08222158人間の名前について

だいぶ前に出会って、そのときは数日にわたって同じ建物の中でご飯を食べたり夜遅くまで話し込んだりして、とっても楽しい時間を過ごした人たちと、このあいだ路上でばったり出くわした。向こうから「村上さん!」と声をかけてくれて、振り返って顔をみた瞬間にその時の記憶が蘇ってテンションが一気に上がったのだが、しかしとっさに名前が思い出せなくて、相手の顔を指差して

「あー!なんだっけ!なんだっけ!」

と騒いでしまった。相手は笑って名乗ってくれて、お互いに再会を喜び、その場はいい感じで別れたが、名前が思い出せなかったことがずっと悔しい。今回はたぶん「なんだっけなんだっけ!」というハイテンションが功を奏して、「一緒に過ごした時間のことはしっかり覚えてるけど、名前だけがちょっと思い出せない!」という言外のメッセージが相手に伝わってくれたおかげで、おそらく嫌な印象はもたれなかった。しかし、ちょっとでも対応を間違えていたらと思うとぞっとする。

名前というものは、本来はその人を表している記号のひとつに過ぎないはずだ。名前がわからないからと言って、一緒に過ごしたかけがえのない時間まで忘れたわけではない。「名前を忘れている」という事態は、ただ単に名前だけを忘れているにすぎないのだが、無駄に関係を気まずくしたりする。不必要に後ろめたく思ってしまう。自分の心の動きが納得できない。「名前を覚えているかどうか」を、深刻に受け止めすぎている。最初から最後まで名乗らなかったけど、一生の思い出になっている出会いだって十分にありえる。名前がなにかを代表してしまっている。

しかし今回の一件から、わからないときは「なんだっけ!」と聞いてしまった方がよいと思った。今後はこれでやっていこうと思う。

Posted by satoshimurakami