今日は、吉原の展示のとき、手伝いできてくれた人のところに家を置かせてもらう。ここも杉並区。

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アパートの門が狭く、家は門をくぐらなかった。しかしなんとしても敷地内に入れなくちゃ、警察やらなにやらに怒られるので、塀の上からベランダに入れようとしたのだけど、入らなかった。

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これでも一応敷地内に入ってるから、セーフではあるのだけど、不安定なうえに目立ちすぎるので、やむなく、隣の部屋のベランダに、置き手紙と一緒に入れることにした。

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引き続き家は杉並におかせてもらう。なんかいろいろあって、御茶ノ水美術学院の芸大先端コースで一時間くらい授業をするなど。こういう形で話をするのは、自分の整理にもなって良い。みんなまだ高校生なのに、ポートフォリオのためもあり、もう作品を作っていた。一人の子が自分の作品について話すとき、「これが自分の作品だって、自信を持って言えない」というような事を言っていた。その気持ちは身に覚えがある。自分の感性が、借り物でしかないんじゃないかっていう感覚。だからそのころはプレゼンがきらいだった。そういう人は美大の中でもたくさんいた。なんでこんなことになるんだろう。

今日は、はじめて自分の家を離れたところに泊まることになった。そこで話していて思ったことがある。2011年の震災のとき、逃げなくちゃという気持ちも感じつつ、なぜか動けなかった。新しい家を契約したばかりということが大きいのだけど、なんとなく東京という土地に縛られている自分を感じた。
あえて書いてみるとそのときはすこし、契約した家や、ここで築いた人間関係が、生き延びるためには邪魔なものに思えたりもした。じつは、いま連れて歩いている発泡スチロールの家も、すごく邪魔に感じることがある。何処かに許可を得てから置かないと、安心して家から離れられないので、いつも家のそばにいなくちゃいけない。どこかにおいても、何かされるんじゃないかと心配になって遠出ができない。
僕はあれを「家」と呼んでいるけど、その正体は、あの震災のとき、僕を動けなくさせたものを具現化したもの。家というよりも、僕が生きていく限り、連れて歩かざるをえない荷物のように思える。不気味なものが。

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杉並なう

僕は最後に一つの展覧会をやるために今の活動をしている。これは「プロジェクト」って言葉を聞いた時に連想する、なんかもやっとしたものではなくて、純粋な、展覧会というゴールのための、制作活動のつもりでやっている。それは昔ながらの、それこそモダニズム以前の画家の気持ちで。
誰とは言わないが、終わりのないプロセスや、より多くの人と繋がる事が史上の価値であるかのようなプロジェクトを展開している人達。彼らはプロセスに終わりを設けない事によって、批評から逃れ続ける。価値判断をさせない。ずるい。
僕はもっと具体的な、ひとつのイメージの力。形を持ったストーリーの力。一枚の絵の力を信じていたい。

今日も芸大に滞在。別件の仕事の絵を一枚描くなど。

自分の居場所を簡単に定めてはいけない。次の場の可能性を考えずにその場に留まってしまってはいけない。「良い」とされるものの中に創造性があるわけがない。必要とされたら、すぐに出て行かなくちゃいけない。すぐにやめなくちゃいけない。

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今日は芸大に通うナカザワさんのアトリエに家を置かせてもらう。上野。
高田冬彦くんとばったり会って一緒にご飯を食べるなど。

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眺めがいい

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朝食をいただいてしまった

朝、新藤さんと亀有で待ち合わせして、ギャラリーを見に行く。

昼に野村さんの家の絵を描いて、コピーにサインをいれたものをプレゼントする。

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昼食もいただいてしまった。

そのあと、新藤さんに勧められて日暮里のhigureというアトリエでやってる「ゲームボーイ」という展覧会を見に行く。展示を見ること自体が久しぶり。美学校の天才ハイスクールの二人と、多摩美卒1人を、ナオナカムラさんがディレクションした展示。ナオナカムラさんの展示は、前に堅田さんの展示をみた以来。今回展示してる作家はみんな初めて知ったけれど見応えがあった。多摩美の佐藤くんは自分の体のこともあり、命がけで制作しているようだった。その話ぶりは、彼が作家として生まれてしまった業を感じるようで、僕も背筋が伸びた。石井くんも、自分の家庭のことをとりあげていて、制作と家族との生活が地続きになっているようで、不思議に思った。僕はたぶん、家庭内でおこった出来事を制作に転回することができない。
石井くんとひろせくんは、ごく自然に、自分の表現を美術と呼ばれているものに寄せようという、緊張感(?)なく作品を作っていて、それは羨ましかった。
とくにひろせくんとは深夜まで話し込んで、彼と僕はキャラクターは全然違うし、(彼も言っていたけど)学校とかで出会っていたら絶対友達にはならなかったタイプの人なのだけど、こうして表現の場でであってみると、持って生まれた業のようなものに共通点があるように感じて、話が自然にできた。彼はネットカフェで暮らす人にインタビューしていて、それをネットカフェ難民と呼んだメディアに対しての抗議のアクションをしたりしていて、ごく自然に代弁者として行動できていて、かっこいい。

夜はみなさんと飲みに行って、higureで寝る。

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窓から見た桜

昼過ぎまで日本橋周辺をうろうろする。

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古い町の一角がそのまま残されたような場所を見つける。ここで絵を一枚描く。

そのあと水上さんの実家の、葛飾区立石にあるレノロココというカフェに遊びに行く。

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そこで、同じく立石に住んでる新藤さんとも合流。水上さんも三田の家から来てくれた。三人で、新藤さんが紹介してくれた、僕の今夜の滞在先の野村さんの家に行く。野村さんの家は、前にも新藤さんが紹介した作家の人が半年くらい滞在していたらしい。

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イルカちゃん。かわいい

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みんなカレーを食べさせてもらう。水上さんと新藤さんが帰った後、夫妻が出会った経緯について話を聞いているときに、何故か泣きそうになる。住んでいる場所をでて、新しい場所で出会い、そこで家庭を築くのは、すごく大変で、すごく素晴らしくて、その凄まじさが、平坦な語りを通して透けて見えてしまったからだとおもう。

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ビアガーデンのバイトをしていた時のバイト仲間に誘われて、上野で飲む。家は美学校においたまま。こういうときに「村上さんはいま何やってるの?」と聞かれた時の説明のしにくさ。

そのあと、3331のアイランドに寄って勝さんの個展をみる。伊藤さんと勝さんがいて、すこし話し込む。
で、昨日行ったギャラリーコーションに行く。今日はここに滞在。

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永田町で警官に囲まれたことを思い出す。彼らは何の権利があって僕を呼び止めるのか。「こわな格好してたら、声かけられるのわかってるでしょ」って言われたけれど、でもじゃあ僕はどうしたらよかったのだ。どうしてほしいのだ。僕には他に方法が思いつかない。そして、このやり方でたぶん間違ってない。
僕の説明をきいても、顔を引きつらせて笑うことしか、あるいは不審な目を向けることしかできない人たちもいる。前に奈良で「引越しと定住を繰り返す生活(仮)」をやってたとき、「暇なんですね」と言われたことを思い出す。暇なのはどっちだ。いまのあり方以外のあり方を想像できない。誰かに振り付けを教わらないと、自分でダンスもできない。自分の生きている間の世界のことしか想像できない。ここ数日間のことしか心配できない。自分を笑えない人たち。自分を笑えない人が他人のことを笑う。ケチをつける。人に簡単につっこむな。自分でボケてみろ。笑って、そしてさっさと忘れてほしい。自戒も込めて書く。

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ヒヨシさんから言われたこともあり、両国の町会長の家の絵を描いて町会長にプレゼントした。

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絵を描いていたとき、向いにある国技堂の奥さんから朝ご飯の差し入れをいただく。あったかくて甘いコーヒーが嬉しい。そのあと、ちゃんこ屋さんの川崎の絵もかく。それのコピーを、川崎の豊さんが買い取ってくれた。

 

 

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その後神保町に向かう。途中でクリエイティブハブ131によってみたら、一回部分がGallery Cautionというギャラリーになっていた。そこのオーナーの浜田さんと話し込む。さっき描いたばかりの川崎の絵を買い取ってくれた。

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神保町の美学校屋上での鍋パーティに呼ばれたので美学校まで来た。なんだか成り行きで水上さんも参加。

6人くらいで鍋を囲む。山登りや美術や演劇や愛についての話をする。

特に愛について。みんなそれぞれ切実な事情を抱えて日々を生きているのだ。

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これは水上さんがつくってきてくれたタルト。三日かかったらしい。すごい。

イチゴの上にクッキーの家があって

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家のなかに人の形をしたクッキーが入ってた。

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久保田の家を出て、なんとなく四谷方面へ向かう。

途中、永田町を通ってしまい、警官に囲まれる。5、6人に囲まれたけれど、免許証を見せて事情を説明したら「不愉快な思いをさせて申し訳ない」と言ってくれた。「国会の警備をしているからね、ああ、普通だな、と思えないんですよ」と言ってた。お騒がせして申し訳ない。今後このへんはさけた方がよさそう。

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新宿区原町で絵を一枚描く。中学生と高校生に冷やかされる。笑え笑え。幼稚園くらいの子供を連れた自転車に乗ったお母さんに「がんばってください」と応援される。「うちはマンションだから(家を泊めるのは)ちょっと無理かなあ。みんなきつきつのなかで暮らしてるから。」と言ってた。

ツイッターで、両国に住んでいる人が連絡をくれたので、なんとなく両国へ向かう。そしたら夕方、日本橋あたりを歩いてるときに「村上さん」と声をかけられる。

事情をはなすと、その男性(ヒヨシさん)は両国に住んでおり、面白がってくれて「両国駅にきたら電話しな」と言ってくれた。

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駅近くでヒヨシさんと合流すると、近所のいろんな人に僕を紹介してくれた。このへんは下町で、祭りがあるので、近所のつながりが強いみたい。

 

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これは国技堂という甘味屋さん。建て替える前の写真。

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それで結局、町会長のお店のシャッターの前に家を一晩置かせてもらうことになる。町会長が名刺をくれて、何か言われたら名刺を見せて「許可もらってます」って言えばいいから、と言ってくれた。ヒヨシさんたちいわく、その名刺はここらでは黄門様の印籠みたいなものらしい。町会長が決めたことは、ここらでは誰も文句が言えないという。

 

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(翌朝撮影)

 

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そのあと、ヒヨシさんと奥さんと、ヒヨシさんが呼んだマサさんという若い人と一緒に寿司屋で飲む。ヒヨシさんがごちそうしてくれた。

僕の計画について「詰めが甘い」といろいろとダメ出しを受ける。

 

寝る前に、家の絵を描くならここがいい、と言って、「川崎」という古くからあるちゃんこ屋さんを紹介してもらう。

 

今月は都内をうろうろするつもりだったけれど、もう北上してもいいのかもしれない。

 

 

 

引き続き久保田の家に滞在。
慶応大学に遊びに行ったりする。

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キャンパス内の生協に、iPadやらスーツやらが売ってた。

久保田から、「暇と退屈の倫理学」という、國分さんの本を教えてもらう。
さらっと読んでみたけれど、ニーチェが「人であるということは、住むということである」というようなことを言ってた。
退屈という感覚は、定住が始まってから生まれたんだろう。留守番も同じ時期に生まれて、僕は留守番と鬱には関係があると思っている。出発前に本を読んでおきたかった。
話してて気がついたのは、ぼくは家をかぶって歩いてるとき、なんとなく退屈さを感じているのかもしれないということ。視界が悪いのもあるけれど、家を被ると、「歩いている」という感覚ではなくなる。自分よりも地面の方が動いてる。