を持っている、と思うためには、私以外の人間が持つ技術と、私が持つ技術とはおなじ地平にあり、それぞれに優劣をつけることができる、と信じる必要がある。私はそれができない。どうしても、人間はそれぞれに固有の「場所」のようなものの上にいて、たとえばある土地の地名の由来に関する昔話と、まったく別の土地の昔話とを、どちらが優れているかと考えるのがナンセンスであるのと同じように、あるいは異なる言語同士に優劣をつけることができないのと同じように、人間と人間は最初から最後まで、何一つ比べられるものを持っていない、という認識から逃れられない。

なので私は、人になにかを教えるということがとても苦手であるし、人から教えられることもあまり得意ではない。

しかし、そうも言ってられない現実もあり、わたしが感じたことやわたしなりの技術を、人に教えるべきタイミングは存在する。そのような機会がこの歳になって増えてきたように思う。私は技術を持っている、と私は考えを改めるべきなんだろうか。

Posted by satoshimurakami