朝、お祭りの片付けを手伝って9時半頃には出発した。午後から風が強くなるという予報があったか ら。いつもなら絵を描いてから出るのだけど、午後3時の予想風速が10mだったので、早く行かな いと動けなくなると思った。
お昼頃に、酒田市の市街地に入った。道ばたでなんとか会っていう宗教法人の勧誘を2回うけた。こ のあたりは会員が多いらしい。1人目に勧誘してきた人は9年前から会員で、入ってからずっと人生 が幸せだと言っていた。良い事だと思った。でも年中無休でずーっと幸せってのもつまらなそうだな とも思った。
お寺がたくさんある地区を見つけたので敷地交渉を始めた。3軒くらいまわって全部NGだった。お 盆が近いのでどこのお寺も忙しいっていうのもありそう。町を歩いていて気がついたんだけど、どこ の家にも「身元調査お断り」と書かれたパネルがドアのそばに貼付けられていた。なんのことかわか らなかったんだけど、よく見ると「同和問題~~会」と書かれている。そうか、同和問題か。そういえば昨日のお祭りで焼き鳥を売ってる兄ちゃんは普通に自分たちの地区のことを「部落」と言ってたな。いいなあと思った。部落。かっこいいじゃん。
4軒めのお寺でOKをもらえた。
「忙しいから中で泊めてやることはできねえけど、一晩くらいならどこでも泊まってっていいぞ。台 風くるぞ」
と言ってくれた。もう風がかなり強くなっていて、台風前夜って感じの不穏な気候だったので本堂の 縁側みたいなところに家を置かせてもらい、そこで一晩台風をやり過ごすことにした。
なんか体調が悪い。鼻水がでてくる。肉とか食べて早く寝ようと思って、近くの焼き肉屋に入ろうと したけど、一人で焼き肉とは贅沢すぎるなあと思って、そばにあったセブンイレブンでご飯を買っ た。
夜中、喉が渇いて自動販売機に水を買いに行った。風はとても強いけど雨はあまり降ってない。水を 買って、自分の家に帰ろうとしてお寺に入るとぞっとしてしまった。こうして改めて見ると、僕はめ ちゃ怖いところに居を構えている。本堂はとっても大きくて迫力がある古い建物だ。そして真っ暗 だ。通りから本堂を見ると、暗くて中が全く見えない。自分の家がそこになかったら、絶対に近寄り たくない雰囲気。でも入っていくと目が慣れてくる。自分の家もちゃんとそこにある。自分の家がそ こにあるってだけで、この闇が怖くなくなる。闇を味方につけられる。この生活をして何度もお寺と かお墓のそばに家を置いて寝てきたけど、「こわい」とかまったく思わない。これがテントとかだっ たらまた全然違うと思う。自分の家があるってだけで、なんていうか幽霊とかそういうものが全て 「こっち側」にまわってくる。敵対するものじゃなくなる。