現美の吉阪隆正展の内覧会にTOO MUCH MAGAZINEの辻村さんが誘ってくれ、行ってきた。吉阪が早稲田建築で教務補助の仕事についたのが1941年、松澤宥が早稲田建築を卒業したのが46年。昨日見たばかりの松澤との繋がりの可能性。おいおいまじか、と年表見ながら思ったが吉阪は42年に今和次郎の後を継いで日本女子大学住居学科の講師になったという記述があるので、被ってはいないか。
世界平和を実現するために、というニュアンスのテキストが散見される。幼少期のスイスで、第一次大戦後の平和教育を受けた影響らしい。国境のない地図を描いたという。63歳で亡くなった。

ブラックベリーのヘッドフォンの振動機能、あれだ、絵画と彫刻を並べてみたときの違和感に似ている。ミケル・バルセロ展でみた、絵画の中に立体物が埋め込まれている作品の、立体物の物質感がだけが浮いて見える感じ。絵画のイリュージョンが解かれ、目の前のものがただの物体に過ぎないと感じられるときの、興が醒める感じ。ヘッドフォンの人為的な振動は、バスの音に合わせてはいるけど、どうしても音楽から浮いている。この世界に実在するもの、という感じが強く、音楽というイリュージョンからは離れている。

寒くて、現美の帰り道、バーミヤンで熱を補給した。ラーメンとハッピーアワービール200円を二杯。

現美に行く途中、制服の青年が自転車を倒していた。参考書が十何冊もつまった薄いビニール袋をハンドルにぶらさげ身動きが取れずにいる。大丈夫ですかと声をかけて自転車を抑えると彼はありがとうございます大丈夫ですといって自転車を持ち直したのだが。ビニールの取手がやぶれて参考書ごと下に落ちる。一瞬、沈黙。それからもう一度大丈夫ですかと笑いかけると彼は、一度学校戻ります…と言った。気をつけて、とハンドルを彼に返した。今日はとても寒いが、もう春だと思った

高松次郎「世界拡大計画へのスケッチ」

空間にも時間にも、無限大の数にのぼる軸があるように思われる。二つの異なった空間を並置した場合、そこで互いに衝突する方向に進んでいる二つの物体は、絶対に衝突しない。時間にも、本来離れた物体の間に同一の時刻などというものはない。(離れたところにいて、決して会うことも、コミュニケーションすることもない二人の人間が、ある特定の同一の事物を意識したとしても、二人にとってのその事物は、何らの関係をも持たない。)

(1967・7・1)

意識はチューブのような形をした器である。それは何ものをもそこにとどめるすべを知らないし、またその必要性をも知らない。

(1968・8・5)

相手の武器で戦うこと。望みもしないで生れてきたといわれている人間がすべての事でそうしているように。

(1968・8・27)

人間には、厚みも巾もない点のような、「現在」は存在しない。もしあるとしたら、音楽の演奏中に、音をバラバラに分解して聞くこともできるだろうし、映画を見ながら、フィルムのカットを一つ一つ見ることができるだろう。

(1968・9・27)

高松次郎「“不在体”のために」

若いビジネスマンのAは終業時刻が近づくにつれてビジネスは求心性の焦点からはずれていき、ベルが鳴り、駅に急ぎ、電車に飛び乗って吊り革に手をかけるがそのときの彼には数十分後に会うはずの恋人の笑顔がすべてなのだから、刻々進行しているそれらの現在としての時間はあくまでも仮の手段としてのものに過ぎず、デパートの包装紙のように無価値ですぐにクズ籠の中に捨ててしまうべきものだと思っているであろうが恋人に会い、微笑を交わし、歩き出すころには、彼は早く食事を取り、次に映画を見ることでいっぱいなので、彼の<完璧な現在>としての時間は、数分後、数十分後のレストランや映画館の中にあるという具合に”内時間的未来”が現在を追払い、すべてのしぐさ、すべてのものごとが投げ捨てられていき、それから二人に最高の歓喜がもたらされたとしても事情は同じであって、そこに於ける瞬間が<現在>として完璧であることはなく、ものごとのガラクタ地帯の砂嵐が容赦せずバラ色の愛の密室にも入り込んできて二人の肌をザラつかせ、そしてその感触を追い払うことでそこでもまた<現在>を追い払ってしまうが、だからといってカラッポになるのはバラ色の密室であって、彼自身なのではなく、彼はまたさまざまなものごとを吸い込み、排出してはまた吸い込みながら、しばらくすると必ずや数時間前に彼が不毛を感じながら彼の求心性から遠ざかっていたビジネスもまた或る程度の輝きをみせながらもどって来て、再び彼の焦点に近づいていき、自分がビジネスに熱心な人間であることを意識しながらそのことに集中し、また明日の会社のことを考えるという具合に一つの旋回がその輪をとじる訳だが、結局Aの恋の一夜はネジの一ピッチであることをしか明らかにせず、いったいそのリング上に何があったかといえば刻々”現在性”のものごとのガラクタ性を追い払いながら、何ものかに向かって進むその速度だけであって、ものごと的エッセンスとしての”素粒子”は決してものごとそれ自身であることはなく、それは分裂の極限であるがいつも<現在性>のものごとの中をすり抜けていき、あやつるのは詐欺師だけで、我々をとらえ、ひきつけ、かり立て、ガラクタ置場の厖大な倦怠から救ってくれるのは決してものごと自身ではなく、ものごとが発している放射線的エネルギーであり、それは、現在としての時間をすり抜けるという意味で非空間的なものであり、また時間の流れの中でとらえようとすると、いつも無限の前方に輝いているだけでとうてい触れえるしろものではないような非時間的なものであって、自己の内側に向って、つまり反省的に考えるならばそれは<期待>とか<不安>という状態の原因であり対象である未来性、非固定性、不可逆性の原点としての未決定の存在、つまり蓋然性そのもの、例えば不可解な事件の迷宮性その浮標がいままさにピクピク動き出した釣り糸の見えない先端、届いていまだ開けられていない小包、電話のベルの次の瞬間の耳もとの音声、未知な自然のさまざまな空間、いろいろなスポーツの賭の勝敗、といったものである。

(二行目)

上り藤の家紋がそば猪口、薬味の小皿、そばつゆ入れ全てに入っている藤木庵。天せいろそば、海老、ハタハタ、烏賊紫蘇巻き三種盛り

高速バスの休憩サービスエリアでベンチに座って音楽を聴く時間よい

NYタイムズのツイッターに投稿された今日の地震のニュースのリプライに
If we survive the 2020s it’ll be a miracle at this rate.
Hope everyone is ok.
というものがあり、心に刺さった

怪獣のゆくえ、という映画を観る夢。主演は芦田愛菜。なんかめちゃくちゃだったが盛りだくさんで楽しかった。小学生の娘の卒業式を、昔カタギの漁師?の父親がサプライズで祝う。高さ10メートルはありそうな、大きな陸橋の骨組みみたいな古くから伝わる神輿のようなものを、仲間とともに卒業式のために引っ張り出し、学校?に向かう。この神輿?はもうボロボロだからな、これで壊れるだろう。これが最後になるな。と。謎のナレーションが入りながら、神輿は山を下っていく。
そして映画が始まり、芦田愛菜がみんなからお祝いをされる。が、神輿はいつの間にかゴジラのようなものにかわっており、それを担いだお父さんたちはそのことを秘密にして、映画に参加?している。音楽が多用されるポップで派手な映画だった。劇場はめちゃくちゃ広く、映画というよりも野球場で演劇を見ている感じに近い。芦田愛菜が、なにか怪獣のような姿をして袖から出てくるはずが、そこに投影されているはずのcgが投影されておらず、出てきたのはただの芦田愛菜。行進が終わったところで、スタッフらしき声で、芦田愛菜にわびの言葉。観客はこの結末をわかっており、ドッキリだと知っている。芦田愛菜、放尿しながら退場。放尿には、そりゃあそうなるよな、と納得の理由があったが、忘れた。その鮮やかな青色のおしっこを飲む男の子がいる。観客から、すげえ…というどよめき。芦田愛菜は軽蔑の目で彼を見ている。僕はそれを目の前で鑑賞している。芦田愛菜が袖に引っ込み、ゴジラのテーマ曲が流れ始める。しかしお父さんが担いできているはずのゴジラがなかなか現れない。映画の舞台は宇宙に変わっており、観客が手元の小道具を使って襲ってくる宇宙船を撃ち落とすアトラクションになっていた。なんかまとまりのない映画だなと思い始めたところで、目が冷める。

その映画の前に、すべり台の上で文庫本を読む夢も見た。小説だった。

朝が本を読むのに向いていない理由は、書かれた文言に新しい頭が刺激されて、色々なことを思い出したり考えたりしてしまって意識がどこかに飛んでしまい、本の内容が入りにくいからだと思われる。いかに静かで暗い一人の部屋で、手元だけ照らすライトがあり、集中できそうな環境でも、朝は意識がどんどん飛んでしまう。夜は頭が疲れているので、目の前の内容を頭に入れるくらいしかできなくなっている。

仙川湯けむりの里の露天風呂にて

あの、細野。まだ奥さんとやばいらしいよ。この間、泣いちゃったって言ってたじゃん
あー言ってたね
それで3日4日前にちょっと飲みに行こうぜってなった時に、昨日も泣いちゃってさ(って)
えーまた?
うまくいってないわー(って)
なんで?
離婚かあ?…子供とかできたらかわいそうだよな
(俺は)結婚は男の墓場だって言い訳してる。彼女できないの
ああ、まあでもそうだよね
そうだよ(強く)

「子供とかできたらかわいそうだよな」という言葉、引っかかるものがある

学校に町田くんが銃を持って来て、私を殺そうとするのだが町田くんは撃てず、ボロボロと泣き出し、逃げろ、逃げろ、今すぐ、と言って僕を逃がす。町田くんの協力の下、僕は逃げる。途中、森の奥から来る不思議な兵隊のようなものに襲われるが、町田くんは棍棒をたくさん持っており、それを投げて二人で応戦する夢。

それ鏡に飛ぶからやめなさいってママに言われる〜
と、小学校に歯医者の先生が歯磨き出張講習に来た際、前歯の裏を磨くときは歯の内側から外側に向かって歯ブラシを滑らせよ、という動作を生徒たちに話している時に、たしか光安さんがそれを遮るように言ったのだった。この文言のとおりではないだろうし、特にママに、の位置には自信がない。このセリフはなぜかとても印象的に覚えている。それは当時僕は光安さんのことが好きだったから覚えているのか、光安さんが突然声を出して先生の話を遮ったから覚えているのか、あるいはその光安さんの、可愛らしくも切実な問いに対して歯医者は「ママには、歯医者さんがそう言ってたよと言ってくださいね」(歯医者が言ったといえば。ママも言うことを聞くだろうという魂胆が丸見えであった)という、ずるい答え方をしたのが気に入らなかったから覚えているのか、わからない。

いつか本を読んでみたいものだ、ゆっくりと。

「キーワード+おすすめ」でグーグル検索する人が、サジェスチョンから一定数いることが推測できるが、彼らは一体どういう心持ちなのか。おすすめ、という単語の意味がゲシュタルト崩壊する。

コロナ禍になり唯一良かったことは美術館や商業施設などのトイレの手洗いが、エアータオルがなぜか使用中止になりペーパータオルなったことだ

脇でパトカーが左折待ちしている目の前で白い自動車が踏切を渡ろうとしていて、明らかに必要以上に踏切の手前で「一時停止」をしているところに出くわして死にたくなった。自販機でカルピスソーダで酔っ払ってやる。

朝、二度寝を経て目が覚め、時計を見たらまだ6時半だった。二度寝をした、というのは、なんと昨日の朝の記憶だったのだ。
習慣にしていると記憶がまざっていく。風呂に入っているとき、ここに置いたと思っていたところにメガネがなくて、全然別のところにあり、最初に置いた場所は昨日の記憶だった件と同じように。

新宿南口にて全感覚祭主催の反戦集会に一時間だけ立った。今回の侵攻は日々、自分が無知であることへの呆れを生み続けていて朝ニュースを見るたびに落ち込んでしまうのでなにか足を動かしたかった。彼らが企画してくれたおかげでその行き場ができた。同じ心持ちの人は多かったのではないか。プラカードを掲げる皆の手はぎこちなくて、おそるおそる、という様子。僕も用意していったものを出せなかった。そこへステージから、熱狂はいらないという言葉やばらばらであることを通しての連帯という言葉が飛んできて体を少しだけ軽くしてくれた。すこし時間が経ってから、その場でのある種の「モード」に体が変わった感じがあり、掲げる手のためらいは減じた。久しぶりにデモ的なものに参加して、その場に集まったりカードを掲げることのエネルギーの大きさは全く馬鹿にできないと改めて思う。一つのイシューのもとに人が集まるということの、その戸惑いがもたらす思考の喚起力は馬鹿にできない。なぜ来たのか、居心地が良いとは言えないのになぜ立っているのか、何のためなのか、何かの役に立つのか、ただ自分のもやもやを消化したいだけではないか、仮にそうだとして、そもそも、もやもやを感じるのは何故なのか。立つことの戸惑いそれ自体が考えることを促す。

今回の侵攻について、それぞれの言い分や原因の議論をしはじめると色々なことがわからなくなるが、人がそこで殺されていること自体へのNOは絶対的に正しく、戦争は、立場など関係なく絶対悪だと、怒りを表すことはしなくてはいけない。まひとくんが言っていたことを噛み締める。「わからないけど考え続けていこう」とかいう前に、まずこの「ここに現れているもの」に対する反応をしなくてはいけない。そこに花が咲いていること自体に感動することと同じように、そこに殺しがあること自体に怒りをぶつけること。その心の動きと、それがなぜそこにあるのか、と考えることは分けた方がいいだろう。

ライブの予約したのに車の道間違えてというか迷って、間に合わず。申し訳ないと思いつつ、また開演後に連絡されても意味ないかとキャンセルの連絡もしなかったことを後悔している。今こらでも連絡すればいいのに、それは律儀すぎる、そんなことで連絡するようなやつはいない、「普通」なら、こういうとき連絡などしない。バンドをやっていて自分たちで予約管理とかやってたらドタキャンなんてよくあるだろうし、別にお金も払ってないしと思っている。いくら律儀だも思われようと、連絡すればいいじゃないか。自分が気持ち悪いなら。でもそれをしない。

俺は作品を作り続けるし、独特な発声で客に礼を言うラーメン屋の店員のことなどを書き留め続ける。はっぴっんっにありぁ〜!にひゃっんのおつりでぇ〜。れしーとにありあ〜!ありっっとぅっしぁ〜〜〜

このプロジェクトはスポンサーからの広告収入を使って看板を兼ねた家を建て、広告収入を使いながら生活するというものです。夏の名古屋に続き、冬の札幌では、アートギャラリー「CAI03」の屋外テラスにて、落ち葉の発酵熱を利用した自然暖房を備えた家を試みます。

このプロジェクトはご覧のスポンサーによって提供されています。

 

以下、リアルタイムで更新中の箇条書き日記です。期間中に書いた日記は全て載せているので、本プロジェクトに関係なさそうな文章もあります。最後にフォトギャラリーがあります。

【準備期間(1月7日~1月21日)】

1月7日00時39分

「さんふらわあ だいせつ」大洗→苫小牧深夜便船内

・ここから18時間ほどは船の上。これほど長距離を船で移動するのは初めて。自分の車を船に積むのも。

・01時45分出港のところ、22時半には大洗港に着くので余裕かと思っていたけど、その時間でちょうどよいくらいだった。乗用車は23時ごろに乗船開始だった。あぶなかった。

・今日東京というか関東地方は4年ぶりの大雪で、港に着く直前の道路上でスリップした。ちょっとヒヤッとしたが、練習しておこうと思ってわざとブレーキをぐっと踏んでみたら、そのままシューっと数メートル滑った。楽しい。楽しいが、ゆっくり走らないとあぶないということも事実。

・港に着き、乗用車の待機列はどこだろうと思って(無意識に小豆島での小型フェリーの乗車手順をなぞろうとしていたかもしれない。小豆島では自動車ごと乗る人は港に着くなり車の待機列に並ぶ。それから乗船手続きをしにいく。しかしこれはさんふらわあだ。比べ物にならないほどでかいフェリー。駐車場に車を停めてフロントに手順を聞くことをまず考えるべきだった)敷地内をゆっくりと走っていたら、いつのまにか後ろについていたでかい車(コンテナの牽引車、と呼ぶのか)からいきなりクラクションをならされる。信じられない。ここでクラクションをならしたところで船が定刻より早く出るわけではないのに。しかしそんなことはどうでもいいのだろう。鳴らしたいから鳴らしたのだ。かなり動揺した。

・まもなく出港する。ネットも繋がらなくなるだろう

・船内の揺れ。横になった時に背中に感じる、重力と波。必ずしも周期的ではない。地球の自転。地球という液体の上にいるという実感。

・船内の喫煙所の存在感に驚く。各階に一部屋、上の階のは4畳くらい、この階のは8畳弱はある。ソファもある。こういう、トラックドライバーがたくさん乗る船の喫煙率は高そうだ。今のところ、電子タバコを吸っている人は見ない。みな紙巻きのものに火をつけて吸っている。トレンドと逆行している。彼らには自分の車というパーソナルスペースがあるからだろう。電子タバコは人目を気にしたタバコのいわば進化系なので、必然的に街中でみかけることになる。彼らドライバー達は仕事場が車内なので、気にする必要がない。というか、電子タバコに切り替える機会がないんだろう。街のカフェやなんかは喫煙席でも電子タバコしか吸えなくなってきているから、そういう場にいたい人たちは電子タバコにするのだろうし、僕もその理由から一度買ったことがあるけど、彼らにはその必要がない。

・はじめ風呂場には誰もいなかった。貸切の大浴場で港を見ながら風呂に入ったが、出て、脱衣所で着替えている時、にーちゃんが二人たて続けに入ってきた。知り合い同士ではなさそう。一人目は入るなり、勢いに任せて僕のすぐ隣のロッカーを開け、ため息なのかなんなのかわからないが大きく息を吐きながらこれ以上ないほどぶっきらぼうに、ものすどい勢いで服をぬいでばたーんという感じで浴室に入っていった。二人目も似たような感じ(一人目ほど服の脱ぎ方などは雑ではなかったが、同じような強い息を吐きながら浴室に入っていった)。「漢」たちの縄張りに踏み込んでしまったような印象。あの切迫感はいったい・・。クロックス的なサンダルが下駄箱にあったので、二人ともこの船に乗り慣れている、トラックドライバーだろうということがわかる。トラックドライバーすごい。クラクション鳴らしてきたあのおっさんといい、常に何かに追われてような感覚なんだろうか。大変な仕事だ。彼らのおかげで世界はまわっている。せわしないこの社会に生きている中で、僕たちが被るべき焦燥感を、彼らはその身ひとつで受けてくれている。感謝しなくては。とはいえそもそもそんな焦燥感が存在すること自体おかしくねえかとも思うが、残念なことにそれは事実として存在する。こんなに忙しく生きてひたすら歯車をまわすだけの世界なんてどうかしてる・・・みたいなことを言うのはわかるし言いたくもなるのだが、それが存在していることは純然たる事実で、それが存在する以上、ものすごい勢いで服を脱ぎながらため息を吐くにいちゃんや意味のないクラクションを鳴らすおっさんが生まれることは避けられず、そのクラクションによって僕が動揺したという事実も存在する(あのおっさんもこの船に乗っているだろう間違いなく。そいつとこれから十七時間も同じ船上にいなければいけない)。こんな社会なんて・・みたいな言説はここではあまり役に立たない。すこし慰めてくれるぐらいだ。動揺した心が存在することをまず認めなくてはいけない。

・喫煙所にいたおじさんに対して「今年もよろしくお願いします。お手柔らかにお願いします」といいながら入室してくる別のおじさん。関係が気になる。

・その後も、喫煙所にあつまるドライバー同士は繋がりがあるらしく、おいっす、と入ってきたにーちゃんに対して偉そうなおっさん(人の顔を覚えるのは得意ではないがたぶん、クラクションのおっさんだと思われる)が、ヤマダ!おまえなにやってんだ!ヤマダ!みたいに絡んだり、そのおっさんはまた別のおっさん同士タメ口で、今朝の東京はやばいだろうなあ、あんだけ雪降って、朝氷点下だろ。全然うごいてないんじゃねえか?やばいよねえ、まだニュース見てないけど、絶対やばい、まだニュース見てないけど(この別のおっさんは、「まだニュース見てないけど」を連発していた)というような話をしている。以前に長距離フェリーに乗った時に思ったことが蘇ってきた。ドライバー達はいったいどういう人間関係をむすんでいるのか。一人一人がそれぞれに運転しながら、その個人同士がこういう船の中で親しげに話をするとはどういうことなのか。ドライバーと知り合ったら聞いてみたい。

・もうお昼の十四時近くになったが、ずーっと携帯は繋がっている。つまらない。さっきはずっと大船渡や三陸の陸地が右手に見えていたし、この船はどうやら本州の陸地からそれほど離れずに航行をするものらしい。

・二度目に寝た時、苫小牧についたあとなぜか京都に行き、nowakiの二人と会う夢を見た。そこで小説家の大前あおさんにも会い、一緒に帰った。僕は今尾くんが、京都での展示に大前さんを呼んでいたことを思い出し、彼の話をしたら大前さんは「知ってるよ」と言った。同じテーブルに座り話をしながら大きな蜘蛛が我々にじゃれついてくるのを受け流すなどしていたら目が覚めた。

・隣室の内田が13時ごろに起きてきた。酔い止め薬の副作用らしい。23時ごろから寝始めて、ずっと寝ていた。

・喫煙所のおじさん二人の会話「はああ・・」「連休でしょ?」「ああ。俺は日曜休み」「月曜は?」「わからん」

・フェリーの揺れ。背中に感じる重力と波。地球の自転。液体としての地球。

1月9日22時30分

・現実の共有について。ささいな出来事でも、例えばコスモスの花が綺麗だねとか、ブルーベリーって美味しいよねとか、良い天気だねとか、そんなことでも他人と「共有する」なんてことできないんじゃないか?それぞれ固有の受容体をもっていて、見えている景色もそこから連想される記憶や思い浮かべる出来事も、普段見ている映像や聞いている音楽も読んでいる文章も違う。見えている音も聞こえている音も違う。言葉の使い方も言葉から受ける印象も違う。感じる寒さも暑さも、立派だと思う基準も全て違う。立っている場所も向いている方向もその時の気分も全然違うので、ほとんど別の生物だと思った方がいい。共有できるものなんか何もない。それぞれの熱を持ってそれぞれの現実に住んでいる。熱を共有しようとすると、オリンピックになってしまうそれでも同じ言語や貨幣を用いて関係性の中で生きているということになっている。いかにそれが建前でも、そこで生きているという事実は存在する。同じように他人との共感や交流がただの幻だとしても、それによって悲しんだり嬉しくなったりする心の動きは現実に存在する。これは「時間は存在しないが、時間によって縛られている我々は存在する」という命題に似ている。同じように「現実は存在しないが、それに縛られている僕たちは現実に存在する」と言える。

1月9日

・昨日から天神山アートスタジオに滞在開始。一昨日の夜、苫小牧港に定刻通りにフェリーは到着し、そこから車で十分のホテルをとってあったのだけど、途中の道路の真ん中で車がスピンした。3車線のうち、一番左の車線を、他に誰も走っていないなあと思いつつ走っていたら、なにかきっかけがあったのかもわからないまま、あれよあれよというまに後輪が滑って車が時計回りに九十度以上回転し、右隣の車線に突っ込んでいった。世界が一瞬だけスローモーションになった。アドレナリンが大量に分泌されたと思われる。僕はほとんど無意識にマリオカートでの操作を踏襲した。ブレーキから足を離し、ハンドルを回転している方向を逆方向に切った。すると車体はスピンをやめ、反時計回りに回転し、真ん中の車線に正しい角度で持ち直した。幸い、後ろの車は車間距離をとってくれていたので接触もおこらなかった。僕は自分でも引くくらいに冷静で、ごめんなさいの意味を込めてハザードランプまで焚く余裕があった。まるで何度もスピンを経験しているドライバーであるかのように。でも初体験だった。こわかったけど、少し楽しくもあった。

・内田を朝9時半前に集合し、朝ごはんを食べる。色々あったが、一緒に札幌に来てくれた。設営を手伝ってくれる。本当に助かる。ちゃんとお金も払う。一日7千円。

・こういう時に、大学で講師とかやっていたら、学生を手伝いとして雇うこともできるんだろうな。しかし僕にはそのコネクションがない。

・まず広告看板の家の現場であるCAI03に行き、55センチまで積もっていた雪を掻いた。その様子をGoProのタイムラプスで撮影。

・頭上の低い位置に電線があることをすっかり忘れていて、看板の大きさを決めてしまっていて、そのサイズでビニールも切ったしスポンサーのロゴも描いてしまっていた。高さ3mの予定だった。しかし電線までの高さは253センチ位しかなかった。なので看板高さ2450センチくらいに落とす必要がでてきた。絶縁体を挟んで3mまで電線を持ち上げる案もあったけど、電線には触れないようにしないといけないきまりになっているらしいと、丸田さんが調べてくれた。

・雪かきしながら思う。雪は敷地境界を消滅させる。雪が降った道路では、その前の家の人が雪かきをしなくちゃいけない雰囲気があったり、掻いた雪を隣の家との隙間や空き地に移動させたとして、その雪は誰のものかとか、考えても意味がない。こういう現象が時々起こってくれたほうが、人間生きやすいかもしれない。いつもかちかちに境界をきめていては疲れる。

・雪かきのあと、ホームセンターに買い出しに行こうとして車をCAI03の駐車場から出そうとしたところで後輪を雪にとられ、うごかなくなってしまった。僕の車は四駆ではないので、後輪が空回りするともう動けない。僕が運転席に座り、アクセルを踏み、内田が後ろから押しても動かず、参っていたらヒールを履いたお姉さんが手袋をはめながら「一緒に押しましょうか。なんなら、私が運転席座りましょうか(男が車を押した方がいいだろうという配慮だと思われる)」と言ってくれた。そして一緒に押してくれた。すぐにまた別のお姉さんが近づいてきて、運転席の僕に向かって「ハンドル、まっすぐにした方がいいんじゃないですか?」と声をかけてきた。事前に三枝さんから聞いてはいたけど、車が雪にハマっているのを見ると、こっちの人たちは速攻で駆けつけて助けてくれる。ごく自然に、当たり前かのように。コロナ禍で人との距離が遠くなり、その距離のつめかたも忘れてしまったが、雪はそれを遠回しに思い出させてくれるような気がする。

・ヤマダ電機に行き、GoProを三脚に取り付けるための部品を買う。

・そのあとに寄ったラーメン屋をでるときも同じように雪に捕まり、動けなくなっているところに若い男性三人組が「おしますよお」「せーのっ」「うぉーい」「よいしょお」と、とても軽いノリで協力してくれた。僕も誰かが雪に捕まっていたら助けようと思った。

・スタッドレスに変えたとはいえ、一日に2回も雪に捕まり、先日はスピンもしてしまったのでこのままでは良くないと判断し、オートバックスに言ってタイヤチェーンを買って取り付けた。これでだいぶマシになるだろう。

・佐野さんから教えてもらったホーマック西岡店に行き、ツーバイフォー材3640mmのやつを20本買った。レジを終えた頃にはもう外は真っ暗になっていたが、この材だけは今日中に現場に運びたかったのでサービスカウンターに行き、「トラックを借りたいんですが」と言った。短い手続きをして、店員と一緒に外に出て、「いまトラック持ってくるんでここでお待ちください」と言われ、待っていたらやってきたのはトラックではなく、マイクロバスみたいなサイズ感のワンボックスカーだった。日産の「キャラバン」の、たぶん最大クラスのサイズのやつ。こんなでかい車は運転したことがない。夜だし雪道だし大丈夫か、という感じになったが、結果的に何の事故も不安もなく運搬を終えた。四駆だったことと、タイヤの面積が僕の軽バンに比べて大きく安定感があったこと、それに車自体も重くてグリップが効きやすいんだろうと思う。車幅さえ気をつければ運転できた。

・僕の軽バン(ファントムと名付けている)は、チェーンを嵌めたとは言え、前輪がスリップする感じがある。アイスバーンは滑るとは聞いていたけど、こうも頻繁に、当然のように滑るとは思っていなかった。滑りながら運転している感じ。他の車も滑っているのをよく見る(僕みたいに九十度以上回転した奴はまだみてないけど)

・ブーツの裏に貼り付けた「ART」と掘ったゴム板がもう二枚とも剥がれてしまった。接着剤が靴にうまく張り付いてれなかった。寒すぎるのか。

・ホーマックの、屋外売り場(レンガとかコンクリートブロックとか、堆肥とか売ってるところ)が、もうただの雪原になっていた。雪原の中に、四角い白い山ができてるだけの風景。買う人いないのか?同じように澄川駅前のマックスバリュ前の駐輪場も、もはやただの雪の山になっている。自転車が何十台も埋まっている。もう諦めているのか?

1月11日0時33分

・思い出した。室内でイヤホンで音楽を聴く時、部屋は暗い方が良い。天井の角を眺めると良い。部屋に響いている感じがする。

・酔っ払っていたり、疲れて眠い時に聴く音楽がいつもより速く聞こえるのはどういう現象なのか

・マグネティックフィールズとシモーヌヴェイユの文には似たところがある。それはたぶん、作り手自身が自らのために、自らの手法に没頭しながら作っているからだと思う。先日観たミニマム/コンセプチュアル展にも近いものを感じた。第三階層くらいまで潜っている感じ。人が夢の中で見た夢の、そのまた中で見た夢の話を聞いているような作品。いつかこういうものが作れたら。

1月10日

・前日遅くまで日記を書いてしまい寝たのは2時半くらい。8時半に起きて隣室の内田と一緒に昨日と同じ朝ごはん。

・お昼くらいまでCAI03で、昨日買い出したツーバイフォー材を長さを測って切りまくった。さやかちゃんの精神で、まず全ての財を切り出してから、それを組み立てるという順番でやる。現場の下の、駐車場の部分で作業したのだけど、寒かった。地面はコンクリート、上は鉄骨で日陰。鼻を頻繁にかみながら丸鋸で木を切りまくった。

・お昼に近所の洋食屋で激うまビーフシチュー御膳を食べたのだけど、その店が今までに経験した飲食店の中で最もコロナ対策にうるさい見せだった。入り口で、まるでディズニーのアトラクションに乗る前のような、こまごまとした説明を受ける。マスクは食事中以外は常時つけるようお願いします、お席のパーテーションは動かさないでください、声が通りにくいかもしれませんが、大声はお控えください。通路が狭いので、お会計の際は代表のお一人でお願いします。

・お昼過ぎからは切った木材を2階の現場に運び、組み立て作業。途中少し雪が降った(どうやらこちらでは雪というものは、お昼過ぎくらいから降ることが多いようだ。今のところ三日連続)けど、夕方5時ごろには大枠の骨組みは作り終えた。骨組みを作るにあたって追加で雪かきをしたのだけど、その時ラジオクラウドで荻上チキのセッションを流しながら作業した。政治まわりのニュースの放送だったのだけど、雪かきしながらそれを聞いていたら、なんか気楽でいいなと思ってしまった。毎日それなりの時間をかけて雪かきをしないと暮らしが営めないような地域の人からしたら、政治のニュースなんてめちゃくちゃ牧歌的に聞こえるかもしれないと思った。僕なら、こっちは雪かきで休みが終わっちまうのによ、とか思ってしまいそうだ。

・CAIの人たちに、僕の車が雪にはまって動けなくなっちゃった時、すぐに周りの人が駆けつけて車を押して助けてくれたという話をしたら「そんなすぐに人が助けてくれるようなことあるかなあ」「なんかオーラを発してるんじゃないの?たすけてくれえ、みたいなオーラ」などと言われた。三枝さんと言っていることが逆で面白い。三枝んは「雪にハマったらすぐ人が助けてくれるから」と言っていた。

・明日からしばらく雪らしい・・。

・夜に寄ったパン屋で流れていた、パパム~パパム~という曲が気に入ったので携帯で録音して、先ほどそれをPCに送信してそれを流しながらSHAZAMで調べ、「ペパーミントジャック」という楽しげな曲を知る。

・椎木彩子さんに頼まれていた「百年後に生きる人へ」という手紙を書いた。なんだか言い訳めいたものになってしまった。今週末に二人でラジオをやることになっている。椎木さんが読んでくれるらしい。100年後に生きる人に何かを書くのは難しかった。まず、申し訳ありませんという気持ちになった。私たちは自分のことで精一杯で、未来のことを本当には考えられていないかもしれないと書こうとして、私たちって誰やねんとなり、結局いつも通り主語は「私」という一人称になった。

1月11日

・初めての店で何かを食べる前の、まだ味が未確定な状態の食べ物を目の前にしている時が、食事という営みのなかでは一番幸せかもしれない

・気温が下がりきっていないのに雪が大量に降るもんだから、地面も服もびしょびしょになった。作業を終えて、わくわくしてきた、と思った。ようやくたのしくなってきた。空間が見えて、自分の手が自分の生活を作るという実感がでてきた。この厳しい環境のなかで、楽しく暮らしてみせること。それに挑戦できることは楽しいことだ。厳しいほど楽しくなる。

・レジデンスの帰り道に狐がいた。まだ子供っぽさがのこるようなサイズ感。右足のどちらかが怪我をしているのか、びっこをひき気味だった。

1月12日

・毎日朝から晩までスキーをやって帰ってきているような体の疲れ具合で、昨日はまともに日記を書けずに寝てしまった。疲れた体になぜか鞭打つようにしてYouTubeで最近のバンドの音楽を漁ってたら夜0時になっていて、そのまま倒れるように寝た。疲れているとなぜか夜更かししたくなる。無理してでも無駄な時間を過ごしたくなる。無駄な時間が足りていない。同じように雑談という営みも、コロナ禍で少なくなってしまった。先日、ゲスト講師をやっていたSPBSスクールというワークショップの最終発表会がオンラインであったのだけど、そこで大原さんが「雑談がしたかった」と言っていて、なんか胸が苦しくなりそれで思ったのだけど、オンラインでの話し合いでは雑談がほとんどできない。どうしても発言者と聞き手に分かれてしまって、そのあわいが消えてしまう。画面に映る人の顔も平面的で、対面で話す時に感じる人間としての物体感がなくなってしまうので、そのぶんその人事態の「奥行き」のようなものが失われてしまう。鏡越しに人の顔を見た時の感覚に似ている。人間が「視覚情報」に成り下がってしまう感じがある。

・今日はすさまじい雪と風だった。ほんと、笑ってしまうような天気だ。朝CAI03の現場に行ったら五十センチくらい積もっていて、先日の雪かきの努力の五割ほどは無に帰していた。道内では警報がでているところもある。最大風速二十メートルとかニュースに書いている。いまも外から、ブーンとかヒューという、この建物を隙間からこじあけようとするような強い風の音が聞こえる。

・これだけ雪が降ると、生きるだけで精一杯になる。エネルギーを目の前の問題への対処に割かなければいけなくなり、どこか遠くのことや未来のことを考えることが難しくなる。ビー・ヒア・ナウが徹底される。目の前の雪道、凸凹、ぐしょぐしょ、ざくざく、さくさく、つるつるといったそれぞれの路面を歩くことに集中しなければいけない。ポケットに手を入れるのも危ない。歩きスマホとかしてたら怒られそう。ここでは、歩きスマホで電車を待っていたら踏切の中と外を間違えて轢かれてしまったみたいな悲惨な事故も起こらないかもしれない。物事がスムーズに運ばれすぎるのはよくないのかもしれないと、ここにいると思う。舞台上の舞台美術がダンサーにとって体を動かすとっかかりになるのと同じように、あるいはスケーターが街の手すりとか段差を使ってスケートをするように、多少障害物があった方がうまく人間は生きていけるのではないか?風邪の効用とも似た話だ。

札幌では電車の中で携帯をいじっている人が東京などと比べて少ないのも面白い。今朝乗った地下鉄でも半分くらいの人は腕を前で組んで目をつぶって座っていた。腕を前で組み、目をつぶる。僕も電車に乗ってからしばらくは無意識のうちにこの姿勢になっていた。外は風と雪と、地面のコンディションのせいで歩くだけで精一杯な状態、ほとんど登山をするような感じで街を歩く必要があるので、電車の中は休息地なんだろう。山小屋みたいなものか。そのときに取るこの姿勢。これが、人間がつかの間の吸息の間に取る姿勢ということか。ジェダイみたいだ。魂を休ませているんだろう。

・雪道においては、人がたくさん歩いた道ほど歩きやすく、人が歩いていない道ほど、過去に歩いた先人の足跡が目立つ

・雪は周りに光を放つ。雪化粧されたものそれじたいが美しいというのもあるけど、雪はレフ板のように光を反射して周りを照らすので、周りの色も鮮やかに引き立てるし、光を全方位に散らせる。端的にいうと下からも光があたっている風景が生まれる。帰りの天神山レジデンスの前、吹雪で、歩道脇の雪は一メートル近く積もっており、まわりには木しか生えていなくて、街灯と札幌の夜景と雲からの光と雪が反射する光が景色の全体をぼんやりと照らしていて、ほとんど夢の中みたいだった。

・雪がすごすぎて寒さが気にならない

・昼に行ったハンバーガー屋でハンバーガー食べてたら、ちょっと尋常ではないほどうすっぺらい歌詞のJPOPが流れてきて、逆に耳に引っかかって聞き入ってしまい、SHAZAMで調べてしまった。嵐のONE LOVEという曲だった。2008年の曲らしい。時代感がでている。逆にじっくり吟味したくなるほどの詩だった。仮にあれが町中で流れ続ける世界では生きてはいけないだろう。

・作業のことを書いていなかった・・昨日車で片道40分かけてホームセンター「ジョイフルエーケー」に行って買ってきたビニペットと呼ばれる金属製のバーを今日は決まった長さに切断し、ビスで打てるように四十センチ間隔くらいで穴を開け、ツーバイフォー材の骨組みに打ちつけ、雪が降りだす前になんとか・・(でないと、また雪かきから始めなくてはいけなくなる)という気持ちでお昼過ぎまでかけてビニールを張った。ビニペットにビニールを巻き込み、波波した形の細い金属棒をビニペットの溝に埋め込むことによってビニールが固定される。僕の初めての作業だったし、やり方もYouTubeでみただけだったが、うまくできた。札幌市資料館で一昨年実験をやったときにこの方法を知っておきたかった。あの時はタッカーでビニールを固定しようとして苦労した。

・最初に斜めの、一番面積がおおきな部分を張り、次に正面の広告が描かれたビニールを貼ったところで、とりあえず東屋くらいの機能ははたせるようになったので、前述したハンバーガー屋に行った。めちゃくちゃ良いお店だった。なんか地元の面倒見が良いちょっとヤンキーな兄貴みたいな、今時こんな人まだいるのか!と驚いてしまう化石みたいな人が店主。タバコも吸えるし、カクテルなんかも豊富な種類があって安い。常連らしき人に店主が「雪降ったらお前、雪かきだかんな!もし来なかったらお前の車パンクさせるからな」と言っていた。言われた方が「いや、俺は善意で動いてるんで。善意で動く人間なんで、きますよ。パンクするから来ないとってのは、善意じゃないですよ」と言っていた。「ゼンイ」という言葉の語気が強かった。

・ハンバーガーのあとは両サイドの三角形の部分のビニールを貼り、余分なビニールを切り、さらに明日にかけて最大風速二十メートルの暴風になるという予報もあったし、風がどんどん強くなって梢を揺らす恐ろしい音が頻繁にするようになってきていたので、この三角形の躯体ごと倒されかねないと思い、正面から風で押されても既存の手すりの足元に引っかかってくれるように、長いツーバイフォー材を二本、手すりの下を通るような位置に仮打ちした。道路から見ると、駐車場の上にあたる2階の屋外に約20のスポンサーのロゴが描かれた三角形のビニールハウス(しかも骨組みは木製)が立っていて、左右両端からはツーバイフォーが道路に向かって少し飛び出しているような形。

・スポンサーのロゴは、黒いビニールテープで囲った長方形の枠の中を白く塗り、その上に絵の具で描いているのだけど、この白地と黒枠が、まわりの雪景色に妙にマッチしている。CAIの佐野さんは「最初からここにあるみたいだ」と言っていた。

1月13日

・実家で父親が、紙に例えたらA1くらいのサイズはありそうな巨大ないかそうめんのパック(1100g入り)を買って食べていて、僕は「俺は80グラムのいかそうめんを一日で食べただけで、食べすぎたかって不安になったのに、これ1キロあんじゃん」と言っている夢を見た。

・レジデンスの部屋は暖かい。ここの窓からは雪に覆われて凍りついた白樺の木が何本も立っている林が見えるのだけど、それがとても寒そうだからここが暖かく感じるのかもしれない。あるいは、外の寒さを知っているから暖かく感じるのだろう。

・「東北は雪のせいで文明が遅れている」と中谷宇吉郎さんの時代のころに考えてしまうのも無理はない。これだけの雪を目の当たりしにて、歩くのも遅くなるし雪かきに時間を取られるし、とにかく効率よいものが正義とされていた価値観の中では無理もない。でも今は逆転していると思う。むしろ、雪かきに時間を取られることは、時代の先をいっているように思える。住むことそれ自体を考えざるを得ないというか。

・四輪駆動車じゃなくて大丈夫かと言ってくる人はたくさんいたけど、FFじゃなくてFRで大丈夫なのかと言ってくる人はいなかった。僕の車は古いせいかFRなので、スタッドレスタイヤだけではだめだった。チェーンがいる。しかしこちらの人に聞けば、古いタクシーなんかはいまでもFRが多いらしく、交差点なんかでドリフトしながら曲がっている姿を時々見るという。「FRなら、慣れてくればドリフトできるようになるよ」と言ってくれた。なんだか元気をもらった。

・今日はすこしゆっくりめにレジデンスを出て、スーパービバホームに

アースパイプになりそうなものを買うために、CAIについてすぐに買い出しに行った。アースパイプというのは、今回のプロジェクトで技術協力をしてもらっている丸田知明さんが一昨年の札幌市資料館前での実験の時に発案してくれたもので、家の外の空気を取り込んで落ち葉の温床内のパイプを通して温め、家の中に吐き出させるというもの。一昨年にやったときは塩ビの水道管を使ったのだけど、それだと肉厚がありすぎて変に断熱してしまうかもしれないと思い、肉の薄いものを探したらぴったりのものがあった。縦使い用の雨樋。水道管よりも太く、薄い。空気を通すだけなので強度もいらない。米糠もついでにゲットしようとしたが空っぽだったので、近くのコイン精米機をグーグルで探して、米糠まみれになりながら40リットル袋の半分ほどを手に入れた。

・今のところ私的札幌市内最強ホームセンターはジョイフルエーケー。ジョイフルホンダ瑞穂店ほど大きくはないけどかなり巨大。「プレハブ用木材」として、30mm×40mm×1800mmの角材が一本百五十円とかで売っていて驚愕した。通路が広くて買い物が楽しい。札幌のホームセンターは通路が広い気がする。おそらく服がモコモコしているからだろう。次にスーパービバホーム清田羊ヶ丘店。ここも超でかいし、でかいコイン精米機がある。最初にツーバイフォー材を買ったホーマック西岡は巨大なワンボックスカー(キャラバン)を貸し出ししてて面白い。

・これまでに札幌で買った主な材料

・ツーバイフォー材4メートルを18本ほど

・むしろを六枚ほど

・鶏糞30kg

・温床用パネルとして針葉樹合板9ミリを四枚。一枚1800円くらいした。高い。

・「プレハブ用木材」1800mmを24本

・温床に水をやるための20mのホース

・アースパイプ用雨樋

・ビニペット11本とそれ用のスプリング

・敷藁2袋

・買い出しから帰った頃にはもう暗くなっていたので作業はせず。少しだけ雪かきはした。その後、CAIで個展が今日からオープンしたゆうやさんと佐野さんと内田と四人で近所に飲みに行った。ゆうやさんの展示は、なんとなく札幌の光の感じを想起させる。空気が全体的にぼんやりと色づいていて、光源がわからない中にオブジェクトがある感じ。絵画はイリュージョンになるが彫刻はこの世界に存在している感が強すぎてイリュージョンになりにくいが、そこに挑戦しようとしているという金井先生のマークマンダース論を思い出した。また内田とゆうやさんが作品や作品タイトルのことでものすごく盛り上がっていた。作家として運命的な出会いのように見えた。

1月14日

天候に恵まれまなさすぎて笑えてくる。前の日にどれだけ雪を掻いても、朝来たらこれだ。ずぶずぶと現場に入り、また雪かきから始める。内田の雪かきスキルが上がっている。雪かきをしたら寒くなくなると言って喜んでいた。

・まずは斜めに張っているビニールが雪の重みでかなり伸びているので、補強材を骨組みの間に入れた。予定では4本だったけど、不安だったので8本入れた。それでも不安だ。雪の重みはまったく馬鹿にできない。ビニールの下から雪を持ち上げようとしてもびくともしなかった。空から「重さ」が降ってくるという災害。

・次に温床の枠作り。既存の骨組みに切り出した針葉樹合板を打ちつけて壁をつくり、そこを起点にして「プレハブ用角材」でフレームを作りながら箱にしていく。下には何も敷かない。縦1.8~1.6メートル、横1.8メートル、深さは60cm。子供用農業雑誌「のらのら」の温床特集で必要最低限と言われていた深さ。箱を作ったあと、アースパイプを通す。昨日買った雨樋をパイプにした。一昨年の実験では塩ビパイプやっていたのだけど、雨樋の方が肉が薄いので温床の熱を伝えられそうだと思った。それを、合板の低いところに穴を開けて通し、そこから少しずつ高くする(地面との間に木材を挟む)ようにして枠の中で4回直角に曲げ、できるだけ暖かい土に触れる長さを稼いでから最後に垂直に立てて温床から上に突き出るようにする。暖かい空気は上に行くのでこうしたのだけど、これでうまくいってくれるのか。ざっと調べたが参考になる例が見当たらなかった。

・温床の枠を作り終えたところでもう真っ暗+体力の限界だったので作業終了。明日はいよいよ落ち葉を仕込む。

・ここで生活を始めたら、雪を温床で溶かして水にして、融雪剤として手軽に手に入る塩化カルシウムと水を反応させて熱を作り、それでじゃがいもを蒸してじゃがバターにして食べたら北海道ぽくて良いかもしれない。

1月15日

・今日も吹雪!すげー吹雪だ。雪がほとんど真横に向かって吹いていて、空気は白く濁った煙みたいだ。本当に天候に恵まれている。こちらにきてから一週間経つけど、一回も青空を見ていない。全日雪が降っている。東京を出発する時も東京は大雪だったし、どうも雪に好かれているらしい。ラジオを聞けば電車が運休しまくっている。JR北海道によると「今後の天候によってはさらに運休が増える可能性がある」と言っている。暴風雪、波浪、なだれ、着雪注意報が出ている。わくわくする。環境が厳しいほど、このプロジェクトはやりがいがある。

・ケムリエのインタビュー原稿がきたのでチェックした。インタビュアの人も喫煙者で気さくで話しやすく、雑談的な雰囲気だったけどうまくまとめていて驚いた。聞きながらものすごく褒めたり、僕に感心を持っていることが伝わってくる人で、そういうの自体かなり久々だったので元気が出たことを思い出す。誰かと協働するなら関心を持続させてくれる人としか仕事したくない。

・レジデンスがある山から降る道がもう完全に山道で、吹雪の日なんかはもう遭難してるような気持ちになる。今日は山を降りて最寄駅に向かう途中の自販機でレッドブルを買おうと思った(こちらで作業していると強い炭酸の甘い飲み物が欲しくなる)が、取り出し口が雪に埋まっていてびくともせず、買えなかった。

・喫茶店のノボリを見るとコーヒーが飲みたくなる。たぶん街が白くて寒いので、黒くて熱いものを欲するんだろう。

・ついに今日温床を仕込んだ。材料は

・紅櫻公園で集めた45リットル袋で18袋と70リットル袋で10袋集めた落ち葉

・発酵鶏糞30kg

・米ぬか13.65kg

・切り藁2キロ

・鉄骨の床なので、底冷えを防ぐために、そして水分を含ませるために底にむしろを二重に敷いた。さらに木枠の壁にもむしろを打ちつけた。むしろが入るだけで一昔前の物のような見た目になる。

金沢でやったときは鶏糞は15キロだったが米糠は50キロあったし、他にも油粕とか鰹節とかいろいろ突っ込んで六十五度以上にまで温度があがったのだが、今回はシンプルに鶏糞と米糠(「のらのら」に書いてある分量に近い)でやってみた。午前中から着手して、落ち葉と鳥の糞と米ぬかまみれになりながら、落ち葉→時々切り藁→鶏糞→米糠→(時々水)を繰り返してミルフィーユ状に重ね、時々底に手を突っ込んで切り返しをしながら落ち葉を使い切るころには温床の枠(外見は風呂みたいだ)の9割くらいのところまで埋まり、最後に、買ってきたホースをCAIの水道につないで10分くらい水をかけ続け、上から踏み込んだら7割くらいまで嵩が減った。温度計を突っ込み、上から新しいむしろを二枚かけて蓋をした。

・温床の最初の温度は2.2度、外気温(ビニールハウスの中の気温)は0.2度。温度変化を見るために、GoPROを温度計の前に置き、タイムラプス機能を使って30分に一度シャッターを切るように設定し、CAIから延長コードをひっぱってきてGoPROに繋いだ。コールマンのUSBランプを充電満タンにして灯り(三段階で光量を設定できるうちの一番弱いやつ)を灯して、今日の作業は終了。終わった頃には夜で、僕は0.2度の気温の中で汗だくで泥まみれになっていた。温床を仕込んだ途端、ビニールハウスの中が秋の香りに包まれた。

・気がつけばご飯をめっちゃ食べている。今のところこちらで食べているもの全て美味しいのだけど、なんかとにかくがつがつ食べないと体が動かなくなるのをどこかで分りながら、飲むように食べている。美味しいことはわかりつつ、それをじっくり吟味して(フレンチのコースみたいに)食べるような感じではなく、半ば無意識に気がつけば食べ終わっているという感じ。こちらは飲食店でも一皿の量が多いし、お弁当もアベレージがでかい。東京と比べ体感で1.2~1.3倍くらいの量がある。でも全て食べてしまう。普段はあまり食べないのに。ここでは人並みに食べている。体の声が聞こえるようだ。食べないと動けないぞという声が(僕は自分の体の声を聞くのはうまい方だと思う)。代謝が激しくなっている。寒い中これだけ働いていればカロリーが必要なのは当たり前だ。昼間の作業も、服が嵩張って重たいし気温が低いしで、とにかく疲れやすいので30分~1時間に一回は休憩してお菓子を食べまくってお茶を飲みまくってまた働く、という感じ。僕は制作中に甘いものをかなり食べる方だと思う(机に向かうだけの日でも、一日でかりんとう一袋とラムネ一袋くらいはたべてしまう)のだけど、こちらではそれに加えて、しょっぱいものを常に常備しておかないとダメだ、という気持ちにさせられる。夜は野菜たっぷりレトルトカレーとご飯とセロリ塩昆布のサラダ(刻んだセロリに和えた塩昆布にごま油をかけただけのやつ。無限に食べられる)とニシンの昆布巻きみたいなお惣菜とポテトサラダとポテチとビール1.5本とCAIでもらったポンカンみたいな果物。食べ過ぎだ・・。

・公的機関で働いているからといって、マイナンバーカードなんて絶対に作らない、国が信用できないから、と言ってはいけないという理由にはならない。むしろ働いているからこそ厳しく見ていく必要がある。当たり前のことだ。

1月16日

・作業はすこし遅れ気味な気がするというか温床の着手に一週間かかってしまったので遅れているわけだけど(と言っても何か具体的に予定を決めていたわけではなく、なんとなく半ば無意識的に温床は最初の3~4日で仕込めるんだろうなあとぼんやり感じていた)、ひとまず昨日で温床は仕込めたので今日は休みにする。しかし休むとなった途端、朝起きてカーテンを開けたら風も雪も止んでいて、薄い雲越しに、長らくみていなかった青空が空一面に見えている。本当に気が利く天気だ。憎いね。

・今日が最終日らしい本郷新記念札幌彫刻美術館の高橋喜代史展「言葉は橋をかける 」と、文学館の展示と、スパイダーマンの新作をみたい。きーぼーさんの展示は楽しみ。タイトルがとても良い。言葉は基本的に断絶を生むものだけど、時々橋をかけることがある。川上未映子の小説みたいに。夜は椎木さんとのラジオ企画。

・札幌は街全体がスキー場みたいだ。施設から施設へ、雪のボコボコをブーツでザクザクと歩く感じと、蛍光色のノボリが方々に立っているのがスキー場っぽい。

・CAIにて温床の温度をチェックしたが全く上がっていなかった…。むしろ1.5度に下がっていた。まずい。あと六日でここを整備して眠れる環境にしなければいけないのに。何が足りないのか。まずは窒素材が足りないのは多分間違いないので、鶏糞を足すことにする。ホームセンターへ。その前に本郷新記念美術館へ。

・本郷新記念札幌彫刻美術館。舟越保武や佐藤忠良と同時代に活躍した北海道の彫刻家、本郷新のアトリエを改修して作られた美術館とのこと。本郷さんのことは知らなかったけど、氷雪の門という彫刻作品が独特なポーズすぎて、樺太のための慰霊碑らしいのだけど、最初見て笑ってしまった。ここにあるのは石膏像で、実物のブロンズの方は稚内の先端にある。

・キーボーさんの展示、こんな山の上の美術館でこんな展示をやっている!という感じが良かった。アルファベットのA→Zに変わっていく木彫の作品とか一番最初の「that’s good news」ってやつとか、雪を溶かしてる映像とかは好きだ。放射性廃棄物を主題にした映像作品は、言いたいことをあまりにもそのまま言葉にしてしまっているモノローグの感じがちょっと微妙で、政治的問題を作品として扱うことで消費している感じが危うい。通行人を映像作品に出演させるときは、それが搾取というか作品に利用されている形にならないように気をつけなければいけないなと自戒を込めて思う。

・鶏糞を追加で買おうと、CAIから一番近いが他の店舗に比べたら品揃えはそこまででもないホーマックにいったら、店舗内には三キロの袋しかなく、係の人に聞いたら「大袋は外売り場にあるんですが、雪で埋まっちゃってるんで…すみません…」と言われた。雪で埋まってしまってもう取れないらしい。笑った。

・二つのホームセンターを周り、追加で籾殻4キロと、細かく切って炭素材として使うための天然むしろ3枚と、発酵鶏糞15キロと、温床を切り返すための短めの備中鍬と、熱を出す実験のための塩カル5キロを買った。

・買い物中は思いつかなかったが、断熱材をてにいれたほうがいいかもしれない。壁と床に断熱材を入れて保温能力を高めることにする。「むしろ」だけでは熱が逃げてしまうようだ。外気0度では。温度計の深さチェックも必要。

・19時から椎木さんの生活工房での展覧会のためのラジオ収録をZOOMで画面オフでやった。コロナ禍になってから世界的に同時性が強まっていて、つまり「今」のことばかりみんなが話すようになり、歴史という縦軸が見えにくくなってるなという話から、未来のことをどうやって考えるのかちょっと忘れてしまったことなど。椎木さんも同じことを感じているらしい。

・その後レイトショーでユナイテッドシネマ札幌のスパイダーマンNWHをIMAX字幕で観る。この映画館には二年前に広告看板の家のための実験で来た時にも来て、ミッドサマーを観て、すげーもん観たなあと余韻に浸りながら、札幌市資料館前に立てたビニールのテントに帰ったことを思い出した。あの頃とは時代の雰囲気と個人的な心境と、色々と変わっている。

・スパイダーマンは三時間あっという間で、面白かったのだけど、札幌で雪の中落ち葉の温度を気にしながら生活しているせいか、展開が目まぐるしすぎて、映像作品の中って時間軸が自由自在なんだなあと、馬鹿みたいに当たり前のことを思った。とても疲れた。MCUは少し重たく感じようになってしまっているかもしれない。単発で終わる作品ではなく、前後が続いているシリーズものであるという「重さ」を感じてしまう。

1月17日

・今日も青空が見えている。車をレジデンス近くのコインパーキングに停めてきたので、断熱材の買い出しをしてからCAIに向かう。こちらにきて最初の数日は、8時半とかに朝ごはんを食べて仕事に出かけていたのにここのところは9時半とか10時とかが限界だ。今日は9時半に起きた。疲れているらしい。服が重いので、動くだけでカロリーを消費する。また雪道なので、歩くだけで集中力を要する。朝はパン。

・気のせいかと思っていたけれど、今日確信したのは、こちらの人は狭い雪道ですれ違うとき右に避ける傾向がある。正確に言うと、「右によけると決めている」人が少し多いような気がする。ここは人とすれ違う街だ。一日に必ず一度か二度は、雪道(一面雪で埋まっているので、歩道は人が一人歩ける程度の溝のようなものができているだけなのだ)で人とすれ違う。

・今日は気候が安定している。割と温かくて(と言っても多分2度とか3度とかだけど)作業しやすい。初の作業しやすい日!

・温床の温度はやはり上がっていなかった。1.6度だった(表面から30cmで測っていたが、5センチのところで測ったら2.4度だった)。ハウス内は3.5度。何週間も待っていれば徐々に上がってくるのだろうが、こちらは菌に急いでもらわないと、会期が終わってしまうので、ケツを叩く。CAIにくる途中で買ってきたスタイロフォーム(厚さ50mm)を、温床の壁(合板と、むしろの間)と床(鉄骨の地面と、むしろの間)に入れる。コンビニで1200円のレインコートを買って着て、再び鳥の糞と落ち葉と米糠の泥の中へ。

・その前に昼ごはんにした。さっき食べたばかりなのに腹が減るのが腹立たしい。コンビニで「店内キッチンだからできる!通常の1.5倍量!」をかかれた豚肉丼みたいなものを食べる。うまかった。全部食べた。

・(おそらく)一時間半ほどかけて断熱材としてスタイロフォームを入れる。まずは温床の隣にシートを敷き、その上に温床内の落ち葉を半分ほど掻き出す。それから内田に細かく切ってもらったスタイロを一欠片ずつ差し込むようにして、床や壁に入れていく。入れ終わった頃にはもうへとへとであった。すこし休憩するつもりが、暖房をつけたCAIの室内に入るとだるくなってしまって、30分は休んでいたと思う。

・断熱材を入れた枠の中に落ち葉を戻しつつ、昨日買った籾殻4キロと、天然むしろ2枚分を細かく切って作った藁と、発酵鶏糞15キロと米ぬか1.75キロを少しずつ混ぜながら、時々備中鍬で切り返しながら温床を仕込み直す。最後に水を5~10分ほどかけて、もみがらをまぶすように(保温のため)かける。仕込み終わった温床の表面から10センチ位のところに温度計を入れ、上からむしろを四枚被せて終了。終わったのは17時台だったと思う。

・多分時間にしては一時間半か二時間そこらだと思うのだけど、全身運動なので丸一日肉体労働をしたような気持ち。

・一時でいいから、菌が活動を始めるスターターとして中を温めた方が良いかもしれない。塩カルに水を混ぜて化学反応で温めたお湯を作り、その湯を温床内に仕込んだアースパイプに通してみるのはどうだろう。勾配をつけて設置したので、うまくいけば上から入れたお湯が下からでてくれるはず。出口をふさいげば、一定時間お湯をアースパイプ内に止めることもできるだろう。明日やってみる。

・作業が終わった頃、軍手は人の手の形をした土の塊みたいな代物になっていた。

・CAIの展示は今日は休みだったのだけど、なにか仕事があるらしく来て作業をしていたゆうやさんもちょうど帰るところだったので、一緒にCAIを出て、澄川駅前の一の星という最高の居酒屋で三人で飲んだ。ゆうやさんと、韓国では一人でご飯が食べられるお店がなくて辛いという話で盛り上がる。そういう人がほとんどいない国なのだ。みな外でご飯を食べるときは、誰かと食べる。「友達がいない人だと思われます。最近は少しずつ一人で入れる店も増えてきましたが」と、釜山の学芸員のヨンジュンさんは言ってた。僕は釜山で毎日何十分もウロウロして、店を覗いては一人で入れそうな雰囲気ではないと諦めては次の店へ行き、しかしいつまでもそうしているわけにはいかないので、意を決して入っていく、ということを繰り返していたけど、ゆうやさんもソウルで同じことをしていた。またゆうやさんが北京に滞在したとき、生活のためのものがベッドと炊飯器しかなくて、あとはホワイトキューブだったという話が面白かった。炊飯器の限界に挑んだらしい。味噌汁も作ったし、炒め物もやった、結構なんでもできると言っていた。「麻婆豆腐は良い。作りだめして四日位かけて食べる」という話で内田と盛り上がっていた。炊飯器はなんでも作れるという話は、別のところで聞いた覚えがある。僕は昔作品内で鍋ばっかりやっていたというのもあり、鍋に関してはかなり経験があると自負している。胡麻豆乳鍋を僕以上に美味しく作っている人には出会ったことがない。アーティストが滞在先で工夫して作っている料理や、持ち歩いている道具などを集めた本があれば面白いんじゃないだろうか。コーヒーミルと豆だけは欠かさず持っていくという人とかいそう。

・かもめマシーンの萩原さんからリンクを教えてもらった「もしもしシモーヌさん」を観た。シモーヌヴェイユのテキストを役者が読む声を電話ボックスの黒電話で聞くと言う作品なので、YouTubeで映像としてみるのとは体験として比べるべくもないのだけど、それでも面白かった。普段一人で黙読している「重力と恩寵」のテキストを人の声を通して聞くと、シモーヌさんが再生される感じがある。

・人はそれぞれに固有の苦しみを持っていて、その大小は他人と比べることはできないけど、孤独の深さはなにか共通する尺度があるかもしれない。シモーヌヴェイユの文ほど深い孤独に落ち込んだものは見たことがない。

・佐々木さんからの、最終課題に対するコメント。文章の「軽さ」がもつ可能について。文に限らない。美術にも言える。「軽さ」は大きなものを内包しうる。あるいは美術において説明的になってしまう作品について。自分が感じる違和感をそのまま口にしたところで相手に伝わるのはその違和感本体ではなく、「こういう違和感を口にしたい人なんだろうな」ということになってしまう。この難しさ。空が青いですね、と言った時、「空が青いこと」ではなく、別のことが伝わってしまう。伝えたいメッセージがいつも「逃げてしまう」ことについて。

1月18日

・10時に起きた。昨日買ったパンとフルーツグラノーラとサラダと三日位前のあまりの餃子と五日くらい前のあまりの大学芋を食べる。

・青空ではないけれど、雪は降っていない。風もなさそう。時々、暴風かと思ったら雪が屋根から落ちる音だったりする。日記を書いてから現場へ。思いがけず時間がかかり、十二時過ぎにようやく出た。駅前のマックスバリュの二階で水温計とアルミテープを買っていった。

・着いたとき温床は2.2度。室温は1.3度。ちなみにこの温度計は最高最低温度を記録できるのだけど、昨晩の室温の最低気温は-6度だった。寒い。鉄骨の、しかも部屋とかではなくただの駐車場の上だからだと思われる。雪の上の方がまだ暖かいだろう。それでも温床内は2度前後をキープしているので、彼らは頑張っている。ただ、いくら活動しても熱が逃げてしまうんだろう。特に床下が寒そう。どうしたもんか。

・まずは事前に考えていた、アースパイプの中にお湯を入れる作戦と試す。その間、内田には内部の居室のフレーム用の木材を切ってもらっていた。

・温床から垂直に突き出たアースパイプから入れた水が、温床の壁の下部分から突き出たパイプから出てこないと意味がないので、まずはそれを試してみたのだけど、全然出てこない。勾配をつけながら設置したはずなのに、どこかで歪んでしまっているらしい。すこし掘り返してみたら、一番高いところを通っているパイプが、落ち葉の重さでひしゃげて曲がっていた。壊れてはいなかったけど、これでは水は流れない。でもすぐに問題が見つかってよかったと思い、それを直してまた水を通したのだが、まだ流れない。この温床内のパイプのどこかでまだ別の問題が起こっているらしい。また落ち葉を底の方まで掘り返して確認しなくてはいけないのか・・と、愕然とした。たぶん十分くらい、気力も何もかも削がれた状態で温床の上にへたりこんでいた。しかし僕は昔読んだ内田樹の「死と身体」に書いてあった「心を未来に逃す」という方法を思い出した。目の前に面倒なことや痛みを伴うことがあるとき、心を未来に飛ばしてしまって、目の前のことを過去の出来事として捉えてしまうという技。ボクシングの話のなかでそのことが書かれていたと思う。昨日もひーひー言いながら水と鶏糞と米糠をたっぷり含んだ落ち葉を、大変嵩張る服を着ながら掻き出したのだが、今日も同じことをやるのか…しかしこれはもう過去に過ぎたことだ。あれは大変だったなあと、誰かに話している自分のことを強く思い描き、ヨシッと言って携帯のスピーカーからLightersの「Don’t worry」を爆音で流しながら作業を始めたら、CAIの佐野さんがちょうど様子を観に来たので、爆音で音楽がかかったのはほんの十数秒なのだった。佐野さんは言った「いろいろ起こるねえ」と。その通り、色々なことが起こる。熱を通しやすくするために肉の薄いパイプにした結果、落ち葉の重さでひしゃげてしまうなんて想像できなかった。人生を縮小したような体験の連続だ…。ほんとうに。

・ライターズの他にも平沢進の「救済の技法」を流し、「急げよ、ニューロンの、ニューロンの谷間へ!」と歌いながら、落ち葉を掘りかえし、ついに原因を突き止めた。一部、パイプの勾配のつけ方が甘く、水が流れないところがあったのだ。それをなおすと、ついに先ほど流した水が横から出てきた。感動した。トンネル工事が貫通したとき、作業員はきっとこんな気持ちになるんだろう。

・それから落ち葉を戻し、試してみたかった塩化カルシウムで熱を作る実験をやってみる。コールマンの鍋に約6リットルの水を入れ、そこに塩カルを一キロくらい入れて混ぜてみたら、少しずつ温度が上り、深いところで水温30度程度までは上がった。でもそのくらいだった。水ではなく塩カル自体が発熱するので、その粒々自体はもう少し高い温度になっているとは思う。たぶん四十度とか五十度とか。でもそんなもんだ。それを放置しつつ、朝スーパーで買ったお昼ご飯を食べる。

・昼を食べて戻ると、鍋に入れた塩カルが固まって取れなくなっていた。水で固まってしまうらしい。次から次へといろいろなことが起こる…。特に今日はすごい。ネットで調べて、鍋を火にかけたらすんなりと取れたからよかったのだけど。僕はハイになっていた。もうすこしで塩カルを食べ始め、小腸を壊死させるところだった。

・その温い水をまずアースパイプの中に通し、その後カセットコンロを使って80度くらいに熱したお湯をアースパイプの中に入れた。これで少しは落ち葉についた菌が活動しやすくなるといい。最初の温度が低すぎるので、菌が活動をスタートしにくいのだろう。だから最初のスターターとして温めてやる必要がある。

・さらにもうひとつの奇策として、温床の上にシートを敷き、そこに塩カルを500グラムくらいと水を撒いておいた。これで少しは暖かい、菌にとっての屋根ができるはずだ。

・塩カルはおもったほど発熱しなかった。酸化カルシウム(肥料用の消石灰)ならかなり発熱するのだろうけど、そういう化学実験みたいなことをやりだすとキリがないのでやめておく。消石灰は失明とかするし。

・佐野さんから「ゆたんぽはどうか」というアイデアをもらった。明日試してみる。

・ここにいるとあらゆるものが凍る。今日はホースが凍ってしまい、その解凍のためにシートの上の塩カルに水をまくのに時間がかかった。水気をふくんだあらゆるものが凍る。屋外に置いておいた木材も凍りついている。名古屋の「広告看板の家」では、屋外に置いた木材がすぐにかびてしまったが、こちらでは凍る。

・みんな厳しい環境だとか過酷だとか言うが、その言い方は何かを見落としている。僕のこのプロジェクトを仮に過酷だと言うならば、こんな雪ばかりの寒い土地に街をこさえて、何百万人という人が住んでいて、ほとんど滑りながら、トロッコみたいにがたがたと車で移動して仕事に行ったりコストコに行ったりホームセンターで雪かき道具を買って家に帰ったりしているこの状況すべてがどうかしている。僕の活動なんてここに街があるという自体の逸脱に比べれば豆粒みたいなもんだ。

1月19日

・9時に起き、昨日スーパーで買ったよもぎ餅とクノールのカップスープとわさび菜のサラダ。餅でお腹いっぱいにして現場に挑む。

・レジデンスのキッチンの台のところにはスイッチが二つ横に並んでおり、左側がライトで右側が換気扇なのだけど、さっき気が付いたのは、僕はここに来て早々に左がライトだと覚えたということ。一度も間違えたことがない。普通新しく入った部屋例えばホテルとかのスイッチって、何度かは間違えるものだと思うのだけど、ここでは僕は間違えていない。思うに、スイッチが左右に並んでいるものの方がどのスイッチがなんなのか覚えやすいのだ。上下だと混乱してしまうが、左右だと覚えられる。

・11時15分にレジデンスを出る。

・駅前のマックスバリューの二階で、湯たんぽを買おうと思ったのだけど、店員に聞いたらレンジで温めるタイプのものしかなくて・・という。湯たんぽ、使っている人そんなに多くないのか、こういうところでは買わないものなのか、と少し悲しくなる。僕も使ってないけど。結局「新ぬくぬく当番」というホッカイロを買う。

・現場につき、温床ない温度を見たら4.0度になっていた。すこし上がっている…。まだまだ先は長そうだけど兆しが見えた。

・まずアースパイプ内のお湯を排出(すっかり水になっていた。あたりまえだ。でも凍ってはいなかった)して、新しいお湯を入れる。

・次に、佐野さんが持ってきてくれた湯たんぽ(プラスチック製の、少し大型のやつ)にお湯を入れ、温床の表面から深さ20センチのところへ埋め込んだ。佐野さんがずっと家で使っていたものを譲ってくれた。毛玉だらけになった綿の袋(緑色)にいれた湯たんぽごと埋めた。佐野さんの常在菌が混ざることになる。落ち葉の菌たちも喜ぶはず。

・それから透明な薄いビニールを温床の表面に広げ、その上に「新ぬくぬく当番」を一袋分(十個)置き、上からスタイロフォームとむしろを被せて断熱。「新ぬくぬく当番」の熱と佐野さんの湯たんぽが発酵のスターターになることを願う。

・お昼にカップヌードルを食べる。

・今日は寒かった。日が落ちてからのハウスの内の温度はマイナス三度だった。おまけに、お昼に食べたカップヌードルではカロリーが足りなくて、体の発熱が甘い気がした。やっぱり米を食べた方が良さそうだ。

・石炭不足の汽車になったような気分だ。「燃焼機関」としての体をこれほど強く意識したことはない。「カロリーが足りないと寒くなる」この実感。

・湯たんぽを埋めた後、ドア作りに取り組む。ジョイフルエーケーでかったプレハブ用木材を使って、高さ130センチ、横60センチほどの木枠を作り、それに蝶番をつけて家本体のフレームに打ち付ける。内開きのドアのフレームができる。ドア枠にぐるっとビニペットをとりつけ、最後にドアノブ用を枠に取り付けるための加工を行った。世界的にも珍しいドアノブだ。板材を一切使わず、30mm×40mmの角材の組み合わせだけでドアノブを取り付けた。これは単に、アトリエからジグソーを持ってくるのを忘れたからだ。手持ちの材料と道具だけで目的を果たす。ブリコラージュ。

・思えばブリコラージュの連続だ。椎木さんが言っていた「村上さんが、小学生が模型作るみたいにして家を作ってるのを見て感心した」というのは、たぶんこういうことなんだろう。悪く言えば行き当たりばったりで無計画、良く言えばブリコラージュ。ただ意識しているのは、細かい計画を立てれば立てるほど想定外の出来事に対応しにくくなるというのを、ここ十年間の作家生活で実感しているので、自分の中に緩衝地帯を持つというか、計画と無計画の間を「計画」しているような感じはある。あとはナルホイヤ。やってみないとわからないし、未来になってみないとわからないとか思っている。

・作業をしている間もすこしずつ温床内温度は上がっていき、18時40分には6.3度になっていた。ちなみにハウス内温度はマイナス3.3度。気温差9.6度!彼らは頑張っている。

・夜、へとへとの状態でケラピリカというお店に向かう。アイヌ料理とイタリア料理の小さなお店。佐野さんに誘ってもらい、マユンキキさんやゆうやさんや内田や坂口さんも一緒に。全ての料理が美味しかった。今は常連さんしか入れない、今回はマユンさんが一緒だから入れたという。ゴルゴンゾーラのニョッキやニシンとトマトのパスタなどは、家庭でも参考にできそうな感じがしたが、かぼちゃのパスタや、栗のコンフィを使ったパスタなどは、食材の組み合わせの妙とパスタの茹で加減の巧みさと完璧な味付けで、もう神の領域というか、参考にするのも諦めるほどの代物であった。鮭のルイぺも鹿のサッカムも超絶美味だった。名前を忘れてしまったのだけど、豚足をコラーゲン状になるまで調理したものとかは、「ここに住んでいたら、こういうものを作るようになるよなあ」と納得せざるを得ないものだった。毎日屋外で作業をしている身には、アイヌの料理は心強く感じられた。ルイぺは鮭を干して凍らせることで作る料理だし、全ての料理や調理法が土地に根ざしていることが、屋外で作業をしている身からはよくわかる。この体験は一生忘れないかもしれない。

・マユンさんから面白い話を色々と聞く。まず僕は家を建てているCAIのテラスは、下が駐車場なのでいわば「高床式」であり、それだと寒いだろうと。アイヌのチセ(家)は、地熱をつかって暖を取るという。保存庫は高床式にする。そのほうが温度が下り、保存が効くからだ。僕はいわば保存庫に住もうとしている。札幌のマンションなんかでも、駐車場の真上の部屋は寒いから家賃が安いらしい。またアイヌのチセの話だったと思うのだけど、笹の葉の近くに建てて、その葉が地面に落ち、その上に雪が積もることで断熱材になるという方法もあると。

・また、ヒグマの肉を食べたら良いとも言っていた。暑くて眠れなくなるくらい体が温まるらしい。とにかく動物性の油を食べた方がいいと。鶏肉ではなく、四本足のものが良いと。澱粉質のものを食べるの良い。

・動物の毛皮を手に入れたら良いとも言っていた。猟師と知り合うか、リサイクルショップでも売っていることがあるらしい。

・マユンさんの話を聞くかぎり、僕はかなり厳しい条件下で「広告看板の家」をやろうとしている。それはそれで燃えてくるものはあるが、次のチャンスがあるならやはり地面の上でやりたい…。

・マユンさんはめちゃくちゃとっつきやすい人だった。また会いたい。

・札幌はアイヌ語で乾いた川という意味なのは有名な話だけど昨日も湿度90%超えだったし、全然乾いていないじゃないかというつっこみをしたくなるが、それはいわばアイヌの環世界というか、アイヌのパロール的には乾いているということなんだろう。だからこちらのパロールでの乾いたと言う言葉を当てはめるのは違う気がする。ここにいるとなんとなくわかる。

1月20日

・疲れている?体が疲れているのをビシビシと感じる。眠い。重い。連日酒を飲みすぎているせいか?でも心地よい疲れ方ではある。登山の後のような、スキーの後のような心地よさ。

・天神山の上から、札幌の街並みが遠くまで見える日だ。凄まじい空の色だ。薄い色。雪の白を反射しているからか。なんとなく北欧の空に似ている気がする。スウェーデンに滞在していたとき、空がずっと明るかったので夜になったことに気がつかず、パブで飲んでいたら夜9時になっていて、スタジオに帰る途中で見上げた空の色。この色だった。

・13時前にレジデンスを出るが、今日はもう休みにして温泉でも行こうということに。疲れているので幌平橋駅では階段ではなくエレベーターを使う。内田が「省エネモードだ」と言う。省エネモード発動だ。今までの人生において「省エネモード」みたいな概念を適用したことはなかったが、これは良いかもしれない。省エネモードという設定を自分にかける。ずっと名前が思い出せないけど、早稲田の先生で、ワイアードとかによく出ていて、オードリー・タンとリリー・フランキーとスタン・リーの間みたいな名前の人が「ビッグイシューが売っているところを見たら何も考えずに買うというアルゴリズムを導入した」と言っていたみたいに、日々の生活になんらかのプログラムを適用する(つもりになる)ことは有効かもしれない。

・人間にはコンピューターのような側面がある。僕は糖分が足りなければ頭が働かない。わかりやすすぎるくらいに働かない。糖分が足りないことはすぐにわかる。加えて札幌では、カロリーが不足していれば体温が上がらない。

・温床内温度が24.9度になっていた。素晴らしい!佐野さんの湯たんぽ+常在菌が効いたのか、一気に上がってくれた。しかし鶏糞をかなり入れたせいか、匂いが気になる。この空間で暮らすのは少し厳しい。なにか対策を考えなければ…。本当に、何か一つ進むと別の問題が首をもたげてくる。

・「つきさむ温泉」というスーパー銭湯みたいなところに行く。お湯は茶色い。露天風呂からの眺めがすこぶる良い。そして「濾過循環ではなく掛け流し風呂なので、浴屋の場所によって温度が違います」という最高の文言が貼ってある。これはどういう意図なのか。「温度が場所によって違うじゃないか!」という苦情に備えているのか(そんな人いるのか?)わからないけど、温泉としては最高だ。今作っている温床と同じ。「場所によって温度が違う」という、ごく当たり前の状態。

・夜はスープカレーキングという、天神山の近くのスープカレー屋にてラム肉野菜カリーを食べる。めちゃくちゃ美味かった。札幌では美味しくないものと出会う方が難しい。カレーで汗をかいた。そういえば、つきさむ温泉には良さげなサウナと水風呂があったのだけど、僕は入らなかった。入る必要がないと思ったからだ。外を歩いてカレーを食べれば、水風呂とサウナの代わりになる。カレーで汗をかき、外を歩いて体を冷やす。自律神経が整う街だ。吉阪隆正が、服を来てご飯を食べることも建築だと言っていたこと。建物だけで暖を取ろうとするのではなく、生活を総合的に考えるなかで体を温めること。名古屋で「広告看板の家」をやったときにも思ったことだ。マユンさんも「動物性の油を食べた方がいい」「ヒグマの肉は温まる」と言っていたように、食べ物と服も含めて住むことを考えること。この「衣食住」に、僕がひとつ加えるとしたら音楽だ。音楽で体が温まったり冷えたりする現象は確実にある。やる気が出なくて困った時も有効だ。そんなときは先に音楽をかけてしまうと良い。それで体をやる気にさせる。

・音楽から影響を受けるという受動的なことが、能動性を発動させるという魔法。

・内田と、スープカレーキングの店内BGMは日本語の歌じゃないのが良いという話になる。これで件のハンバーガー屋みたいに嵐が流れていたらアレだったと思う。味が変わっていたと思う。音楽によって味が変わること。これも吉阪の言う建築の魔法だろう。いまだって、先ほど聞いていたメガデスのシンフォニーオブデストラクションのエネルギーを使って魂を奮い立たせつつ、書いているのだ。

・コックローチのライブが決定した。14年ぶりらしい。生で聴いたことがないので、水戸だけど、絶対になんとしても、どんな予定が入っていようとも行きたい。マザー。

・ついでに言えばライターズとブラザーサンシスタームーンとローラデイロマンスとマグネティックフィールズとブリーチャーズとあいみょんと平沢進と奥田民生とチェルミコとボブディランのライブも行きたい。メガデスも行きたい。ライブに行きたい…。もう長らく大きな音で音楽を聴いていない。生きている意味がない。

1月21日

・松村圭一郎「くらしのアナキズム」に引用されているジェイムズ・スコットの「文字それ自体が距離を破壊するテクノロジー」という言葉。例えば「徴税」や「戸籍」のシステムに従うことが国からの管理に従うことであるというような視点を持つのは簡単だが、「文字」それ自体が支配のテクノロジーであるという視点は、さすが人類学というか、壮大なちゃぶ台返しを目の当たりにした気持ちになる。学校の歴史の授業なんかでは国の識字率が上がることは良いことだと習うけれど、それはある意味では奴隷根性の現れでもある。

・また稲作が国家にとって重要なのは税収の予測が立つからだという考え方、これもよく言われていることなんだろうけど、ここからなんらかの予測を立てるという営み自体が、奴隷根性の現れであると考えることはできるか。保険とか?保険という商品の考え方は、いわば国家の支配を後押しするものなのか。天気予報とか、電車の時刻表とか、未来を予測して行動する「べき」と考えてしまうこの慣習は、国家の存在と何か関係があるのか。自らを計量可能な存在としてお上に献上するようなことを僕たちはしているのか。数日前の日記に書いた計画と無計画の話もつながるか。ここでいういわば支配者としての国家と、いま採用されている契約国家とは、少し分けて考えなくてはいけないんだろうど。

・そもそも「国家」という言葉に「家」が入っていること自体の違和感も考えた方がいいか。

・朝10時20分。温床は56度になっていた。室温は2.8度。いきなりあがった・・。やはり湯たんぽの起爆剤が効いたのか。高床式では難しいかもしれないと思いはじめたところだったので衝撃を受ける。菌たちはたくましい。お昼ごろには60度を越え、農ビとむしろの蓋を外してみたら一気に湯気が立ち上がり、ハウス内がサウナみたいになり、メガネが曇った。「幌平橋の奇跡」と呼ぼう。完全に発酵熱だけの暖房ができあがった。ハウスの外で雪かきをしていた内田も、「外からでも湯気が出てるのがわかる!」と叫んでいた。

・東京でも、金沢でも、一昨年の札幌の実験でもここまでうまくはいかなかった。チッソ材を思い切って増やしたことと、湯たんぽの起爆剤と、それほど踏み込まずに放置したことが効いたと思われる。踏み込むと空気が押し出され、菌の元気がなくなるのだ。農業の技術としての温床では、温度が上がりすぎるのを防ぐために踏み込む。僕は暖房が作りたいだけで温度が上がるぶんには一向に構わないので、最初に踏み込むのをやめたのがよかった。

・ドアを完成させ、鍵が閉まるようになった。

・君は外に置き忘れた全てのものが凍る恐怖を知っているか。一度降った雪が溶けない恐怖を知っているか。降った雪が体積としてその場に残り続けることの厄介さを知っているか。人間の手でどこかに動かさないと、降り積もった雪はそこに残り続ける。日中の最高気温も氷点下をキープするので、溶けない。このすごさ。

・この物件の大家さんと初めて会った。共用の階段の雪かき(というか、ハンマーとスコップを使っての「雪砕き」)を長々とやってくれていた。寡黙なおじさんで、最初はちょっとこわいなと思ったけど「住めそうかい?」と話しかけられ、「なんとか温度は上がったので住めそうです」と答えると、自分も昔落ち葉で堆肥を作ったことがあると。「結構温度上がんだよな。四十度五十度とか…」と言っていた。「プロジェクトが終わった後、発酵させた落ち葉いりますか?」と聞いたら、小さな畑をやっているから少し欲しいと言ってくれた。70リットルの袋で一つか二つ準備すること。

・温床から醸し出される鶏糞によるガスの匂いが気になりすぎるので、ドアを作ったあと、農ビで温床に蓋をすることにした。蓋をした途端の温度は下がり始め、片付けを終えた18時前(もう真っ暗)には57度になっていた。多分酸素の供給が絶たれたことが原因だと思われる。このままどこまで落ちるのか注意が必要。

・夜、CAI03でゆうやさんの個展のオープンも兼ねた、内輪の懇親会が開催される。内田や佐野さんや端さんやゆうやさんに加え、キーボーさんや漆さんやアーティストの進藤さんや天神山の小田井さんや、横浜から来た天野太郎さんが客として来る。

・僕が「広告看板の家」に住んでいる間の食生活について。鮭のルイペは、外に干しておけば作れるからやってみたい。鮭とばも作れそうだ。鱈を干せば「こまい」も作れると聞いた。とにかく、外に魚を干しておけば何かしら料理になるのか。

・小田井さんから、自宅で使っているプチプチの強力バージョンみたいなやつがジョイフルエーケーで手に入るから保温対策としてどうかという提案。冷房と同じく、暖房もみんなが普段考えていることだから集合知が集まるのが良い。しかもここは北海道だ。みんな暖房に関しては一家言あるはずだ。

・懇親会で中谷宇吉郎の話になり、当時北海道は防衛の拠点だったので、ロシア方面からの敵兵の上陸に備え、人工的な霧を作る実験を中谷さんがやっていたという情報。驚いた。娘がやっているではないか。

・中谷さんといえば、平凡社のスタンダードブックスの栞で福岡伸一さんが書いていたのだけど、荒川修作が60年代にニューヨークに渡った時、中谷さんが書いた推薦状を携えていたらしい。これも驚いた。中谷さんは底が知れない感じがあるな。

【居住期間(1月22日~)

1月22日

・空から光る羽毛が降るようにして雪が降る。

・しかし昼前にはもう雪は光だとか、綺麗事が言えなくなっていた。大雪で、空気は煙たくて、雪は光を反射してしまうので景色が一様に白く、今が何時なのか、風景からは全くわからない。外は朝8時から昼3時くらいまで同じ空気の色だ。頼りになるのは腹時計?

・今日から広告看板の家で寝泊まりを始めるということになっているが、主に雪による作業の遅延によって、「広告看板の家 札幌」は、まだまだ「家」とは言えない、牛小屋みたいな状態である。今「遅延」と書いてしまったけど、本当のところ遅延とは思っていない。札幌の屋外で作業をしていると、寒さ、雪の影響、嵩張る防寒着の動きにくさによって、体の疲れ方や集中力の続き方が普段と違う。絶えず何か食べていないと頭が働かないし、体も動かない。その上天候の変化も凄まじく、「スケジュール」というものを立てること自体に無理がある。夕方、すっかり暗くなったころに作業を終え、ヘトヘトの状態で道具などを片付け、翌朝現場に来てみたら、雪が六十センチも積もっていて、ビニールシートに包んで置いておいた木材などがすっかり埋もれてしまってどこにあるかもわからないような状態になっていて、どうにか掘り返したら凍りついていたりすると、「まあしょうがねえか」と、簡単に諦めがつき、とりあえず雪かきから始め、気がつけばお昼になっている。日の入り時刻は16時半で、17時にはもう真っ暗だ。そんな日々が続いているので、何か予定が遅れているだとか、あるいは順調に進んでいるだとか、そういう考え方をしなくなる。

・今日は特に色々なことが起きた。大雪で、午前中は路上で人に助けられ、午後は別の路上で人を助けるという、二段構えの一日だった。昨日までの二週間の準備期間のあいだ滞在拠点として使っていた天神山アートスタジオをチェックアウトして荷物を運び出すために、「広告看板の家」の現場であるCAI03に停めていた自家用車を動かしてアートスタジオまで行く山道の路上、ロードヒーティングがされていない箇所があり、雪に車の後輪をとられて全く身動きができなくなった(こちらに来てから二度雪にハマっているのでこれで三度目。でもタイヤチェーンをつけてからは初めて)。手持ちのダンボールをタイヤの下に入れてみたり、雪を掻き出したりするも車は動かず、途方に暮れていると通りすがりの老夫婦が助けてくれた。最初は「腰が悪いから、助けたいのは山々なんだが」と一度は立ち去ったのだけど、僕たちがアートスタジオからスコップを借りて現場に戻ろうとしたら再び現れ、スコップを貸してくれと言って、一緒に雪を掻いてくれた。「この車はFRか」「多摩ナンバーか、東京からか!」と言いながら。四人で雪を掻いているとアートスタジオのスタッフの人も降りてきて、五人体制になり、それでも動かないのでスタッフの人がスタジオからなにか持っていきます、と言って毛布と、「ヘルパー」という、雪に埋もれた時にタイヤの下に入れてグリップを効かせるための工具を持ってきてくれて、それでようやく脱出できた。老夫婦に「なんとお礼を言ったらいいか」と言ったら、おじさんは「こっちにいると日常茶飯事だからな」と言って去っていった。

・そんなことがあったのでCAIに着いたときにはすっかりお昼になっていて内田とコンビニに昼ごはんを買いに行ったのだけど、その途中の路上でトラックが雪に足を取られて立ち往生しており、ドライバーのお兄さんが一人でスコップでタイヤの下の雪を掻き出していた。他に手伝っている人はいなかった。「大丈夫ですか?なにか手伝いましょうか」と聞いたらお兄さんは「ありがたいですが道具もないので…なんとかやってみます」というようなことを呟くように言った。寡黙な人だった。「北の男」というフレーズがしっくりくる。先ほど人に助けられたばかりだから、これを放っておくわけにはいかない、ということで、僕たちはCAIに戻ってスコップと木の板(アートスタジオの人が、「また雪にはまったときのために」と言ってくれたもの)を取り、再び北の男の元へ。とりあえず三人でスコップで雪をかき出して、板を挟んで発進させてみて、少し動いたがまだ脱出には至らず、もう少しだ!と言って再びスコップで掻き出す、という作業を何度か繰り返す。もう一枚木の板を持ってきて両後輪に挟んだ方がいいと思い、CAIに戻り、余っていた合板を切る。人手がもっとあった方がいいので、CAIのドアを開けたら端さんが「どうした?」と先に口を開けた。「いま、前の道路でトラックが雪に捕まってて、よかったら一緒に」と言い終わる前に端さんは「よし」と言って立ち上がった。ゆうやさんも一緒に三人で北の男の元へ行き、みんなでトラックを押した。何度かやっているうちに脱出成功。北のお兄さんは、「ほんと面倒かけました…なんとお礼を言ったら良いか…」と、僕が午前中に言ったセリフと同じ言葉でお礼をした。

・そんなことがあったので、お弁当を買ってCAIに戻り食べ終わった頃にはもう昼の3時になっていた。こんな感じだから、作業があまり進まなくても諦めがつくのだ…。

・昨日温床に蓋をして少しはマシになったかと思っていたが、今日初めて入ったらまだまだ匂いがある。これはなんとかしたい…。

・温床の上に作っておいた木枠に農ビを貼り、テントを完成させた。暖かい。びっくりした。完全に床暖房として機能している。炬燵か、温泉に入っているような気持ち。いくらでも居られる。一昨年の資料館前の実験のときは蓄熱材としてレンガを入れたのだけど、やらなくてよかった。落ち葉から温度が直接伝わる方が良い。とりあえず発熱に関しては大成功と言えるのでは。外気温はマイナス1度とか。テントのビニールを開けたときの外の寒さに衝撃をうける。さらにアースパイプからもうまくいった。外から吸気した空気が温床内で温まり、テント内に暖かい空気が供給されている。手を当てるとそれがよくわかる。電気を使わない床暖房と温風機能。最初はかなり嫌だった鶏糞とビニールの匂いも、少しいるだけで慣れてしまうのかあまり気にならなくなる。

・いまこの瞬間に北海道が停電したら。薪ストーブを備えた家を除けば最強の家なのではないか。内田もあまりに暖かくてびっくりしていた。この快適さを伝えるにはどうしたらいいか。実際に入ってもらうしかない、ということで、ゆうやさんと端さんにも入ってもらった。二人とも驚いていた。ゆうやさんは「これは寝れるわ!」端さんは「汗かいちゃうね」と言っていた。体験した後みんなが口々に「いくら村上が暖かくなると言っていても、それほどではないだろう、生ぬるいくらいだろうと思っていた」と白状した。この感動はいくら口で言っても数字で示しても伝わらない。今後、ここを訪ねた人にはテント内に入ってもらうのが体験としては一番良い。温かいというだけで生まれる強い感動と、その共感。

・温床の温度はテント内の室温は7度くらいだが、布団と床の間に温度計を入れてみたら35.7度まで上がった。35.7度あれば十分眠れる。というか体温と近くて居心地が完璧。

・鶏糞の発酵臭よりも、農ビの匂いの方がきつい気がする。そのうち消えるだろう。

・まだ改善点はたくさんある

1.温床の温度が持続するかという問題→もし温度が下がってきたら、温床の壁に穴を開けてふいごで酸素補給をしたら良いかもしれない。それで温度調整ができたら夢のようだ。

2.結露の問題

3.匂いの問題→とりあえず備長炭?あるいは木酢酢で対症療法を試みる?

4.内装の問題。最終的には、誰が訪ねてきても良い部屋だと思える内装にしたい。イメージとしては、中央線沿いに住んでいて本とネットが好きな文系三十代一人暮らしのワンルームみたいにしたい。

・内田と内打ち上げとして、ジンギスカンの名店「めんよう亭六条店」へ。内田は「焼肉ランキング一位」と言っていた。ここのラム肉は臭みがなく、米がなくても無限に食べられる。内田のお手伝いは今日でお終い。作業的にも精神的にも本当に助かった。

・札幌には「入りにくい飲食店」が少ない印象。もしかすると札幌の住民同士には、厳しい天候がもたらす吊り橋効果が働いているかもしれない。人間同志のチーム感があるというか。「天気の話」は誰とでも話せる話題として持ち上がりやすいけど、その最上級バージョンがこの雪かもしれない。どんな偉い人でも路上ではつるつる滑ってしまうことがもたらす連帯感。

・今日の風呂は「めんよう亭」近くのスーパー銭湯「湯香郷」。入浴料はナイト割引で1980円。高い…。でもスポンサーのみなさんが「これで体の疲れを取りなさい」と言って渡してくれたお金だと思って入れば幸せ。

・風呂に行く途中の路上で「こっちいこ」「ちんこ?」「こっちいこ!」「わはは」という賑やかな女性二人。

●24時07分、暖房(アースパイプ温風システムのことを、今後暖房と呼ぶ)をオンにしたままご飯と風呂に行き、帰ってきたときの室温7.2度、湿度91%、風除室(外気と寝室テントの間)の気温マイナス1.5度、温床内温度44.9度。しかし数値では伝わらない暖かさ…。座ったら動けなくなる。こたつみたいだ。

●今日の体重(夕食とお風呂を済ませたあとで、上下肌着つけた状態)58.95キロ

●今日の生活費

・補給糖分として六花亭のお菓子四種類を一個ずつ買うという贅沢:480円

・コンビニにて野菜ジュース、レッドブル、厚切りロースカツ丼:885円

・タバコ代:1080円

・めんよう亭六条店:8600円

・風呂代「湯香郷」:1980円

・コンビニにてホットほうじ茶:129円

・交通費チャージ代:1000円

1月23日

・割と薄手の羽毛掛け布団と、スポンサーのロゴを印刷した毛布を寝具として用意したのだけど、毛布は要らなかった。掛け布団だけですげー寝れた。

・しかし案の定、結露がひどい。床は全大丈夫なのだけど、壁がひどい。壁に触れていた枕の一部分が濡れている。そして匂いはやはり気になる。なんとかしたい。

●朝、風除室気温はマイナス4.8度、湿度88パーセント。寝室の気温は5.6度、湿度84パーセント。

・温床内の温度は昨日の夜で44.9度、今朝は44.8度だった。変わっていない。素晴らしい。僕が上で眠ったことで温床を踏み込んだことになり、それによって温度が下がっていたのが心配だったのだけど、このままキープしてほしい。

・朝、家を出ようとしたらドアノブが凍っていた。

・なんだか、やってきたことをさらっと書いてしまっているし、淡々とやってしまっているが、僕は結構すごいことをやっているのではないか?僕は何でもない感じで物事を進めてしまう癖があるかもしれない…。もっと、自分、すごいことやってるんすけど!という感じを全面に押し出したほうがいいのか?ユーチューバーみたいに、すげー!あったけー!!革命!!とか叫びながらハイテンションな動画を撮ったら視聴者数は結構稼げる気がする。

・昨日までは、とりあえず眠れるようにするために!という勢いでずっと作業していたが、ひとまず一旦眠れたところでどっと疲れが出てきた。今日何か作業をする気にはなれないかもしれない。発信が全く追いついていないので日記に注力することにする。体のコンディションと相談しながら、その時々でできる仕事をなんだかんだやってしまう。ある意味ではワーカーホリックかもしれない。

・10時に、家から徒歩5分ちょっとの「倉式珈琲店」へ。広々としてネットも使える素晴らしいカフェだ。壁際の席には電源もある。今日は電源席は埋まっていた。午前中に仕事をするオフィスとして最適。

・フレンチトーストモーニングセット(サラダと、茹で卵もついている。おなかいっぱい)とコーヒーで3時間以上粘り、昨日までの日記をまとめた。

・帰りに、美味しいと噂を聞いていた近所のたい焼き屋さんで昼食代わりになにか買おうと思ったが、結局その隣のクレープ屋に入り、イチゴカスタードミルフィーユクレープを買って家に帰る。安くて美味くて量が多い!感動した。今は無き上野公園の児童遊園地スペースにあったクレープ屋を思い出す。

・CAIのオフィスを借りて、日記まとめ作業の続き。集めた落ち葉サンプルのスキャンと、ウェブに上げるために撮影した写真データを軽くする処理も。

・昼ごろ、「都市遊戯」という活動をしている青年が訪ねてきた。ギャラリーは休みなんですと伝えたら、僕の家を見にきたというので案内する。もともと建築を勉強していたが、卒業後は札幌で色々と活動しているらしい。ひとつひとつ説明していったら、いちいち感動していた。「すげー!」「うわ、すげえ…」「いや、ちょっともう…」という感じ。「やっぱ住むっていうことが、一番狂気感じますね」と言っていた。

・たぶん夕方5時ごろ、日記のまとめを一通り終えて、ウェブサイトにアップして、ついでにページのテイストを変えてみようかとワードプレスのダッシュボードをいじっていたら、突然「Parse error: syntax error, unexpected T_FUNCTION in」というページしか表示されなくなった。ウェブサイトはもちろん、ダッシュボードに入ろうとしても上記の表示が出て、なにもできなくなってしまった。焦った。このウェブサイトには僕の10年分の日記がストックされている。原因を解明しようと上記のエラー文をGoogleにコピペして調べると見慣れないプログラミングの専門用語ばかりでますます焦った。友達に相談しようかとも思ったが、なんか悪い気がしたので粘っていたらどうやらPHPとやらのバージョンが古いことが原因の可能性があるという記事を見つけた。これだと思ってレンタルサーバーのページに行き、PHPという言葉を探して、5.3だったバージョンを7.4に上げた。これで解決かと思われたが、今度は「データベース接続確立エラー」という別のページが出て、それしか表示されなくなった。データベース接続確立エラー。真っ白いページにこの1行だけがでかでかと書かれている。状況が改善されたのか、悪化してしまったのかもわからない。今度はなんなんだと思い、その文言をGoogleで調べまくる。新しい記事や色々なログインページを開きまくった結果、Google Chromeのタブが二十個くらい並んでしまって訳がわからなくなるくらいにはテンパっていた。そしてついに「パスワードの形式をoldからnative形式に変更する必要があります」という記事を見つける。レンタルサーバーのページにログインし、それを試す。するとついにダッシュボードが表示された。おし!と、思わず一人で声を出した。しかしまだ終わらなかった。肝心のウェブサイト本文を開くと、タイトルは表示されるが本文が表示されていない。タイトルばかりで中身が空っぽの記事が並んでいるページの破壊力は凄まじいものがあった。あれだけ書いてきた日記が、まさか消えてしまったのかと。それでダッシュボードの方に行き、記事を確認すると、そこにはちゃんと本文がのこっていた。ひとまずほっとする。要するにデータはあるが、それをサイトの方にうまく表示できていないらしい。そこでまた「wordpress 本文 表示されない」などの言葉で調べまくり、「特定のプラグインの無効化によって解決する可能性がある」という記事を見つける。そして、そこで例に出されていたプラグインは、僕のwordpressでも有効化されているものだった。早速それを無効化する。すると、無事表示された。気がつけば8時になっていた。三時間かけて三つのトラブルを通りながら最初の地点に戻ってきた。無論、ページのテイストを変えるのはやめた。

・こういうプログラミングのトラブルの事例をネットに上げて、解決策をわかりやすく教えてくれる人たちは、本当に徳の高い存在だ。いったい何の見返りがあってやっているのか?自分の車が雪にはまったときに助けてくれた老夫婦や、男子三人組や、女性二人組のことを思い出す。「ここではよくあることなんで」と、彼らは言って、何でもない様子で手を貸してくれた。「データベース接続確立エラー」の際に救いになった記事には下のような文言が書かれていた。「以前、自分に知識が何もなかったころに、この表示が出てきて焦ってしまい、あれこれいじった結果、データベースを全て消してしまうという悲劇がおこりました。繰り返さないように注意してください」

泣ける…。仏だ。仏様がここにいる。人は助け合うことができる存在なのだ…。この二週で僕は路上でも、ネット上でも人に助けられた。

・銭湯が閉まりそうだったので、最寄りの「鶴の湯」に行く。三時間の戦いで僕は汗だくになっていた。鶴の湯は徒歩10分くらい、21時半まで、大人450円。古い銭湯のイメージにぴったりの、絵に描いたようなおばあちゃんが番台にいる。ものすごく優しい声で挨拶してくれるが、シャワーの水圧が弱いのがネック。

・銭湯の帰り、21時半ごろ、セイコーマートに寄り、音程が微妙に外れていて聞いていて不快な、若い女性アイドルっぽい人が歌ってるテーマソングを聴きながら、夕食というより夜食を選ぶ。しゅうまい弁当と野菜ジュースと、明日の糖分補給用としてお菓子を買う。

●23時ごろ。風除室の気温マイナス1.5度。温床内温度は42.4度。掛け布団一枚と床の間に入れた温度計は35.4度を示していた。眠る時の酸素濃度は19.5パーセント。

●今日の体重59.4キロ(同条件。なぜか増えている)

●今日の生活費

・蔵式珈琲店にてフレンチトーストモーニングとホットコーヒー:650円

・クレープ屋「Clover」にてイチゴカスタードミルフィーユクレープ:330円

・鶴の湯450円、ドライヤー代20円

・セイコーマートにてシュウマイ弁当、野菜ジュース、チーズおかきセレクト、アーモンドチョコ:1236円

1月24日

・書き直されてしまったせいで光を失った文に溢れた世界と、書き直される前の文が集められた光の墓場

●朝、7時47分寝室の気温8.6度で湿度は82パーセント、酸素濃度は17.8パーセント。温度計は寝室のフレームの上に置いていたのだけど、試しにそれを床に置いてみたら13.4度まで上がった。風除室の気温マイナス1.2度、湿度93パーセント。

・酸素濃度が昨日の就寝時よりも1.7パーセント下がっている。これがどれほどのものなのか、他に比べる手段がないからよくわからない。天神山に滞在している時は暖房をつけたまま眠っていたのでそのとき酸素濃度を測っておけばよかった。

・菌が酸素を消費するのに加えて寝室は農ビである程度密閉されているので念のため寝るときは酸素濃度計を常時オンにして、17.5パーセント以下になったらアラームが鳴るようになっている。一応工事現場などでは18%が安全域下限と言われているらしいので18パーセントにアラームを設定したら夜中にピーピー音で起こされるので17.5にしてある

・標高2500mの山は酸素濃度16パーセントに相当するという記事を見た

・今朝の我が家は17.8パーセントを示していたが体に異変を感じることもなかった。酸素濃度計が壊れていないか、試しに寝室の入り口を少し開けてみたら18.5パーセントくらいまでは回復した。

・朝起きた時に気が付いたのだが温床から漂ってくる匂いが変わっているかもしれない。少しアンモニア臭が強まった気がする。中の空気が押し出されすぎて、「嫌気性発酵」というやつが始まってしまっているのではないか?嫌気性に傾きすぎると匂いがきつくなると聞いている。中に空気を入れたいところだけど、とりあえずインターネットで買ってみた「ふいご」の到着を待つことにする。その前にやることが山積みだ。

・今日の作業目標

-買い出し

-寝室のビニールを一度取り外し、消臭のために温床の表層部分に薫炭をまく

-家の外壁ビニールと温床の枠の合板のあいだに、むしろを挟みつつ雪を入れて、保温&防臭を試みる

-アースパイプの吸気口を家の外まで伸ばす

・9時に蔵式珈琲店へ。今日も電源席は埋まっている…。

・自分の匂いが周りの人間に感づかれていないか、気にしてしまう。多分服からは鶏小屋みたいな香りが微弱に漂っているはずだ…。僕が僕自身の匂いを気にしているというよりも、周りの人間に気づかれていないかを気にしている。いったいなぜ。街が無臭だから?とにかく現状の家はまだまだ快適とは言えない。喫緊の課題は匂いだろう。もう少し抑えたい。

・10時半まで日記を書く。昨日と同じモーニングセットで、昨日とは違うホットカフェラテを頼む。

・家に帰って、買い出しに出かけようと車に乗り込み、エンジンをかけたが、かからない。ぶるんぶるんぶるん・・・という音は鳴るのだけど、突然ガガッという変な音がでてきたのでたまらずキーを離した。2,3度試したけどかからず。寒すぎてどこかおかしくなったのか…?

・「本当に、寒いといろんなことがおこりますなあ」と、仙人みたいなセリフを思わず独りごちてしまったが内心非常に焦った。こういう時、もう少し冷静でいたいのだけど、先日のウェブサイトのトラブルもそうだけど、僕は自分でも仕組みがよくわからない機械を日常的に使っていることが、こういうトラブルを前にすると痛感させられる。僕はこんなにもよくわからないものに乗っかって生活しているのかと。とても冷静ではいられない…。

・どこがおかしいのかはわからないが、とりあえずスマホで色々と調べていくうちにバッテリーが寒さで弱まっている可能性があるという記事を見つける。

・エンジンがかからない時、何度もキーを回しては逆効果だと、どのウェブページにも書かれている。初めてのトラブルだけど、キーを何度も回すのは逆効果だろうなというのは直感していたので、そうだろうなあと思ったが、考えてみれば不思議だ。といいつつ、僕は3回くらいは回してしまった。

・車の上から、CAIからホースで引っ張ってきたお湯をしばらくかけてみたが改善せず。

・「はやく買い出しに行かないと」と、つい焦ってしまい、JAFに電話をした。電話に出た女性の声に驚いてしまった。「お電話ありがとうございます」とか、余計な挨拶は一切なく、JAFです。と簡潔に、かつ極めて落ち着いた様子で、かと言ってのろのろ話すわけでもなく、割と早口で、「札幌なんですが、この番号で大丈夫ですか?」と聞いた僕に対して「大丈夫ですよ」と答え、とにかく相手を安心させようとしていることが伝わってきた。まじのプロだ。

・しかしJAFは呼べなかった。いま北海道は全域で雪の影響が大きく、大変忙しくしているため、JAF会員以外からの依頼は断っている状態なのだと、適度に申し訳なさそうに女性の声は言った。

・電話を切った後、冷静に考えたら今日車で行かなくてはいけない理由なんかないことに気が付き(買い出す予定のものは歩きでも大丈夫そうだった)、12時半に諦める。

・歩きと電車でホームセンターに行くことに。佐野さんに、車のバッテリーを繋ぐケーブルを持っているか聞いてみて、明日ジャンピングというやつを試してみる。

・平岸駅まで地下鉄で行き、駅から歩いて20分ほどのビバホームへ。雪道なので30分はかかった。

<買ったもの>

シャンプー

ドアの上の梁につける頭上注意のカバー

くん炭10リットル

洗濯洗剤

ヒモ

磁石用の透明なテープ

小さなスコップ

カッターの刃

小さな園芸用ハサミ

消臭スプレー(服)

(ダイソーで)強力な磁石とカラフルなヒートン

・隣のモスバーガーで昼食。

・家に戻った頃にはもう15時になっていた。徒歩合計40分、電車5分でビバホームへ行き、帰りに同じ道程を大きなビニール袋をぶら下げながら歩いたので、すでにへとへとだったのだが、最低限「寝室の床のビニールを一度剥がし、消臭のために温床の表層部分に薫炭をまく」だけはやりたいと気力を振り絞った。

・入り口側の温床の合板を上から25センチのところで切り、寝室に入りやすくした。

・寝室の床のビニールを剥がして巻いて脇に寄せておき、寝室のフレームごと持ち上げて上で固定し、その隙に温床の表面にくん炭10リットルを撒いた。確かに、撒いたところから匂いが薄まる感じがある。消臭効果はかなりのものだ。作業が終わったら寝室テントを下ろし、入り口の農ビの二辺に磁石を等間隔につけて、寝室のビニールがぴったりと閉じるようにした。

・布団と毛布と枕に消臭スプレーをかけて干した。

・昼に車にかけたお湯が地面で氷り、つるつる滑るようになってしまっていた。この地では、何かを溶かそうとか温めようとして屋外で水を撒いても良いことは一つもない。

・作業中、政治の話題を扱う番組をTBSラジオクラウドで聞いていた。やはりどこか遠い世界の話に聞こえてしまう。「暇だから政治をやる」というのはやはり真理かもしれない。

・8時前に片付けを終え、すこし急いで夕食と銭湯へ向かう。昨日行った「鶴の湯」は月曜休みっぽいので「末広湯」へ。その途中にある「メディスンマン」というスープカレー屋を目指して歩き「ここだ、着いた」と、入って、メニューを開いたらカレーではなくハンバーグやシチューの写真が並んでおり、不審に思って周りを見渡したら、どうやらここは「メディスンマン」ではなく、「コノヨシ」という洋食屋であることに気が付く。「メディスンマン」は隣だった。

・しかしハンバーグめちゃくちゃ美味かったので万事ヨシ。

・なんと末広湯は昨日と今日は臨時休業との張り紙。風呂は諦め、CAIにはお湯が出るシャワーがあると聞いていたので、それを借りることにする。

●今日の体重58.5キロ

●夜、暖房オフにしたままご飯を食べに行き、帰ってきた時の室温7.3度、湿度72パーセント。風除室の温度マイナス2.1度。温床内温度48.9度。酸素濃度19.4パーセント。

●くん炭を巻いたことで床暖房の効果が若干うすれた気がしていたので、先日と同じく布団一枚と床の間に温度計を入れておいた温度計は27.0度を指していた。やはりすこし下がっている。今夜は毛布が必要そうだ。

●22時半ごろに布団に入り、携帯をみたり細々と考え事をして、おそらく0時過ぎに就寝。ちらちらと酸素濃度計を見ていたのだけど、ゆっくりじわじわと0.1%ずつ下がっていた。

●今日の生活費(工事費含む)

・蔵式珈琲店にてフレンチトーストモーニングとホットカフェラテ:650円

・ビバホーム豊平にて買い物:5604円

・モスバーガーにて「とびきりとろったまスキヤキ仕立てとびきりハンバーグサンド」ポテトS紅茶セット:1000円

・ダイソー豊平にてヒートン二組と五個入り磁石八個:1100円

・イオン豊平にてタバコ4個まとめ買い:2160円

・洋食コノヨシにてシンプルハンバーグライスセットとハイネケン:1991円

・ローソンにて靴下一組:407円

<今後買いたいもの>

外気までアースパイプ吸気口を伸ばすための延長パイプ

風除室に敷くカーペット

タニタの同じ温度計3つ

1月25日

・去年滞在した京都の町家では、屋外と屋内の境界はあいまいで、どこからが外なのかわからないくらいだったが、札幌は非常に明確だ。外が寒いからだ。屋内から外に出るとき、戦場にでていく感じがある。みんな早足だし。

●起床時室温12.9度、湿度68パーセント、酸素濃度18.2パーセント、風除室温マイナス0.6度、湿度91パーセント、温床内温度50.6度。

・横になって布団を被った直後は、ちょっと暖かさが足りないかもと不安になったが、寝てみたらぐっすりだった。7時半まで一度も起きなかった。

・アラスカとかシベリアまで冒険に行かなくても、こうやって住処を自分で作ることで、札幌という市街地の真ん中でも冒険をしているような気分になれる。

・7時半には起きていたのだけど昨日と比べて、特に匂いが改善され快適だったのでそのままごろごろしてしまい10時をまわったころに寝室を出て、オフィス「蔵式珈琲店」へ。自分の匂いも昨日みたいに気にならない。

・はじめ電源席には女性が一人座っていたが僕が注文を終えてすぐに席を立ったので、片付けに来た店員にここに移ってもいいですかと聞いたのだけどすぐに、今コロナだから席を移動したら除菌処理をする席を一つ増やしてしまうなということに気が付いてやっぱりやめておこうかと思ったのだけど店員さんは優しい笑顔でいまご用意いたしますのでと言って片付け始めた。

・向いの老夫婦とおじさんの三人組グループ、夫の方が、すごい勢いで話し続けている。背中は痛いし首は痛いし、という言葉が聞こえる。その表情は見ていて辛い。一人で話すことに没入してしまって、そのことに酔ってしまっていて、まわりの人が聞いているのかどうかとか、多分全然気にしていない。他の二人はひたすら聞いて頷いている。奥さんの方が特に何度も深く頷いている。この辛さはなんだろうか。

・モーニングセットの中で一番高額な、ベーコンと目玉焼きとチーズのトーストモーニングを食べつつ、12時40分に日記を書き終わる。気がつけば入店から二時間半経っている…。しかし言葉選びとか文それ自体のことは何も考えず蛇口の水を捻るように書くのは今回のプロジェクトの日記が最後のつもりで書くぞ。

・帰りにたい焼き二つ買う。

・CAIにて、佐野さんが持ってきてくれたケーブルで佐野さんの車のバッテリーと僕の車のバッテリーを端さんが繋げ、ジャンピングスタートで僕の車のエンジンをかけてくれた。チームワーク。端さんは僕の車のキーを回してエンジンがかからない音を聞いて「この音は完全にバッテリー(が原因)」と断言した。そしてその通り問題はバッテリーの電圧低下だった。

・毎日、気がつけば3時。

・無事にエンジンがかかった頃にはもう昼の3時だった。これから何ができるか。

・またエンジンがかからなくなったら困るので、思い切って車のバッテリーを交換することにした。モンキーレンチと軍手をポケットに入れて、車で10分ほどのところにあるオートバックスで40B19Lのバッテリー(4000円くらい)を買い、オートバックスの駐車場でYoutubeを見ながら自分でバッテリーを交換。10分くらいで終わった。古いバッテリーはオートバックスに引き取ってもらう。

・新しいバッテリーを得た我が車、キーを回した時の音が全然違う。やはり古いバッテリーはかなり弱っていたようだ。今回のことでひとつ、車の仕組みを覚えた。

・家に戻り、匂い対策+保温のための工事。まずは雪かきをして家の足元を一部露出させる。思ったよりもずっと深く雪が積もっていた。最初はふわふわの雪を掻いていたのが、深くなるごとにシャーベット状になり、底の部分は凍っている。「かき氷」に適した深さはだいたい表面から三十センチくらいか。

・家の、斜めにかかっている農ビの外壁の、寝室側の半分を一部剥がす。最初は深さ60センチで作った温床だったのだが、僕が上で眠ることで徐々に落ち葉が圧縮され、沈み込んだ25センチ分の温床の枠を丸ノコで切断。(つまり温床の枠の高さを、現状の温床の高さと揃える作業)

・「切断」という言葉は魅力的だ。プロジェクトとは関係ないが、日本語の「決断」も、英語の「decide」も、「断つ」という意味を含んでいるという。日本語はその字の通り「決めて断つ」、英語の「decide」の「cide」は、ハサミを意味するscissor(シザー)からきているという。違う言語なのに、「決める」ということには「断つ」という行為が含まれるという共通の認識が言葉に埋め込まれている。木材を切るという作業も「決める」という行為なしには不可能。先ほど使った「思い切って」という副詞にも「切る」という言葉が埋まっている。

・温床の壁を切った時点で東京からCAIにきた客を佐野さんに紹介される。インターネットポーカーを仕事にしているプロギャンブラーの家に泊まらせてもらっているらしい。計算すればトータルでは勝てるので、稼ぎにはなる世界らしいが、一日中画面の前に貼り付いていなければいけないという。「孤独なサラリーマン」

・当初は、農ビの外壁と温床の間に雪とむしろを埋め込むつもりだったのだが、思い切って外壁を途中で切って、ビニペットを新たに取り付け、通気口をつくった。つまり風除室の空気を外気と繋げてしまうことで、保温と引き換えに換気が行われるようにした。匂い対策として。とはいえ、風除室はもともと外気温とほぼ変わらない室温だったので問題なし。

・次回、再び温床を使った寝室をつくるとしたら、完全に外気に晒された温床部分と、外気からは完全に遮断された寝室に分けたい。その方が屋内に匂いが入ってこない。

・工事を終えたころには18時を過ぎていた。しかしまだ温床の枠二辺分の工事が残っている。明日にまわす。

・往々にして、冬の札幌では全ての作業を一度に進めることはできない。雪があるからだ。まずは一箇所、雪を掻いて作業スペースを作り、工事を終わらせてから、次の作業スペースの雪掻きをして、最初に工事を終わらせた場所に排雪するという形で、雪を移動させながら工事を進める。

・洗濯をするために近所のコインランドリーへ。洗濯乾燥で700円。

・洗濯の隙に夕食。「中華料理養源郷」という店へ、初めて。店員さんが「うん、うん」と友達みたいな相槌で注文を受けてくれる。メニューの写真を撮っていたら頼んだ紹興酒が運ばれてきたので、「ありがとうございます」といってメニューを畳んだら、「いいよいいよ、ゆっくり撮って」と言ってくれる。と書いていたら注文した「海鮮あんかけ飯」がもう来た。料理来るのが速い。めちゃくちゃ速い。

・そして美味い。なぜ札幌のご飯は全て美味いのか。

・洗濯物を回収し、「鶴の湯」へ。前回座ったところよりは、いくぶんかシャワーの水圧が強い席だった。

・僕は銭湯にあまり長く入れない、入れるときもあるがすくない。早く出て頭の中のことを書き留めないと忘れてしまうという強迫観念

・ここの脱衣所のドライヤーは20円で動くのだけど、わかりにくいところにあり、しかも硬貨を入れる機械の「◯◯円」という表示が年月によって読めなくなっており、そもそも動くのかどうか最初はわからなかった。前回はロッカーから財布ごと持っていき、ドライヤーを手に取り、スイッチを入れたまま十円玉を一枚ずつ入れ、二枚目で無事ドライヤーが発動したのでほっとした。今回は「二十円」ということを知っていたので、十円玉を二枚だけ握ってドライヤーへ向かった。今日も無事に発動してくれた。見るからに古い機械なので、次は動かないんじゃないかという緊張感がある。次回もドライヤーが使えると良いのだが。

・ドライヤーでちゃんと乾かさないと帰り道で髪が凍ってしまう。他の客はみなドライヤーをせずに銭湯をでていくが、髪の毛は大丈夫なのだろうか。

・今回の「広告看板の家 札幌」ではかなり面白いことが起こっているのだが僕の主観的な日記だけでは記録としては一面的すぎるので、もう一人、この広告看板の家の成長を、傍観者として眺めがら日記を書くという役割の人がいてもいいな。仕事として頼んだら面白いかもしれない。札幌に住んでいる人がいい。

・銭湯からの帰り、全身から湯気を出しながら歩く。実際には全然湯気など出ていないのだが。

・昆虫食だけを取り扱っている自販機を見つける。びっくりした。「シルクワームPUPA」は880円、イナゴやコオロギも同額。「タランチュラ」は2700円。隣には「タランチュラ一匹丸ごと食べられる人すごい!」と書かれている。タランチュラ試してみたかったが、高いし昆虫食初心者なのでワームを購入。高タンパク低脂質らしい。

・東京とくらべて路上に自販機が少ない。雪に埋もれるからか。

・佐野さんから、ビニールの匂い対策に「重曹」はどうかという提案のラインがくる。自宅で撮られたと思われる重曹の写真も添えられている。「明日持っていきましょうか」と言ってくれたのだが、明日それに取り掛かることはなさそうなのでとりあえず断る。

・アーティストのはまだみりちゃんからメーリスで「今からズームひらいて雑談やってます」と、リンクが送られてきた。「作業中のラジオ代わりにどうぞ」と書かれていて、ああ、同じアーティストという種族の人間なのだなあと思う。僕は常に「作業中のラジオ代わり」のものを探している。他の仕事をしている人たちにもこの、「作業中のラジオ代わり」という文言のリアリティはあるのか。

・日記を夜書くきにはなれない本を読む気にはなる不思議

●今日の体重60.2キロ

●今日の生活費

・蔵式珈琲店にてベーコンエッグトーストモーニングとコーヒー:790円

・たいやき工房札幌店にて粒あん1とクリーム1:440円

・オートバックスにて車用バッテリー:4398円

コインランドリー洗濯乾燥:700円。

・養源郷にてかめだし紹興酒小と海鮮あんかけ飯::1430円

・自販機でシルクワーム:880円

・自販機でほうじ茶:110円

●22時、外気温マイナス4.7度、湿度81パーセント、風除湿温マイナス3.4度、湿度89パーセント、温床内温度46.4度

●温床の温度が下がっている点とくん炭を撒いたことによる床暖房能力の低下を測るため、寝室の床の上においた温度計に毛布と布団をかけて23時に測った温度33.1度。ちなみに湿度は53パーセント。布団とお床との間は湿度が低い傾向がある。

・日中も、人間がいなければ寝室の湿度は下がる傾向があるので、夜に結露で濡れた布団や毛布も乾く。この湿度が下がる現象を利用して、夜間の除湿もできるかもしれない。珪藻土とか、炭とか?名古屋では一日中寝室の湿度が高かったので、床に塗った珪藻土は湿気をいっぱいいっぱいまで吸ったままになってしまい、除湿としては効果がなかったが、ここでは一度湿度が下がるので何らかの除湿剤が使えるかもしれない。

1月26日

●朝8時10分起床。寝室温度9.0度、湿度100パーセント、酸素濃度18.9パーセント、風除室温度マイナス0.7度、湿度93パーセント、温床内温度44.7度、外気温マイナス3度、湿度75パーセント、曇り。

・匂いは初期に比べてかなり改善されたが、結露の問題は依然としてある。今日は昨日の続きをやって風除室の換気システムを完成させ、それが終わってから結露対策に本腰を入れる。

・22日以降、電源を繋いだままずーっとGoProを起動させていて、30分に一度シャッターを切るタイムラプスで温床内温度と室内の様子を撮影し続けている。その電源コードを、これまではCAIのドアの取り出し口の隙間から伸ばしていたのだけど、ギャラリーの出入りの邪魔になりそうなので、少し前にこの建物の住人から教えてもらった、一階の柱の脇に繋ぎなおし、9時に「えすけえ」という喫茶店へ。

・「えすけえ」は全席喫煙可能の古い喫茶店。佐野さんから、良いという噂は聞いていたが行くのは初めて。徒歩15分くらい。

・白いマスクのおばちゃんが入ってきて僕のそばを通り過ぎ、カウンターに座る。マスターのおばちゃんが「あら、ぜんぜんわかんなかった。久しぶりね」と言った。「ごぶさたね」「メガネかけてないからだわ」「メガネ曇っちゃったから」

・弁当みたいなものが大量に入った袋を持ったおじさんが入ってくる。「今日も素晴らしい道だったわ。やっぱりね、片側交互通行になる」

・最初に入ってきたマスクのおばちゃん「なんだかんだ今年雪多いよね」男の声「多い多い」「多いよね」

・客も常に他に二組というくらいの混み具合で落ち着く。なぜかわからんが日記を書く集中力が、蔵式珈琲店より持続する。

・11時、トイレに行ったらマスターが男性に変わっていた。「悪いけどさ長時間のパソコン禁止だから」と言われ、店を出る。ここはとても良いが、長時間の作業には使えなさそうだ。次はランチを食べに来たい。

・寒いとメガデスとかマリリン・マンソンとか重たい音が聞きたくなるな。北国でメタルが盛んな理由が何となくわかる。

・CAIについてたばこを吸っていたら、ちょうどヤマト運輸が来て、他のでいた「ふいご」が届く。今日の午前中に指定していたのをすっかり忘れていた。えすけえのマスターが追い出してくれてよかった。ドイツ製。高かったけど思ったより大きく、風力も申し分ない。温床に挿してみるのが楽しみ。

・なんかぼーっとする日だ。

・13時くらいまで昼寝。佐野さんたちがギャラリーを開けにCAIにくる。明日の午後にティックトックの取材をお願いしますと言われる。ティックトックに載るのは初めてだ…。

・昨日、換気口にしたところにむしろを敷き、その上に雪をかぶせ、それから正面向かって右側の三角形の壁の前の雪かきをして作業スペースを作る。昨日と同じ作業をこの壁にも施す。温床の枠を切り、外壁の下部を切り、ビニペットをつけた角材を打ち付け、その上から外壁を被せて換気口を設ける。

・路上から、紙に包んだ花を抱えた女性に話しかけられ、これは次の展覧会の準備ですかと聞かれる。「いや、これが作品なんです」と答える。女性が上がってきて、説明をする。布団の下に手を入れてもらったら「あたたかい」と言っていた。匂いは全く気にしていない様子だった。僕がビニールの匂いが嫌なんですと言ったら、「たしかに色々な匂いがまざってますね」と。女性は昔スノーキャンプの指導をしていたことがあるらしい。「雪は暖かいですよね」と言っていた。

・「寒さは慣れましたか?」と聞かれたので、「慣れてはいないですが、暗くなるのが早かったり、服が動きにくかったりするから一日でできる作業量に限界があり、その生活のリズムみたいなものは掴めてきました」と答える。資材が凍ったり、とにかく寒いと色々なことが起こるから、何かと諦めがつきますね、と。女性は同意していた。

・もう一人、男性の客。彼は僕の床暖房に触れるなり、すぐにそこに座り込んで「あったけえ…こたつみたい」と言っていた。

・佐野さんが、杉か何かわからないが、どこかで買ってきた木のフレークが入った小さな袋を持ってきてくれた。消臭効果があるんじゃないかと。あと牡蠣の缶詰も「夜のおつまみに」と。嬉しい。

・暗くなった頃、端さんがコーヒーを持ってきてくれる。「熱いから…」

・今日の作業は外壁の一辺に換気口を作り、寝室のテントに手持ちの「むしろ」を全てかけたところで終了。むしろをかけることで保温とプライバシーの確保(現状、壁が農ビなので部屋の中が外から、特にこの建物の2階の廊下から透けて見える)と、あわよくば結露対策にもなれば。むしろは寝室を全て覆うには足りず。半分くらい。明日追加で購入したい。

・18時過ぎ、札幌駅の方へ出かける。街中でなんかぶらぶらしたいという欲求に従う。

・方々で話題になり気になっていたので、三省堂書店で「文藝」を探す。発売から日が経っていたが、まだ2冊あった。「母の娘」特集。買う。

・ふと「コロナになる」という言い方が気になる。会話の中で使うぶんには全く違和感がないが、こうして書き出してみるとやっぱり変だ。我々は「コロナになった」わけではない。「コロナに成った」。なぜこれで意味が通じるのか?コロナ禍によって生活習慣がかわり、この「体」も少なからず変身したからではないか?

・札幌シネマフロンティアで「マトリックスレザレクションズ」を観ようと思っていたが20時10分からで、まだ1時間半くらいあったのでパブに行くことに。歩いて15分くらいのところにあるブリティッシュパブへ。入るなり店員が僕をみて、自分の胸のあたりを指差し、「めっちゃ…めっちゃかわいい」と言った。僕が着ているトレーナーの、「広告看板の家」スポンサーである「電気羊 Electric Sheep Design」のロゴのことを言っている。「え、ああ、かわいいでしょう?」と反射的に返答する。

・エーデルピルスの生とミックスフライを注文し、くらしのアナキズムを読みつつ。両隣ともにぎやかな席だったが本が面白い会話は耳に入ってこなかった。

・マトリックス、男女の話になりすぎててちょっと冷めちゃうところとか、最近のMCUみたいに文脈への依存が過ぎて重たい感じはあったけど楽しかった。手をにぎった瞬間爆発したシーンはウケた。監督が狙っているのか狙っていないのかわからない、妙に笑けるシーンが散りばめられていた。

・映画の往路に落ちてた小さな松の梢が復路でもまだ落ちていて、でもちょっと角度が変わっている、そんなことが発見できる白い雪の道

・CAIでシャワーを借り、歯を磨く。

・寝室に入ると、むしろをかけたところは結露が起きていない。まさかこれだけで防げるのか?

・夜、結構な雪が降り始める。風がないので、空から大量の白い綿が均質に、ゆっくりと落ちてくるさまが外灯に照らされている。おつだね。

・まだシルクワームを食べていない。パッとつまんで食べる気になれない。ちゃんと皿に盛り付けて食べないといけないと思いこんでいる節がある。なぜだ。高価だから?

●1時40分。夜更かししてしまった。外気温マイナス1.1度、湿度100、風除室0.8度、湿度100、温床内温度36.3度、寝室の温度5.5度、

湿度70、酸素濃度19.9。温床の温度が下がってきた…。早くも床暖房ピンチか。

・外で謎の声が突然響く。単発で聞くと人の叫び声にしか聞こえない。かろうじて人間の声ではないとわかるのは、繰り返し同じように鳴いてて、それが動物っぽいから。きつねか?と思って調べてみたら、案の定きつねだった。怖すぎる。

●体重はかりわすれた

・寝る前に、佐野さんが持ってきてくれた木のフレークが入った袋を床にばらまいた。袋の中には口から見えていた500円玉くらいのサイズの木片だけが詰まっているんだろうと思ってまいたのだが、袋の底の方には切りかすみたいな木の粉もあり、それもばら撒いてしまった。箒は外のかまくらの中にあるので、また靴を履いて外に出る気にもならず、その木屑の山は寝室の壁際まで手で寄せてそのまま寝た。

●今日の生活費

・「えすけえ」モーニングセット五百円

・自販機でデカビタC130円

・佐野さんが弁太で買ってきてくれた昼の弁当380円

・三省堂書店にて「文藝」:1518円

・BRTISH PUB DARWINにてエーデルピルス570ml、ミックスフライ:1800円

・札幌シネマフロンティア「マトリックス レザレクションズ」1400円

・明日買いたいもの

ゴミ袋

ぷちぷち

外にパイプを出すための延長パイプ

カーペット

むしろ3枚

1月27日

・夜、寝室のビニールを開けて、ふかふかの帽子をかぶり、正座しながら、急に聴きたくなった銀杏BOYZをスピーカーでじっくりと流しながら思ったのは、「足元」と「頭」さえ暖かければ、人はかなり耐えられるということだ。風除室は2度しかなかったが、この寝室の温度計は8.5度、床はもっと、体温よりも高い。

・その日は休日で、畳の部屋で、友達が「会社では近くに停めた車の座席を倒してうつ伏せで寝て休憩してる」とごろごろしながら楽しそうに話していて、それを聞いた僕も無性に嬉しくなるという夢を見た。

・晴れ間も見えるが曇り

●8:12起床、寝室9.5度、湿度87パーセント、酸素濃度18.1パーセント、風除室1.7度、湿度100、温床内温度37.2度。外気温マイナス1.1度(8:55)

・温床温度下がってきてるが、全然暖かいし快適に眠れる温度ではある。何度まで下がったら眠るのが厳しくなるか?もちろんこの計測ポイントは1地点に過ぎないという前提を忘れてはいけない。

・「むしろをかけたら結露しない」は気のせいだった。水溜りがしっかりできている。

・9時45分オフィス蔵式珈琲へ。

・その後ホーマック西岡に行き、

ゴミ袋

お菓子

ぷちぷちシート

パンチカーペット

ふいごに接続して温床内に空気を送るための金属のパイプ

むしろ2枚

ぷちぷちを貼るための農ビ補修用テープ

小さいドライバー

ビール1ケース

を買う。

・帰りに「弁太」に寄り、玄米ご飯鯖味噌煮弁当を買う

・CAIでご飯を食べた後、寝室の外側に、昨日足りなかった分の「むしろ」をかける

・買ってきたパイプを斜めにカットし、寝室の床の農ビに切れ込みを入れてパイプを刺しハンマーで叩いて中まで食い込ませ、ふいごの口に接続し、しゅぽしゅぽと温床内に空気を入れてみる。合計六箇所に入れてみた。

・空気を入れる前は34.8度だった温床内温度が、なんと33.7度に下がってしまった。

・冷たい空気を入れたせいで下がった可能性。だとしたら、空気が入ったことで菌が活性化してこれから発熱するかもしれない。要経過観察。

・最初から温床内に新鮮な空気が入るような枠を作れば良い。3月に東京でやりたいと思っている、発酵熱暖房テントに泊まるワークショップでもう一度温床のテントを作るチャンスがある。やりがいがありそうだ。

・昼3時ごろ、シュポシュポと空気を入れていたら建築家の丸田さんが訪ねてきた。丸田さんは短時間の滞在でいくつも提案をしてくれた

1タイベックみたいな透湿シートで寝室を作れば結露しないかもしれない。その外側にもう一層、保温のための空気層をつくれば保温もできる。

2(寝室の保温のためにぷちぷちを貼ると言った僕に対し)ビニールの外側に貼ればいいのでは。「外断熱」として。でも中でも外でも、貼りやすい方で良い。

3家のツーバイフォーのフレームの内側の面に、寝室の壁となる農ビを貼れば良かったのでは。そうすればツーバイフォーの木材の厚み分だけ空気層ができるので断熱効果がありそう

4(パンチカーペットを、風除室の床に敷くと言った僕に対し)余ったスタイロを敷き詰めてから、その上にパンチカーペットを敷くのがいいのではないか。風除室の保温性能が上がり、より快適になる。

・丸田さんの数々の提案、建築家とはこういう仕事なのかと感動。なぜか「鉄人」という言葉が浮かぶ。鉄人丸田。

・ティックトックでアートライター的な活動をしている人も訪ねてくる。他にも男性のお客さん。気がつけば4時10に。

・丸田さんから、野菜ジュース3種6本、アートライターの人から蒸したさつまいも少々を差し入れしてもらう

・寝室の内側にぷちぷちを貼る作業。保温性能が上がったことが、すぐに実感できる。それほど外気が冷たい。見た目的にも快適な部屋になってきた。目標としている「都心のワンルームマンション」が近づいてきた。

・「今日はあったかいなあ」と思う気温は3度

・毎日毎日、気がつけば日が暮れている。そして次の瞬間には夜、ご飯を食べ終わっている。

・「鶴の湯」の近くにあるスープカレー屋「ビヨンドエイジ」へ。薬膳スープカレー。7時50分ごろに到着、テーブルに通されてから「8時までなんですけど」と言われ、「あ、そうですか…」「でも、少しオーバーするくらいなら…」と、笑ってくれた。すこし片言の日本語で。

・チキンベジカレー。ベジうまい…予想に反してチキンたっぷりだった

・しばらく音楽聴きながら散歩。雪でぼこぼこの道を音楽に乗りながら歩くということができるようになってきた。ぼこぼこは慣れてきたが、寒さに慣れないのがネックだった。夜、外は、長時間歩くには気温が低すぎる。しかし今日、30分くらいぷらぷらと歩き回れた。なぜならカレーを食べたからだ。冬の札幌において、散歩がしたくなったら夕食にカレーを食べればいいのだ。

・「落ち葉の温度下がっちゃう~~このままでは寝れなくなる~~がんばれ~~」というこの気持ち、なにかに似ている。生き物を飼っているようだ。いや実際に飼っているようなものか。それも「ペット」とかではなく、自分の命と直結した生き物たちだ。「蟲師」か。昔読んだ「蟲師」に似ているかもしれない。

・めちゃくちゃいいことを思いついた。棒をつっこんで温床の中をかきまわす道具をつくってしまえばいいのでは?

・ブリーチャーズ&チャーリーXCXの「ローラーコースター」が名曲だった

・観念して鶴の湯へ入る。8時50分ごろ。「9時半までですがいいですか?」とおばちゃん。「大丈夫です!」と答える。

・僕が最後の客だった。今日もドライヤーは起動してくれた。

・少し前から、「就職のイメージ」という、就職したら職場で経験したい事の箇条書きリストを作っているのだけど、川上未映子の小説を読めば就職したときの人間関係の想像ができることを知る

●外の温度計、表示がバグってる。落として詰まった雪が凍ったせいか。23:59、風除室マイナス3.2度、湿度91パーセント、温床内温度33.1度、寝室入ったばかりの室温2.0度、低い。外が寒いのもあるけど、温床の温度低下が原因か。しかし布団の中はまだまだ暖かい。場所によっては熱いくらい。湿度79、酸素濃度20.8パーセント。今日、外気も酸素濃度が高い。気圧の影響?

●今日の体重60.0キロ

●生活費

・蔵式珈琲店フレンチトーストモーニング、カフェラテ:650円

・ホーマック西岡店にて:5979円

・同じくホーマック西岡店にて:1926円

・自販機でレッドブル210円

・弁太、玄米鯖味噌煮弁当:490円

・鶴の湯風呂とドライヤー:470円

・セブンイレブン、タバコとホット十六茶:1749円

●鶴の湯で「一週間のスケジュールを打ち立て、そこから以下にずれていくかを検証するプロジェクト」を思いついたので、明日から一週間の予定を立ててみることにする。

・28日:温床の中をかき回す装置を考え、作り、試す。また温床の壁に穴を開け、空気を入れてみる。夜、丸田さんとお風呂に行く。

・29日:風除室の床を作る。午後に見学希望者あり。夜、ご飯会あり。

・30日:休日にする。文学館の展示見たい。「くらしのアナキズム」と、先日買った「文藝」読みたい。

・31日:風除室の機材を片付け、おしゃれに整える。具体的には、寝室の入り口に布を貼る、棚や服をかけるフックなどつける

・2月1日:風除室作業の続き。

・2日:家の入り口までの動線の整備。現状、資材や道具があちこちに積まれているので整理したい。

・3日:雪の庭づくり。

これでやってみる。詰め込みすぎな気もするが、作業的には決して不可能な量ではないはず。

1月29日

・大きな合宿施設みたいなところにいて、誰かもわからないし性別もよくわからないが付き合いが長いことになっている友人だか恋人だかの人と一緒に、レールのようなものがついた機械をいじっていた。その人の体調が突然、深刻なまでに悪くなり、僕は肩を貸し、近くにいた人に「保健室はどこですか」と聞いて保健室に入った。そこは野戦病院みたいに、床にたくさんの病人が並んでいて、僕は「ここにいたらこの人は死んでしまう」と思った。夜が明けたら車で街まで降りて病院に行こう、大丈夫だから、とその人を励ました。しかし具合は悪化する。いつの間にかその人はアーノルドシュワルツェネッガーになっており、英語で辛そうに呻いている。その体にはエイリアン(「ヴェノム」のような声を出していた)が入り込んでいて、体調の悪化はそれが原因だった。やがてシュワちゃんの腕の一部が顔みたいになり、エイリアンが「お前らが選んだんじゃないか。なにをいまさら」的なことを言った。それを聞いていた人が、そのエイリアンに「彼は役者なんだ」と言った。英語で。エイリアンは「アクタァ?」と言って困惑した表情になった。こいつは、アーノルドシュワルツェネッガーが役者として演技したに過ぎないということを知らずに、「本当にみんなに選ばれた」のだと思って取り憑いてしまったんだと思ったところで目が覚める。

・のんびり起きた。10時?

●9:52寝室8.7度、湿度92、酸素濃度18.8、温床内温度34.2度、9:59風除室7.1度、湿度93。

・結露だいぶ良くなった。特にむしろをかけた、壁3面は素晴らしい!むしろをかけていないドアの面はびしょびしょではあるが、ぷちぷちで表面積が増えたおかげか、結露した水が床に落ちて水たまりができるほどではない。

・太陽光すごい……まるで春を告げるような陽がドア側の壁から入ってきて、風除室が暖かい。家の中で太陽を感じたのは初めて。10時、9.2度。圧倒的なエネルギー…圧倒的という言葉がふさわしい…。生命のエネルギーだ。10時15分、9.8度。10時30分11.7度…。素晴らしい。まるで全てを肯定するかのような光…。プラスの力…。温床の温度も上がっている。昨日の成果なのか太陽のおかげなのかわからないが。

・10時半過ぎに蔵式珈琲店へ。めちゃくちゃ晴れている。雪面に反射した日差しが眩しい。家の前、路上で消防庁の制服三人組とすれ違う。僕の看板の家をそろってまじまじと見ながら通り過ぎて行った。

・電源のある席に最初から座れた。とりまパソコンをマックスにする。

・電源席 ただそれだけで みなぎるパワー

・11時近かったので、いつものモーニングセットではなくランチセットを頼んでみる。エビとトマトのクリームドリアランチ。「11時を回ってから、製作を始めるので少々お時間をいただきますが…」と言われ「大丈夫ですお願いします」と答える。男性の店員が発した「製作を始める」という言葉になんだか新しい可能性を感じる。

・最近、喫煙室に入るときとか、狭い店に入るとき、ゴルゴ13みたいに、入口の近くとか、でなくても店内が見渡せる場所を選んで座っていることに気がつく。なにかに襲われたときにいち早く察知でき、逃げられるようにしている。

・前のテーブルで、「入院したら一日~円が…」と、女性が男女二人組に保険の説明をしている。マスクで声がもごもごしている。語尾をあげながら話す。この語尾をあげるという動作、言語学的にはへり下るというニュアンスを持つらしい。疑問文で語尾を上げるのはそこからきているという。「ゆる言語学ラジオ」知識。

・日記を書き終えた頃には13時を過ぎていた…。この、何かに追われている感覚。

・帰りがけにクレープ屋でアーモンドチョコ生クリームクレープを買って家へ持ち帰る。

・家に上がる途中の共用部の階段の路面が過去最悪な状態になっている。この階段は、もともと屋上で溶けた雪の雫がちょうどこの階段のところに垂れてきていて、その水が凍りついてしまって滑って危ない場所なのだが、今日は最悪だった。踏面が全て氷で覆われている段もあった。陽が出たのでいつもより多くの雪が溶けているのだろう。これではそのうち死人が出かねない。ということでハンマーと金属のパイプで氷を破砕する作業。しかしその最中にも上からぽたぽたと水が落ちてくる。キリがない。上から落ちてくる水の方をなんとかした方が良いのではないかという考えが頭をよぎり、ちょうど端さんがでてきたので「階段の上にシートで屋根かけたら良いと思うんですけど勝手にやっていいですかね」と聞くと、「大家さんも喜ぶと思います」と。端さんも一緒に、CAIの倉庫にあった黒いシートを階段の手すりや、僕の家があるテラスの手すりに、Fクランプで固定し、仮の屋根を作った。うまくいった。階段まで落ちていた雫は途中で黒いシートに阻まれ、ポンという音を立て、手すりと手すりの間のスペースに落ちるようになった。

・終わった頃には14時半。今日もまた気がつけば15時。

・雪が積もってしまって道路から僕の家の看板の最下段が見えなくなってしまっていたので、雪を落とした

・風除室を人間の家らしくするところから始めよう、温床の発熱対策はそれからだと、家の中の工具をまとめて、内田が空き時間を見つけて作っていた外のかまくらにしまい、丸田さんに言われたように、風除室の床半分に余ったスタイロフォームを敷き詰め、その上からパンチカーペットを敷く。

・ゆうやさんと久々に会う。誕生日だったらしい。

・床の作業をしていたら一人、客が訪れる。フィルムカメラを携えた女性。「なんでこういうことをやろうと思ったんですか?アートとは少し離れたものに…」と呟いていた。なぜそう感じるのか。アートに対するイメージについて聞いてみたかった。

・スタイロフォームを使い切り、残りの部分にはそのままパンチカーペットを敷き、また気がつけば暗くなっている。17時15分。

・先日買った「ふいご」、排気口を塞ぐと、手元の取手の合成皮革と木の間から空気が漏れてしまうことを思いがけず知る。これでは温床の中にパイプを突っ込んだとしても空気を押し出せない。昨日試した注入方では空気が入っていなかった可能性。隙間を塞ぐ必要がある。そのためには皮革と木の接着剤が必要。急遽買い出しへ。

・買い出しの後、丸田さんの事務所前まで行き、丸田さん行きつけのスーパー銭湯「花ゆづき」へ。温泉ではないが浴室がめちゃくちゃ広い。種類も豊富。大きな座敷の食堂もある。お風呂代と食事代を丸田さんが奢ってくれる。次に温床のテントを作るとしたら、というアイデアを色々と出し合うなど。東京のワークショップでも協力してもらいたい。

・ビッグコミックオリジナルで連載中の「前科者」という漫画に僕の絵本がちらっと出ていると、飯田くんから連絡。主人公が手に持って話しており、がっつりと表紙が描かれていた。早速コンビニで買う。

・仮屋根としてつけた黒いシートの表面が凍りついていて、触るとぱきぱきと気持ち良い音が鳴る。

・冬の札幌で飲むビールはうまいが、体を冷やすな

●22:18外気温マイナス4.4度、湿度100、風除室マイナス2.9度、湿度93、温床内温度32.5度、寝室4.6度(僕の体温で上昇する前の温度)、湿度74、酸素濃度20.8。

●体重60.0キロ

●生活費

・蔵式珈琲店にてエビとトマトのドリアランチとグレープジュース:1050円

・Cloverにて:アーモンドチョコ生クリーム:330円

・DCMホーマック桑園店にてボンドG17:327円

・湯処花ゆづきにて:瓶牛乳150円

・セブンイレブン札幌南6条西18丁目店にてほっと十六茶とビッグコミックオリジナル:549円

●スケジュールとのずれ

予定では

「温床の中をかき回す装置を考え、作り、試す。また温床の壁に穴を開け、空気を入れてみる。夜、丸田さんとお風呂に行く。」

であったが実際に行った作業は

「共用部の階段の凍結防止のためにシートで屋根をかける。風除室を片付け、床にスタイロフォームとパンチカーペットを敷く。ふいごの問題に気がつき、ボンドを買い出しに行く。夜、丸田さんとお風呂に行き、温床テントの設計について話す」

であった。温床の作業は何も進んでいないし、「かき回す装置」をどうしたら作れるのかも思いつかない。丸田さんと話し合えたのはよかった。今日やった最大の仕事は共用部の階段の屋根だ。匿名の他人のためにやる仕事、つまり公共的な仕事を久々にやった気がする。不思議とやる気がみなぎった。雪かきも同じ性質の仕事だろう。雪かきという公をつくる作業、ここでは多くの人がやっている。

1月29日

・会田誠さんのツイッター発言がバズって1兆リツイートを突破し、こんなにされることはありません、今日はもう休みにしますとつぶやいている画面を見る夢。

●9時起床、寝室5.6度、湿度91、酸素濃度19.2、風除室マイナス1.9度、温床内温度31.6、外気温マイナス3.8度、湿度64。

・いよいよ眠るのに支障が出てきた。暖かさが足りない。寒いというよりも、熱が足りない。冬用の寝袋を使えば簡単に解決するのだが、温床の熱をあげることでどうにかしたい。

・9:50、オフィス蔵式珈琲店。今日は電源席座れず。パソコンを開いた時のキーボードの冷たさに怯む。風除室に半日置いておくだけで氷みたいになる。昨日の昼は100パーセントだったバッテリーも80まで減っているのだけどこれも寒さのせいなのだろうか。

・蔵式珈琲店に来すぎではないか。大丈夫か?もうひとつオフィスがほしい。

・シアターキノで「フレンチ・ディスパッチ」が上映中であることを知る。明日観に行く。ヴィムヴェンダースのレトロスペクティブ特集もやっているようだ。

・12時に日記を書き終わる。今日これから、この店を出たら、昨日クレープ屋の店内メニューで発見した、期間限定小倉クレープなるものを買ってみよう、と思う。

・クレープ屋の隣にあるたいやき屋の前で、今日が土曜日であり、土日限定の「クリームぜんざい」が買えることに気が付き、クレープではなくてクリームぜんざいを買う。昼ごはん代わり。

・先日丸田さんから譲ってもらったかわいい布(面白いことに、ビニペットに取り付けるくねくねした針金にそっくりな模様がプリントされている。白地)を、寝室の入り口まわりに張る作業。少し室内がおしゃれになった。しかし、寒い。現状、風除室はほぼ外だ。外気温よりも2,3度高いとはいえ。

・初めて、事前に「見学希望」というメールをくれたお客さん二人が来る。おもろいなあおもろいなあと。話し始めて数分で文化的な香りが漂ってきた。この感覚久しぶりだ。TOO MUCH MAGAZINEのよしむらさんを思い出した。日記を読んでくれていて、僕がマトリックスとスパイダーマンを「重い」と書いたことについて「それぞれのシリーズのなかでも最も重いものを観てますよね」と言っていた。そして、今日このあとシアターキノでフレンチディスパッチを観に行くらしい。ちょうど観に行こうと思ったばかりだったので驚く。

・二人は猫の動画で暮らしている男性と、デザインの仕事をしている女性で、男性は僕と歳も近く、緊張しなかった。

・一人が素手で手をさすりながら立っていて寒そうにしていたので、ここで暖めますか?と、温床と布団の間に手を入れてもらう。「お言葉に甘えて」と、手を入れて「あったかい~」とリアクションしている動画を撮らせてもらう。

「生き物に触ってるみたいな暖かさ」

「猫を触ってるみたいな暖かさ」

「場所によっては冷たいですね。この端っこの方とか」

「猫もお腹は暖かいけど肉球は冷たいですからね」

・30分は話したと思われる。風除室がもっと広ければお茶などを出せたのだがしかししょうがない。

・一人で暇なんで今度飲みに行きましょうと、帰り際に言ってみたら行きましょう!と乗ってくれた。

・ヴィムヴェンダースとウェスアンダーソンが被ってしまう。

・先日買った「ふいご」の、木と合成皮革の隙間に、昨日買ったボンドG17を塗って塞ぐ。最初は自分の寝室で作業をしていたのだけど、気温が低すぎるためなのか、ボンドの粘り気がなくなっていて、ふいごの隙間から内部に入り込んでしまう。なのでCAIの事務所に移る。

・どんなに塗っても吸気口から少し空気が漏れてしまう。だいぶ改善はされたが。

・ぜんざいではカロリーが足りなかったのか体が冷える。16時半ごろから布団に入ってしまい、そのまま寝てしまう。一時間くらいして目が覚める。気温マイナス6度。寒いわけだ。コインランドリーへ洗濯に行く。

・東京で三枝さんの仲介で知り合った福田ハジメさんと再会。コインランドリー帰り、CAIの前で声をかけてくれた。温床について「思ったよりも暖かいですね」と言った。前に会ったのはコロナ前だという話をする。

・佐野さんとゆうやさんと、誕生会的ご飯会を近所の「ほの路」で。メンツは三人だと思っていたのだが、CAIで佐野さんが店に電話をした際に「四人です」と言ってたので電話を切った後「もう一人だれか来るんですか?」と聞いた。ゆうやさんも同じことを思っていたようで、佐野さんの方を見た。佐野さんは「え?いち、に…」とその場にいる僕たち三人のことを数え始めた。そして「さん、よん。4人じゃない?」と言った。しかしそこには3人しかいないのだ。「よん」のところで、佐野さんは窓の方を指していた。「え?もう一人はどこにいるんですか?3人でしょう」と、僕は言った。ゆうやさんも頷いた。すると佐野さんはもう一度「いち、に、さん…」と数え始めた。そして「3人だ…」と、驚愕の表情を浮かべた。僕とゆうやさんは大きな衝撃を受け、笑うしかなかった。佐野さんは「わたし大丈夫かなあ」と呟いていた。佐野さんの真髄。

・飲食代はほぼ佐野さんが出してくれた

・9時20分に初の「末広湯」に突入、「9時50分までですけど大丈夫ですか」と番台のおばちゃんに聞かれ、「大丈夫です30分で出ます」と答える。浴室に入って左のシャワー列の上には「こちらのカランからはぬるいお湯が出ます」と、でかい手書きの文字、右には「こちらのカランからは熱いお湯が出ます」と、でかい手書きの文字。お風呂の温度がちょうど良い。小さいながらサウナもある。入らないけど。ギリギリ風呂を出たのは55分と50分の間ぐらいで、僕が最後の客だったのだけど、「ありがとうございました」と外へ出ようとしたらおばちゃんが「今度はゆっくり来てくださいねと言ってくれた。

・何のために日記を書くのか自分のためなのか誰かに見てもらうためなのか両方あるのだけど二つは両立可能なことであると考えてみる

・札幌の銭湯は閉まるのが早い。末広湯は9時50分まで。鶴の湯は9時半まで。夜になるのが早い街。

・広告収入で暮らしているので、どこか自分のお金ではないという感覚が残っていて、そのぶんスーパー銭湯の食堂やカフェなどでメニューに迷った時、一番高いものを頼んでみたりしている。なぜ「自分のお金だ」という意識が希薄なのか。なんとなくこのお金、借りたものを使っているだけと言うか、自分は仲介者であるにすぎないという感覚が強くある。お金を受け取ってどこかに回す、その間に立っているだけの肉体としての自分がある。そんな感覚。これは広告というものが持つ性格とも関係があるだろう。

・マイナス7度。誰かが「人間はマイナス十度では十分もたない」と言っていた。納得の寒さ。

・昼に客として来た人から「飲みに行くの、明日の夜はどうですか?」という連絡が来る。当然「行きましょう」と返事。次に会う時は客じゃないと思うと面白い。

●体重:59.5キロ

●生活費

蔵式珈琲店にてツナキャベツホットサンドモーニングとカフェラテ:740円

たいやき工房にてクリームぜんざい:550円

コインランドリーにて洗濯乾燥:800円

コインランドリーにて追加乾燥10分:100円

ほの路にて:1000円

●23:30、外気温と湿度は低すぎるためか、手持ちの温度計では測れず(LL.L度という表示がでる。後日気象庁のデータベースから転載する必要あり)、風除室マイナス6.7度、温床内温度29.1度、寝室5.0度(床の上に置いていたため、参考値として)、湿度57パーセント、酸素濃度19.7パーセント。

・温床が30度を切ってしまった。外気温はマイナス七度とかなので、頑張ってはいるけれど。毛布を、体に巻き付けるようにして横になる。ポイントによっては冷たくなってしまっている。

●スケジュールとのずれ

予定では

「風除室の床を作る。午後に見学希望者あり。夜、ご飯会あり。」

であったが、床はすでに昨日作っている。実際にやった作業は

「寝室と風除室のあいだに布をかけて切り、おしゃれインテリアにする。クリームぜんざいを食べる。ふいごの隙間をボンドで塞ぐ。客と話し、飲みに行く約束をする。昼寝する。洗濯する。ご飯会いく」

昨日と同じく今日も予定していなかったことをやっている。クリームぜんざいは想定外だった。次の週末にも食べたい。

1月30日

・床の暖かさに強いばらつきがある。入り口付近、中央と右のあたりはとても暖まっているのだけど、左端は全然だった。なので、昨夜は寝る向きを180度回転させて、肩~首のあたりに床暖房が来るように眠った。毛布を体に巻きつけるようにねれば、まだ寝れたがいよいよ「快適」ではなくなってきた。温度をあげなければ死活問題だ。床の全てを温めなくても良い。体に当たる部分が暖かくなってくれれば良い。

●9時起床、寝室1.5度、湿度100、酸素濃度17.5、風除室マイナス4.4度、湿度90、温床内温度28.8、外気温測定不可

・入り口をちゃんとしめて寝たので結果酸素濃度が低め

一度8時に目が覚めるが次に目を覚ました時には9時過ぎ。今日も日差しが入っている。あの春の日ほどではないが。今日も街のいろいろな所で雪が溶けるのだろう。少しずつ、目には見えない速度で水に戻り、地面に落ちて凍る。その上をつるつると人が歩く。晴れた日の翌日は転倒事故が多くなりそう。

・薄着で外に出たら10分で死ぬ寒さ。外気に触れてすぐに理解する。晴れているが、雪はそれほど解けないだろう。

・9時半ごろにオフィス蔵式珈琲店へ。今日も電源席は空いていなかった。この事態に備えて昨日風除室で充電していたパソコン、開くと20パーセントまでしか充電されていなかった。調べたらマックブックには温度計があり気温が10度以上にならないと充電してくれない。初めて知った。

・隣の、電源席に座っている40代前半くらいのママ二人の会話に耳が取られる。

「親としては心配ですよねえ、この人一生結婚しないんだって…」

「一生一人ってことは、一生働かないといけない…誰にも頼れない…」

「だんまり怒るのはやっぱり良くないと思う、これで怒ってるってちゃんと言わないと…」

わかりますよ。

・電源席が空いたが、メニューを1ページごとに開いてアルコールを吹きかけ、それを布巾で拭き取り、テーブルも同様に消毒して整えて作った「新しい席」に移っても良いですか?なんてことは申し訳なくて言えない。僕が移ってしまったら、同じ作業をこのテーブルにもしなければいけないだろう。そんなことは…頼めない…。電源を安定的に供給してくれるオフィスを探さなければいけない。引っ越しか。

・その後電源席に座った男性の一人客、パソコンを開いてなにやら紙に書かれた数字を打ち込んでいる。その紙の大きさに見覚えがある。源泉徴収票だ。確定申告をしているのか。まさかもうそんな時期なのか?そういえばそうか。もう二月になる。信じられない。今が何月何日なのかとか、日付の感覚が完全に欠けている。毎日日記書いてるじゃないかと自分でツッコミを入れたくなるが、日記冒頭に書く日付は、僕の頭に「日時」としては入ってこない。ただ携帯電話を見て、そこに書かれている「0130」という日付を、文章の冒頭に、いわば「コピペ」しているだけで、それは僕の頭を通っていない。札幌に来てから何日経ったのかもよくわからない。ただ目の前の雪道を歩くのみ。過去も未来もなくそればかりやっている。加えるならご飯を食べ、日記を書き、洗濯をして、お風呂に入り、家の制作をする。これを馬鹿みたいに繰り返している。「一週間のスケジュールを立ててみよう」と思いついたのが何日前かもよく思い出せない。昨日と一昨日と一昨々日の境界が泥のようにあいまい。ただ「スケジュールを立ててみよう」と思ったことは覚えている。確定申告…確・定・申・告。

・今日は休日だが、温床内をかき回せる、細く強い金属製の棒が必要と判断し、それだけ買いにホーマック西岡店へ。

・ホーマックのレジのおばちゃん、僕が財布で小銭を探していたら「ふふっ」と笑った。多分、僕の財布に印刷された「長久手計画工房佐々木俊彦」というのを見て。

・店を出て自販機で、小岩井ミルクとココア130円自販機を見つけて財布を取り出し、小銭を出すその素手に感じる風が冷たすぎて「すごいすごいなあ」と一人でつぶやいてしまうほど。素手が出ていることが耐えられない。5分も耐えられない。車に戻ってラジオをつけたらやはり今日は寒いらしく、最高気温が-6°c。で、携帯を見たら正午現在の気温マイナス6°cだった。

・めずらしく「寄稿依頼」が届く。インタビューではなく。とても嬉しい。

・13:15シアターキノへ。ウェスアンダーソンの「フレンチディスパッチ」13:35の回、昼を食べずに入ってしまったのでお腹が空いて大変だったが幸せな時間だった。心地良すぎてトータル30分以上は寝ていた。終わり際にぐっときた。映画館で眠れるなんて最高だ。席は4割くらい埋まっていた。待合室に人が大勢いて驚く。

・「喜来登」で味噌ラーメン食べる。きゃぴい雰囲気(「きゃぴい」という言葉などないが)の大学生の女の子がバイトの面接に来ている。ラーメン屋のオヤジと話している。店の雰囲気と女の子がミスマッチ過ぎて気になる。「ラーメン屋は厳しいぞ~大変だぞ~」とオヤジ、優しい声で話している。

・休日っぽい感じで過ごしたいので「アバンティ」という、レトロフューチャー感さえあるゴリゴリのバーでボウモア水割りとチーズ盛り合わせのハーフサイズを頼み、本を読む。窓際に座ったのが失敗だった。寒い。

・17時過ぎにバーを出て、18時の待ち合わせまでに良いヘッドフォンを買ってやろうとふと思い立ち、近くにあったドンキへ入る。前々からヘッドフォンは欲しかったのだけど、耳も暖かくなるし買うなら今しかないと、スカルキャンディのCrusher Evo(22000円)を買う。広告収入ですごい買い物をしてしまった。買って、エスカレーターをおりながら速攻でパッケージを開け、携帯とBluetoothで繋いで最初にブリーチャーズを聞いた。携帯付属のイヤホンとはまるで違う…まるで違う音像…。ヘッドフォン買うなんて高校の時以来だ…。しかもあの時買ったものとは桁が一つ違う。僕は手を合わせ、広告主の皆さんありがとうございます。と念じた。

・HILOSHIという、札幌では有名らしい待ち合わせスポットにて、昨日の二人と合流、石川さんと青柳さん。

・スタンレーという店へ。「大好きなアジア料理屋」らしい。最高だった。特に空芯菜の炒め物が絶品であった。

・青柳さんは保護猫だった二匹の猫を家で飼う動画を配信して生活をしているが、ミュージシャンでもある。YouTubeの収益の計算方法は思っていたよりもだいぶ複雑で、動画を見るターゲットが絞れている方が収益率が高いという話などを聞く。

・石川さんからは、最近集めている「就職あるある」をいくつかもらう。週に一度30分ほどの朝礼があり、他部署と売り上げなどを報告しあう。それは一つの机を囲んでやる。ビルに一人、妖精と呼ばれる人がいる。遊撃部隊みたいに各所に出没し、ビルの管理をしているらしいのだが、デスクの上には木の実や松ぼっくりが集められている。唐突に現れ、朝礼の空気をかき回す。社員同士の恋愛遍歴の共有。給湯室が、パートのおばちゃんや他部署の人との異文化コミュニケーションの場所になっている、など。

・そろそろ店を出ようかという時、「パフェ食べませんか?」という最高の誘い文句をもらう。三人で「イニシャルサッポロ」というスイーツ専門店へ。今年初の「締めパフェ」。「ピスターシュ」を注文。ありがたいなあ。

・青柳さん、アジア料理もパフェも全て奢ってくれた。ありがとうございます。

・幸せすぎたので今後パフェはどんどん開拓したい。

・家に帰り、CAIのシャワーを借りる。風除室に置いておいたシャンプーとリンスが凍っていた。

●体重:62キロ(味噌ラーメン、アジア料理、パフェのぶんと思われる)

●生活費

・蔵式珈琲店にてベーコンエッグトーストモーニング、紅茶:790円

・ホーマック西岡店にてメッキパイプ2m:638円

・路面電車、行啓通→資生館小学校前:200円

・シアターキノにて「フレンチ・ディスパッチ」:1800円。

・喜来登にて味噌ラーメン:800円

・バーAVANTI5にてボウモア(トゥワイスアップ)とチーズ盛り合わせハーフ、席料:2090円

・MEGAドンキホーテ札幌狸小路本店にてヘッドフォン「スカルキャンディcrusher evo」:22804円

・交通費チャージ:2000円

●23:47、外気温測定不可、風除室マイナス7.9度、温床内温度23.1度、寝室マイナス2.8度、湿度88、酸素濃度19.4。

・25度を切ってしまった。この薄い布団と毛布だけでは厳しいので寝袋を発動する。仕方がない。明日こそ温床の温度を上げたい。しかしマイナス8度とは恐ろしい…。

●スケジュールでは今日「休日にする。文学館の展示見たい。「くらしのアナキズム」と、先日買った「文藝」読みたい。」の予定だった。実際は休日にはしたけれど、見たのは文学館の展示ではなく、映画「フレンチ・ディスパッチ」だった。ホームセンターへパイプの買い出しも。バーで「くらしのアナキズム」を開いて数ページ読んだが、窓際の席で体も冷えており、ほとんど頭に入らなかった。が、この本に通底する態度というか芯のようなものはうっすら見えた。つまり国家は、国の制度を作ることはできるが、国を動かすことはできないということだ。動かすのは全て現場の、一人一人の人間たち。アナキズムという言葉を使うことで、そのポイントを忘れずにいることができる。「文藝」は開くこともできず。一日の終わりは札幌で新しくできた友人二人と飲みにいき、パフェで〆。

1月31日

・夜、うとうとしていたら遠くから和太鼓の音が近づいてくる。ドンッ…ドンッ…と、割に一定間隔で、音はかなり大きい。普段家の前は夜になると静かで、耳栓も必要ないくらいなので(先日の狐の鳴き声には本当にびっくりした)明らかに場違いな音量。半ばねぼけていて、最初は夢の中の音だと思ったのだけど、目を開けて耳を澄ませても確かに聞こえる。人智を超えたものが目の前を通過している可能性。直に見てみたかったのだけど、寝袋から出るのも面倒だし外はマイナス8度だし眠いしでやめた。昔博物館で見た、江戸時代の風神雷神図の雷神や、水木しげるが描いた妖怪「火車」の絵が思い浮かんだ。大きな車輪に顔がついてるやつ。でも太鼓の音が近づいてくると、それはエンジンの音も伴っていることに気がつく。どうも除雪車らしい。でも太鼓の音もした。除雪車は太鼓を鳴らしながら作業するものなのか。

・車のようなものに乗っていて、飲み物に入っている灰を飲んでしまってむせる。フェスみたいな雰囲気の屋外で、サッカーをしている中学の同級生たちを見た。僕は誰かを探していた。誰かを待っていたが、見つけられなかった夢。

●9:51、寝室3.9度、湿度88、酸素濃度18.9、風除室マイナス1.5度、湿度87、温床内温度23.4度、屋外気温測定不可。

・10時起床。氷のような外気に気圧され、いよいよ温床が弱ってきた。持ってきていた寝袋「モンベル ダウンハガー900#1」をたまらず導入。この温度では寝袋を使わねば眠れなかっただろう。追加の毛布が一枚あれば札幌の屋外でも眠れるほど優秀な寝袋なので、快適に眠れた。しかしこれでは温床を作った意味が…。この快適さは温床によるものではない…。

・11時にオフィス蔵式へ。ランチメニューのビーフシチューを頼んでみる。バゲットとミニサラダ付き。うま。

・雪の日。凄まじい雪の日。ゆっくりと、大粒の雪が大量に落ちてくる。カヒミ・カリィの「melt the snow」が脳内で再生される。

・そして気がつけば昼の2時。一昨日の日記の仕上げと、昨日の日記を書き終えたころには2時。日没まであと2時間半というえげつなさ。この時期の札幌に住み、日々生活と仕事をしている人は全員尊敬に値する。

・帰りにローソンでおにぎりとたばこを買う。14時半ごろ家に着くと、ドアの前に10センチほど雪が積もっていた。そういえば、この家の制作中にペンチを一本なくしたのだった。雪でどこかに埋もれてしまったものと思われる。油断すると、すぐに雪に覆われてどこに置いたのかわからなくなる。この時期の札幌に住み、屋外で労働をしている人は全員須く尊敬すべし。

・とにかく温床内に空気を入れるのが肝要なのだろうと、温床の壁にドリルで三センチほどの穴を開け、先日買った2mのパイプをあてがい、ハンマーで叩いて中までぶっ刺し、半分ほど入ったところで、てこの原理を使ってぐりぐりと温床内を掻き回す。温床は思っていたよりもぱんぱんに詰まっており、下手に力を加えるとパイプが曲がるほど。少しずつ動かしてパイプが折れないようにしつつ、温床の中に空間を作っていく。それから、先日隙間を埋める改良を施した「ふいご」に、短いパイプを取り付け、しゅぽしゅぽと中に空気を送る。入り口側に計3箇所、穴を開け、同じ作業を繰り返す。

●作業を始めたときの温床内温度22.1度。

・すぐに効果がでるものではないだろうが、残念ながらさほど劇的な効果は期待できなさそうだ…。むしろ、中に冷たい空気が入ったせいか、温度が下がってきた。一旦農ビの蓋を取り外し、もう一度鍬を入れるくらいしないとだめなのか。しかし外気がこれほど冷たい状態で、そもそも鍬をいれたら本当に温度あがんのか。あるいは水も追加する必要がある可能性もあるのでは。

・温度が下がりやすくなっている全ての原因は、やはりこの家が高床式になっている点にあるだろう。

・寒いので服を着込んでおり、そのせいで体が疲れる。作業の区切りごとにいちいち5分くらいぼーっとしてしまう。

・結局、一旦寝室のテントを少し持ち上げ、温床表面のビニールを剥がし、表面に鍬を入れた。もう暗くなっていたので温床の深くまで鍬を入れる気力はなかった。

・温度計を一度抜き、もう一度表面から五センチほどのところに入れなおす。

・全て終えて18時。温度は上がりそうにないが。現状、20度を切ってしまっている。

・着替えを風呂セットを入れたリュックを背負い、雪の降る中「末広湯」の方面へ。途中にあった「バロン」という定食屋に入る。古い店だ。年季の入った棚には表紙の焼けた漫画が詰め込まれている。

・店内テレビの天気予報。「明日札幌の積雪は5センチから10センチ、朝早く起きて雪かきが必要そうですね」と男性のキャスター。「寒さは和らぎますが、まだまだ厳しい寒さの日が続きます。寒さ対策を十分に」と女性のキャスター。僕は先ほど自分が行った、温床に鍬を入れる作業を思い出す。言われてみれば、あれは「寒さ対策」だったのか、と気がつく。自分ほど「寒さ対策」に体を動かしている人間はいないのではないか。だいぶ遠回りに見えるが…。しかし他に、やるべき寒さ対策には何があるというのだ?

・バロン、誰が店員でどういう経営体制なのかもわからないが、男性3人が出たり入ったり、出前の箱を持って配達に出かけ、帰ってきたり、並んでテレビをみて「シンジョウがどうのこうの」と言ったり、家みたいに過ごしている。客としてもめちゃくちゃ居心地がよい。他に客はなし。

・店員は三人だと思っていたがもう一人入ってきた。誰が店員で、誰が客なのか本当にわからん。電話が来ると、「もしもしバロンでーす!」と、見た目からは想像もつかない明るくて大きな声をだすおじさん。

・バロンではトンカツ定食を食べる。驚くべき速さで提供された。なかなかのボリューム。

・今日は休肝日にするぞ。

・「末広湯」、番台は先日のおばちゃんではなく、おじちゃんに代わっていた。

・脱衣場で箱ティッシュを見つける。ドラクエで隠れた宝箱を見つけたような気持ち。風呂上がりにメガネを拭くのに欠かせないのだ。着替えていたら、僕のすぐ隣で、おそらく常連のおじさんが、ほぼノールックで棚のティッシュを一枚取っていったことで気がつけた。目には入っていたが、見えていなかったのだ、ティッシュが。「末広湯」の重要度が一気に最高レベルに上がる。

・よく見たら、脱衣所にはあちこち手書きの赤い文字で「おしゃべりしないで」とか「ぬるいカランは、一斉に出すと水圧が下がるので熱い方のカランを使ってください(近々改善します)」とか張り紙が。先日は閉店間際の駆け込みだったので気が付かなかったのだ。目が曇っていたのだ。メガネも曇っていたが。

・帰ろうとしたら番台はおばちゃんに代わっていた。ドアを開けたら怯むほどの降雪。上着のフードを被り、その上からヘッドフォンをして帰る。15分ほどの道がものすごく遠く感じる。

・我が家に雪が山盛りだ。

●体重59.8キロ

●生活費

・蔵式珈琲店にてビーフシチューランチとオレンジジュース:1250円

・ローソンにてレッドブルと琥珀チャーシューおにぎりと煙草:1435円

・バロントンカツ定食1000円

・末広湯:450円ドライヤー:20円

●22:30、外気温測定不可(おそらくマイナス8度以上)、風除室マイナス7.9度、湿度測定不可、温床内温度18.1度(まずい)、寝室マイナス2.9度、湿度76、酸素濃度19.2度。

・温床18度はまずい。明日は気合を入れて寝室のテントを一旦取り外し、もう一度気合を入れて温床に鍬を入れてみることにする。必要とあらば、湯たんぽにもう一度お湯を入れる。

●スケジュールとのずれ

予定では「風除室作業の続き」と書かれているが、過去の自分はどうかしているとしか思えない。温床が20度を切っているのに風除室作業なんかやっている場合ではない。

2月1日

・ちょっと粉っぽい。僕を含め3人ぐらいその場にいて、カップラーメンの新品を開けていた。蓋をめくった裏側に、小学生の時に女子が使っていたようなラメのボールペンで「(村上さん)無理です」と書いてあった。なぜかホラー映画のような雰囲気が漂っていた。その後、マジック・ザ・ギャザリングの映画兼ゲームのようなものを早朝に始めるが、その場にいた人はギャザができないので、友人に連絡をしたらすぐに来てくれ、笑顔だった。一緒にやってくれないかと言ったら「出来ない」と言われる夢。

・上に書いてある「ちょっと粉っぽい」が、いったいなんのことなのか覚えていない。

●9:53、寝室4.0度、湿度77、酸素濃度18.8、風除室2.0度、湿度83、温床内温度19.8。

・温床内温度、昨夜より若干上がっているがそれは気温が少し上がった分と思われる。それにしても低い。一度開けたのがかえって逆効果だったのか?扱いが難しい。もっと強力な断熱を施しておけばよかったことは間違いないが。

・10時起床、丸田さんからもらった野菜ジュースアップル味を飲み、残りストックが一本になる。その後、階段の氷割りと家への通路確保雪かき、今日は火曜日、CAIが開く日なので一応来場に備える。

・11時過ぎに蔵式珈琲店へ。結局オフィスを変えていない。雪のせいか遠出する気になれない。今は日差しも出ているが、この地の空模様は信用できない。いつ降り出してもおかしくない。でも割に暖かい日。

・先日インタビューを受けたフリーペーパー「ケムリエ」の表紙が届く。声を出して笑ってしまった。

・昨日の日記を書き終え、13時過ぎ。札幌市になだれ注意報がでているらしい。

・帰りに弁太で「鶏そぼろ弁当」買う。

・さて、温床をもう一度掘り返す必要がありそうだ。このまま放っておいても温度が上がる見込みはない。再びレインコートを着込み、あの泥の中へ入らなければいけない。それは避けられない。これで問題が解決するかはわからない。しかし、これを通らずには可能性は開けない。人生には行動を起こさねばならないタイミングというものがあり、それは今なのだ。いまいちど魔法をかける。音楽から影響を受けるという受動的なことが、能動性を発動させるという魔法を。

・しかし音楽ではなく、ラジオをかけながら作業をした。まずは棚や椅子や服などの荷物、寝室の布団や枕を全て外に持ち出し、中を空にする。それから寝室テントの壁が垂れ下がらないように、寝室の内側から外側の骨組みに向けて打っているビスを二本取り外し、床のビニールを剥がす。寝室のテントをフレームごと持ち上げ、持ち上げた状態のままフレームを外側の骨組みにビスを貫通させ、落ちてこないようにする。剥がした床のビニールは端で丸めてガムテープで仮止めしておく。そして温床の表面を覆っているビニールを剥がしてこれも外へ。温床が露出する。方々から湯気が立っていた。温度計を一旦抜く。

・上下レインコートを着込んで温床に入る。表面には菌糸が見られず、発酵が進んでいない様子だった。匂いもそれほど強くない。鍬で掘り返していくと、内部にはびっしりと菌糸が張っているところもあった。だけどなんというか、とても「まばら」だった。とりあえず一通り、表面から10センチくらいの範囲は切り返しをした。最後に温度計を刺す。入り口近く、表面から5~10センチくらいの深さ。最後、水をかけるか迷ったが、水分が足りていないところがあった。ので、かけた。やはり温度は下がった。ここから上がるか?

●16:50、切り返し後の温床内11.4度。

・ゆうやさんから興味深い話をまたひとつ聞く。展覧会の準備のため、台湾に滞在していた際、眠れない日々が続いて疲れていたのだが、ある日「霊に憑かれている」と言われた。展覧会のオープニングの時、シャーマンというのか除霊師というのか、とにかくそういう人がやってきた。見た目は普通のおばちゃんだった。そのおばちゃんはゆうやさんから見て右のあたりにいる霊と、台湾語でも日本語でもない言葉(どうも日本人の霊らしい)でコミュニケーションをとっていた。また、何かを叫びながら、ゆうやさんの体を叩きまくった。ゆうやさんは俯き、叩かれるがままだった。それからシャーマンは、両手のひらを前に突き出すようにして、ゆうやさんの右にいる霊をぐいぐいと「お前の居場所はここではない」という感じで押していき、裏口から外に出した。割とフィジカルな動きだった。ゆうやさんは「霊との関係を築け。お互いにリスペクトをしろ」とアドバイスを受けた。その時は特に何も感じなかったのだが、次の日の朝、起きた瞬間の体の軽さに驚いた。それから、そういうものを信じるようになった。

・20時過ぎ、末広湯へ。

・佐野さんからもらった北海道限定のカップ焼きそばと、今日訪ねてくれたSIAFチームの人たちからもらった今川焼きを夕食とした。

・東京にいたなら、「今川焼き」だけで済ませていたかもしれないが、こちらではカロリーが足りなさそうなので、カップ焼きそばも食べる。摂取カロリーが低いと体温が下がる。ちょっと変温動物になっている。というか、札幌にいる時に限らず、普段から「ご飯が足りないから体温が下がってる」ということは起こっているはずなのだが、ここにいると自分の体温に敏感になる。とにかく、熱を体に貯めることが肝要。そのためには睡眠と食事と入浴。温床はそのうちの「睡眠」を担っているに過ぎない。

・冬の北海道に来れば、人はある程度アナーキストになれる。突然猛烈に雪が積もったりして予定が立ちにくいこの環境下で、日々のルーティンをこなして仕事や生活をしている人たちは言うなれば、未来を設計したうえで行動する農耕民と、環境に合わせて行動する狩猟採集民のあいだに立っている。雪道を歩くときなど、僕は狩りに行くみたいな気持ちになる(実際狩りに行ったことはないけれど)。冬の北海道に来れば、数々の障害によって、ある程度日々のルーティンから外れざるを得なくなり、結果狩猟採集民的になり、アナーキストになれる。

・肉が食べたくなるのもそのせいだし、食べることに快感を覚えるのもそのせいだろう。ここに来ると体が変わり、生活の前提が変わる。北海道は「食べ物が美味しい」と言われるが、それは単に「食べ物それ自体が美味しい」だけの話ではない。食事が快楽になるのだ。

●体重59.7キロ

●生活費

・蔵式珈琲店にてカレーランチと紅茶:890円

・弁太にてサラダランチ鶏そぼろ弁当:530円

・末広湯にてドライヤー代込み:470円

・ドラッグストア「サツドラ」にて、牛乳、黒糖かりんとう、フルーツグラノラ、スコッチウイスキー「タリスカー シングルモルト10年 200ml」:2442円

・スーパー「ラルズマート」にて氷、プラカップ:379円

●0:20、風除室マイナス3.8度、湿度86、温床内温度9.9度、寝室酸素濃度19.2(寝室気温は測り忘れた。が、温床温度が低いので風除室とさほど変わらないだろうと思われる)。

・プラカップに氷を入れ、ドラッグストアで買ったスコッチを飲んでから寝る。雪にウイスキーの瓶を指して眺め、なんだか贅沢な気分になる。明日は雪を掘って冷蔵庫を作ろう。カセットコンロ買わねば。温床の温度は上がってくれないが、少し様子をみつつ、一旦「料理」の方面に力を入れてみる。チーズも買うぞ。

●スケジュールとのずれ

予定では「風除室作業の続き」と書かれているが、風除室のことは何もやっていない。もうスケジュールのことをほとんど覚えていない。

2月2日

・ビルのように階段で行き来できる巨大なスキー場を人と歩いている。風呂付き。いつのまにか小中の同級生だった男の子も加わり、3人でカウンター席でご飯を食べていて、僕は真ん中で、右に座っていたその男がハラスメントな発言をしたので、それはよくないと指摘したのだがその男はさして気にしていなくて、しかしこの男の右側に座っていた見知らぬ女の人にも、それはマタハラだと言われ、すると男は大粒の涙をボロボロとこぼしながら泣き始める夢。ピンポン球みたいなサイズの涙だった。

・二度寝した際、大原大次郎さんと飯田将平くんとちゃぶ台を囲んで、洒落た雑誌をぱらぱらとしながら茶を飲んでいる夢。なにか本を作ろうとしていた。とてもリアルで、起きてからもしばらく「大原さんたちと何か本を作る予定あったっけ」と考え込んでしまう。

●9:22、寝室4.4度、湿度100、酸素濃度18.6、風除室マイナス0.6度、湿度87、温床内温度10.4度。屋外測定不可(鉄製の手すりに温度計をつけているせいで冷えて測定できない可能性)

・温度が上がらない。もう、温床のことを考え、土に塗れて作業をするのに疲れてきたので一旦考えるのをやめることにする。別のことに一旦集中し、再度挑戦する。そのうち上がるかも知れないしな。

・朝、小さなかまくらを掘り、冷蔵庫をつくった。中に牛乳、ウイスキー、氷を入れた

・10:50蔵式珈琲店へ。なぜかめっちゃ混んでいる。過去最高に混んでいる。二人席は空いておらず、四人席座る。他にも、四人席に座っている一人客が3,4人。

・蔵式珈琲店には「本日のストレートコーヒー」というメニューがあり、席に着くたびにスタッフが「本日のストレートコーヒーは…」と、名前と味の説明をしてくれ、僕は「はい、はい、」と声を出してうなずくのだけど、実は全然聞いていない。

・フレンチトーストモーニングと「本日のストレートコーヒー」を頼む。

・コーヒーうま

・二時間くらいかけてだらだらと日記を書き、ふと周りを見たら少し席に余裕ができている。僕のテーブルには、モーニングセットの皿がまだ残っている。ゆで卵をまだ食べていないから、スタッフも下げられないのだ。もう13時なのにテーブルにはモーニングの皿。なんだか申し訳ない気分に。コーヒーはうまかったが、しかし全部飲みきれず少し残して退店。

・温床のことは一旦さておき、家で鍋でも作ってみるかと思ったのだけど、その前に家の外壁の断熱をもう少しやったほうがよさそうだ。今はツーバイフォー材の外側にビニールを張っているだけなのだけど、内側にも張ればダブルスキンの家になる。二重断熱。鍋をやるのはその後だろう。火の力というのは侮れないもので、小さなカセットコンロの火でも僕のこの家くらいの大きさの空間なら暖房を兼ねてくれるだろう。鍋をやることが部屋の暖房になり、かつ肉体も温めるという一石二鳥を夢見て、断熱に勤しむことにする。

・そのためにはビニールを買いにいかねばならない。お馴染みのホーマック西岡店へ行き、ビニール(いつも使っている農ビではなく、中にチューブ上の空気層を備えた保温に特化したビニールが売っていたのでそちらを買う。少し高いけど)、カイロ、カセットコンロ、ボンベを購入。

・食材も買っていこうと、帰り道にあったスーパーに入ったのだが、そこで山梨県美の人からメールが来て、1月31日までに校正の返しをお願いしますと言われていたことを思い出す。メールアプリを遡り、山梨県美に限らずここ一ヶ月の間、仕事のメール全般に返事をしていないことに気がつく。信じられない。札幌に来てからもう一ヶ月も経つのか…という衝撃を受ける。スーパーの入り口で引き返し、今日はデスクワークの日にするか、と心を決める。近くにファミレスがないか調べ、サイゼリヤとロイヤルホストが出てきて迷った。普段ならサイゼリヤなのだが、いまは広告収入で生活している。ここはランクを上げていくか、と、ロイヤルホストへ。

・飯田くんから、ビッグコミックオリジナルの「前科者」という漫画に、僕の絵本がちらっと出ているという情報をもらってすかさず買ったのだが、そのシーンもロイホみたいなファミレス店内だったことを思い出す

・久々のロイホ、やはり上流階級の人々が優雅に過ごしている。その気になれば八人くらいは座れるのではないかというコの字型のソファ席に通される。ヘッドフォンを外し、カバンをおろし、上着を二枚脱ぎ、それら全てを席に置き、パソコンを出して座る。昼を食べていなかったのでドリアを注文。ドリンクバーも頼んじゃう。

・17時過ぎまでパソコンに向かう。メールを五通返し、請求書をひとつ送り、ひとつ振り込みの処理をし、「学びの要素がない」と突き返されていた600字の原稿を900字で書き直して送信した。

・札幌駅北口のルンゴカーニバルへ。東京からキュレーターのろばと氏と佐原氏とアーティストのピヨさんが来ているからご飯でも、と佐野さんに誘われていた。ピヨさんという名前、文字にしてみるとかわいすぎる。

・ヴェネチアビエンナーレにおける展示プラン制作の予算やギャラについてのエグい話を聞く。この国は文化予算がヘボすぎて話にならない。

・晩御飯を食べた後、先日の影響もあってパフェで締めたくなり、佐野さんたちと別れ、一人すすきので降り、二度目の「イニシャルサッポロ」に向かったのだけどお店は満員で少しお待ちくださいと言われ階段室の所で待ち始めるも、トイレにも行きたいし、ちょっともう面倒くさいなという気分になってしまい、店員には申し訳ないがそのまま階段を降り、店を出てしまった。別のパフェの店ないかなと思って歩いていたのだがトイレ行きたさで早足になっていて、酔っぱらっていたのもあり油断していた。札幌に来てから初めて、見事に転んでしまった。氷の歩道を歩いていたら左の靴が右にスルッと滑り、腰の左側を強打。すぐ後ろに人がいたので、なんでもありませんよと言わんばかりにすかさず立ち上がり、手でぱんぱんと足を払ったが、実際のところ激痛と言っても過言ではなかった。ちょっとびっこを引くぐらいになってしまい、布団に入ってからもまだ痛い。

・びっこをひきながらファミマに入りトイレを借りて、そのままチョコチップアイスのようなものを買って食べながらすすきの駅に戻り、結局パフェを食べないまま家に帰ってきた。1800円のパフェのところ180円のアイスで済んだのだが、腰が痛い。

・帰ってきてもう21時半だったので銭湯も行けず、というか行かず、CAIでシャワーも借りずに布団に入った。温床内の温度計は11度を指しているが手で確認すると所々暖かい場所がある。20°cを超えているところもありそうだが、やっぱりまだくすぶってる感じ。面倒を見て大事にしていこうと。

●22:49、外気温マイナス4.3度、湿度84、風除室マイナス3.9度、湿度93、温床内温度11.0度、寝室マイナス0.8度(寝室ドア開けっ放しだった)、湿度76、酸素濃度19.5

●体重測り忘れた

●生活費

・蔵式珈琲店にてフレンチトーストモーニングとコーヒー:650円

・ホーマックにてカセットコンロ、ボンベ、カイロ「鬼熱」(温床用)、保温ビニール(サニーコート)三枚、ティッシュ:14280円

・エネオスにてガソリン代29.49L:4983円

・ロイヤルホストにてコスモドリアとドリンクバー:1199円

・セブンイレブンにて煙草二つ:1080円

・ルンゴカーニバルにて:3600円

・ファミリーマートにて「ザクザクバーストロベリー」:168円

●スケジュールとのずれ

予定では「家の入り口までの動線の整備。現状、資材や道具があちこちに積まれているので整理したい。」

と書かれているが、実際家に関してやったことは買い出しくらい。ファミレスでパソコンに向かっていた。「動線の整備」ができるのはいったいいつになるのか。

2月3日

・家の前に7時、救急車、マンション内に救急隊員が入って来る。おじいさんが、隊員に寄り添われながら救急車に向かっているところを目撃。大事ではないみたいだ。

●7時寝室2.6度、湿度100、酸素濃度18.8、風除室マイナス4.9、湿度90、温床内温度11.7、

・昨日打った腰が痛い。ちょっと普通に歩けない。いててて、やべべ、と声に出るほど。

・朝、CAIでシャワー借りる。

・マスクと靴下を手洗いし、乾かしている間にYoutubeでスパイダーマンNWHのオーディエンスリアクション動画を見始め、釘付けに。例の、手を掴むシーンで観客が歓声を上げたところで号泣。

・他にオフィスがないか調べているが、Googleでは良さげなところが見つけられない。蔵式珈琲店が近所にあるこの立地、実はものすごく恵まれているのではないか。

・天気が良く、景色が白く輝いていた。散歩したくなりAJICOなど聞きながら。光が満ちている。「回復フィールド」という言葉が浮かぶ。魂の回復フィールド。

・GEZANの「言いたいだけのVOID」の歌詞に街は誰のものというフレーズを確認

・結局蔵式珈琲店へ入り、席について早々財布忘れたことに気がつく。楽天ペイを携帯にいれておいて良かった。

・読売新聞北海道支局から取材依頼がくる

・オフィスでカレーを食べ日記を書いて13時半。CAIで佐野さんに、昨日転んだんですよという話をしたら、わたし今年はまだころんでない。と言われる。毎年一度は必ず転ぶらしい。多いパターンは、後ろに尻もちをつくフォームとのこと。道民は平均どのくらい転ぶんだろうか

・14時前に作業開始。家を二重断熱にする。まず荷物を片付け、寝室を風除室側に引きずり出し、家の奥半分の、ツーバイフォーの骨組みの内側に「サニーコート」という家庭菜園用のビニールシートを貼る。それから寝室をもとに戻し、風除室側も同様に。ドアにも施す。途中、先日通りすがりに訪ねてきた花の人が、パンを二つ差し入れてくれた。塩パンとソーセージパン。うまい。

・作業が終わって18時半。暗い。夜。だが一日で終わって良かった。

・CAIで佐野さんと雑談。「一日にどのくらい酒を飲むか」「ビアセラーサッポロという店を知っているか」という話題で20分ほど盛り上がる。雑談のお手本のような雑談。こういう時間の恵みを噛みしめる。眩しい。雑談。世界から雑談が失われて久しい。

・夜、末広湯に向かう。途中「コノヨシ」でご飯。激うまハヤシライスを食べたのだが、財布に現金が数百円しかないことに気がつき、店員に「お金をおろしに行ってもいいですか?」と。コンビニの場所を尋ねると店員さんが「石山通りに出ていただいて、上に行っていただければファミマが」と。上?と思いつつ「わかりました」と出て行く。上というのは、北のことだろうなと思ったが、石山通りに出たところで南の方角にファミマを発見。「上」という言い方が気になる。きっと彼には「上」というイメージなんだろう。

・ふと僕の「喫煙所」をイベントとしてやったら面白いかもしれない。僕が一人でタバコを吸うのではなく、イベントとして一日だけ公共の場所に数人が入れるくらいの太さの「喫煙所」をつくり、ここにつくりますのでタバコを吸いに来てください、という告知をする。客はただタバコを吸いにくる。

●23:07外気温測定不可、風除室マイナス4.7度、湿度86、温床内温度10.8、寝室マイナス1.1、湿度100、酸素濃度18.9

・二重断熱にしたからか、寝室に入った時から室内の酸素濃度が低め。

・温床温度、数値上は10.8(温度計を指している場所が悪い可能性)だが手で床に触れてみるとところどころ暖かい低温環境下でも活動はしているらしい。どうしたら彼らを支援できるか。

・そのためには、まずは僕が温まりつつ楽しむことだろうと結論。彼らは野生の菌たちだ。落ち葉についていた菌たち。飼いならすのはむずかしい。寄り添い、活動を始めるきっかけを与えること。菌たちと話をしなければいけない。明日はここで鍋をする。

●体重59.7キロ

●生活費

・蔵式珈琲店にてカレーランチとグレープジュース:890円

・洋食コノヨシにてハヤシライス:1540円

・サツドラにて二足組ソックス:550円

・末広湯ドライヤー代込み:470円

●スケジュールとのずれ

予定を立ててからもう一週間。最後の予定は「雪の庭づくり」だった。実際にやったことは「家の内側にもビニールを貼り、二重断熱にする」だった。理想と現実のギャップがよく現れている。もうスケージュールは立てない…

2月4日

・宇垣美里さんが出てきて、なにか施設のスタッフなのか、サポート役の係なのかわからないがそんなポジションだった。なんの施設だったのかは覚えていない。部屋はいくつかあった。彼女はとても気さくで、みんなの輪に入ってくる。しかし2度目に出てきた時、地元で幼馴染みだった町田くんみたいな丸っこい感じになって登場する。日本人として男が一人で出てくるのだけど、僕はその友人に、宇垣さんとその友人の写真を撮るように頼まれる。頼んできた友人は、ニワトリを横から見たようなシルエットの髪型をしていて、水がある庭で、友人は水の中(池のように下に水が溜まっているわけではなく、四角く切り取られた水が地面に置かれるようにして、水があった)にいる鳥のような生き物に向かい、手元に餌をもっているかのように手を動かしてその生き物を誘い出そうとしていて、するとその水の中の生き物が飛び出してきて、友人の手元ににある木の枝を咥え、水の中に戻っていく。僕は「この生物はさぞムカついて、「この鳥頭が」と思っただろうな」と思う夢。

・冷蔵庫に置いていた牛乳が凍ってしまっている。開けるのが久しぶりすぎた。これは冷蔵庫ではなく冷凍庫なのであろう。雪の中に埋めるほうがよさそうだ、凍らせてはいけないものは。

●僕の今までの態度は間違っていた。自分は服を着込んで暖かくしていたのに、菌に対しては厳しい環境を敷いていた。この態度を改めなければならない。もっと向き合え。菌たちと向き合い、この環境をともに乗り越える。野生の菌たちの力を借りようとしている以上、こちらも彼らと誠実に向き合わなくては。もっと多くの時間を共に過ごし、苦労を分かち合い、生きていかなくては。宇垣さんの夢など見ている場合ではない。菌の夢を見なくては。菌たちとともにいる夢を。

・まずは挨拶から、「おはよう調子はどうですか」「一緒にあったまりましょう」と声をかける。

・鍋をやって一緒に温まれば彼らも少しは元気になってくれるか

・この家で生活をスタートされてから初めて、「オフィス」に行かなかった。昨日の日記を書くのを後回しにし、菌たちのそばで鍋をやることにした。まずは鍋。話はそれからだろう。鍋から何かが始まるだろう。

・近所の東光ストアというスーパーに行く。とても良い。ふと立ち止まって見渡すと、探していたものがある、という奇跡が3連続。靴屋も本屋もある。とてもよいスーパー。本屋で「前科者」を探したが、見当たらず。

・東光ストアで、鍋用のパック野菜(カット済みのネギやにんじんや白菜が入ってる)とすりごまと無調整豆乳とラム肉と豚肉とほうれん草とにんにくと生姜と豆腐と味噌と米とごま油と椎茸と塩などを買い込み、風除室のテーブルにカセットコンロを置き、鍋を作った。米も炊いた。ラム肉の胡麻豆乳味噌鍋。出汁と胡椒がないのでちょっと本調子ではなかったが、うまかった。

・米を炊き始めると室内はすぐに湿度マックスの蒸気サウナ状態になり、真っ白で何も見えなくなるほど。室温も12度くらいまで上がった。温床は11度~12度前後。昼間この家で、作業以外のことをして過ごすのは初めてだった。足元が寒いことがよくわかった。やはり駐車場の上にいることが、床からの冷気で伝わってくる。これでは温床たちも厳しいだろう。だが確かに一度は60度以上まではあがった、しかし僕が温床の上で毎日寝続けることで空気が抜けたせいで(つまり、「踏み込んでしまった」せいで)火が燻り、温度が下がってしまった。菌たちが団結して40~50度をキープできれば冷気に負けない温床が可能なのでは。そのためには温床内に柱を立て、床をつくること。

・普段会わない層の人々から見学希望が来る。不思議だ。マーケティングの人とか。そういえば先日の寄稿依頼も顧客体験とかマーケティングという言葉が並ぶ雑誌だった。なぞ。

・梅酒飲みながら一人鍋をつつき、酔っ払う。路上キャンプのような、一度鍋でお腹いっぱいになったら、一日が終わったような気分に。余った食材や鍋や米を、雪の中に突っ込む(冷蔵庫)。

・13:24温床11.4度。鬼熱カイロを十枚、温床と布団の間に入れてみた

・若々しい女性二人が来客。髪質の良さに驚愕。後で佐野さんから聞いたのだけど一人は春から東京の武蔵美へ進学するらしい。

・洗濯した

・15時半ごろ菌たちと別れを告げ、路面電車で映画館に向かう。札幌はコンパクトで映画館などに気楽に行けて良い。京都に似た良さ。

・サツゲキにて片山慎三監督「さがす」。めちゃくちゃ傑作だった。映画館を出た後電車に乗りたくなくて、マイナス4度の中を30分も歩いて帰ってしまった。ノワールというのか、暗い話と言ってよいと思うのだけど役者がすごすぎて笑ってしまうところが終始あり、絶望的な場面でもなぜか希望が。あとからあとから予想が裏切られて映画観る喜び噛み締めた。個人的には妻を取るか娘を取るかという二択を迫られていた。マカロンがお菓子だと気がつくシーン最高。

・19:20映画から帰ってきて、温床11.4度。変わっていない。しかし測定している場所が悪い可能性。手を入れれば確実に、映画に行く前昼よりはあったかくなっている。でも端っこの方はまだ冷たい。ちなみに風除室はマイナス2.6度。

・雪室、というか雪に刺していただけなんだけど、そこに入れていた野菜や肉は凍ってなかった。つまり外に出しておけば冷凍庫、雪の中に埋めれば冷蔵庫ということか。しかし雪に埋める深さが甘いと冷凍庫になってしまう。たぶん。

・鶴の湯へ。鶴の湯にもティッシュはあった。脱衣所に入ってすぐに、末広湯でティッシュを発見できなかったことを思い出し、注意深くまわりを眺めてみたらそれは鏡の前に鎮座していた。比較的高さのあるボックスのティッシュが。思い返せば札幌にはティッシュのあるお店が多い。スープカレーキングにもあったし喜来登にもあったし今まで行った居酒屋にはほとんどあったように思う。メガネが曇るからか。鼻水などが出るからか。とにかく室外と室内の気温差が大きいのでティッシュが必要なのだと思われる。

・僕よりも少し若く見える青年が、末広湯を僕が出るタイミングと時を同じくして靴を履き、僕は先に出たのだけど、ドアの向こうで青年が番台のおばちゃんに向かって「すみませんおばあさんっておいくつなんですか」と興味深そうに尋ねる声が聞こえた。

・体を洗っている時にあるアイデアが思い浮かんだのだが実行する日付が大事なのと、しかしそもそもそんなことをやっていていいのだろうかこんなことを面白がっているような作家で果たして大丈夫なのかという気持ち。

・「昆虫食自販機」に売ってる2700円のタランチュラ、誰か一緒に食べてくれる人いないだろうか。一人では食べきれなさそうなのでなかなか購入に至らない。

・CAIの流しを借りて歯を磨く。紫色に塗られた小さなコンクリート製の大仏で、頭にGERMAN SUPLEX AIRLINESと書かれた布が巻いてある金色の金属棒が刺さっている置物を発見。なんだこれは。

●体重60.5キロ

●生活費

レシートを紛失した…。思い出し書き。

・東光ストアにて、鍋用のパック野菜とすりごまと無調整豆乳とラム肉と豚肉とほうれん草とにんにくと生姜と豆腐と味噌と米とごま油と椎茸と塩など:たしか4000円くらい

・サツゲキにて「さがす」:1900円

・コインランドリーにて:800円

・鶴の湯ドライヤー代込み:470円

●1:16、外気温測定不可、風除室マイナス4.9度、湿度86、温床内温度11.4度、寝室マイナス1.9度、湿度90、酸素濃度18.7。

・この生活もあと2週間。今日は折り返しだ。もっと持続的に菌たちの温度を高く保つため今一度大工事をする必要があるよあるだろう。計画を立てよう。他にやることなんかないんだから。他にやることなんかないのだ。立ち上がるならここしかない。このプロジェクトを札幌で行うチャンスはおそらくもう二度とない。駆け抜けろ

2月5日

・最近、寝室に入った時や布団をはがした時に仄かに香る、発酵による硫黄のような、その菌がくすぶっている臭いが良いものに感じるようになってきた。心地よい。癖になる。

●9:09、寝室1.3度、湿度100、酸素濃度18.7、温床内温度11度、風除室(兼居間)マイナス3.7度、湿度91、外の気温マイナス4.8度、湿度62、

・牛乳が凍ってしまっていた。もっと深く埋めないとダメらしい。お湯を沸かして溶かし、フルーツグラノラにかけて食べたが牛乳の味が変だった。濃くなっていた。

・今日から大工事を始めるのでシリアルだけでは足りず、弁太にてオムライス弁当を買って食べる。オフィスには行かない。

・風除室(兼居間)のテーブルや棚や食器などを外に出す。

・寝室を取り払う。むしろを剥がし、ビニールを剥がし、木のフレームを解体する。

・風除室(兼居間)の床にシートを敷く

・レインコートを着込み、手袋をして、温床に入り、落ち葉を風除室(兼居間)に掻き出す。

・ほとんどすべて掻き出す。

・アースパイプ、破損しているところもあったので取りはずした。

・温床の底がとても冷たいことがわかった。底冷えがひどい。これでは彼らも辛いだろう。むしろを四枚ほど追加で敷く。もう一層、断熱材を敷いても良いくらい。

・本当は土の上に作るのが一番なんだろう。やっぱ。地球が持っている熱を味方につけるべきなんだろう。でもここが与えられたのだ。彼らには申し訳ないが、この、駐車場の上という環境下でやるしかない。働いてほしい。

・服の外側は泥まみれ、服の内側は汗だくになりながら、いったい誰がこんな大変なことを求めているのだろうかと考え込む。わたしではない。わたしは動かされている。

・描き出した落ち葉をもう一度温床内に入れる。今度は踏み込まないように、中の空気を抜かないように慎重に。

・ふと外をみると雪が降っている。それも、めちゃめちゃ降っている。外に出していた荷物が心配になるが、こちらは泥まみれなのでどうしようもない。作業が終わるまで放置するしかない。わたしの体はひとつしかないのだ。マルチバースからもう一人来てくれればいいのだが。

・ひと段落して16時

・外に出していたテーブルやお鍋やゴミ袋や布や食器など全て雪に覆われてしまって、鍋上の積雪5センチ

・朝はものすごく晴れていて雲ひとつなかったくらいなのに。作業を始めたら突然降り始めた。よりによって外に荷物を出したらば突然の大雪。佐野さんから「さすがですね」と言われる。

・レインコートも手袋も靴も泥だらけ、防護服を脱ぐようにして脱いで、手袋は腐ったレーズンの匂いがする人の手の形をしたずぶ濡れの物体と化している。泥はモンベル製の冬用の手袋を貫通して素手まで到達し、手は茶色く石鹸で2度洗ったがまだ茶色い。

・雪を払うのが面倒で行動を起こす気にならない。

・しかし、雪は払われねばならない。

・軍手をはめ、テーブルの雪を払い、鍋の雪を払い、鍋を家の中に避難させまた戻ったらテーブルにもう雪が積もっている。その雪をまた払い、ティッシュ箱の雪を払い、家に避難させ、戻ったら再び雪がテーブルに積もっている、その雪をまた…

・ゆき、ゆき、ゆき、ゆき、ゆき…ゆきゆきゆきゆきゆきゆきゆきゆきゆきゆきゆきゆきゆきゆきゆき

・ゆきのゲシュタルト崩壊

・温床は山積みでふわっとした状態で整え、少しお湯をかけ、再び湯たんぽを入れ、温度計を刺し、発酵の度合いを見極める。いわゆる「橋本式温床」の変化版とでも言えるか。

・落ち葉の山に40度のお湯を3分ほどかけた。その上に寝室に使っていたプチプチを被せ、さらに農ビを被せた。

・作業中スコップから落ち葉が跳ねて籾殻が顔にまぶされた。君たちに触れた。

・温床の一部は広く菌糸が張っていて発酵が進んでいるところもあった。わたしの体重がかかっていないところは温かく発酵していた。湯気が出ているところもあり、場所によっては30°c近くあったとは思うが、端っこの方はやはり断熱が足りていないのか凍っているところも。この環境では彼らも厳しいだろう。全力でサポートしていかなければいけない。

・しかしこの、泥まみれになりながら作業をし、同時に考え、言葉にもしていく動作の連続。これこそが芸術ではないかと。もしかしたら、わたしは芸術家なのではないかと。きっと健康にも良い。

・色々な隙間の中に入り込んだ雪。例えばばかうけの袋の中とか、ビスの箱の中とか、カセットコンロの中にも。靴に入り込む砂のようだ。

・作業終えたら真っ暗。

・先日と同じ鍋を作り、佐野さんとゆうやさんに分けつつサッポロクラシックを飲みつつみんなで食べた。政治家のクォータ制の話や、美大は女の子ばっかりだったのになぜアーティストは男性が多いのかそしてなぜ芸術祭のコーディネーターや美術館のスタッフには女性が多いのかという話や、田中偉一郎さんの話や明和電機の話など

・外に放置しておいたファンタグレープがシャーベット状になっていてうまい

・そしてこの積雪。まだ降っている。冷蔵庫も冷凍庫も倉庫(かまくら)も完全に埋まってしまった。

・温床を今夜は家で眠れるような状態ではないのでCAIの部屋を借りて寝る。初の外泊。CAIの部屋とは、界隈では「独房」と呼ばれている、天井と壁が打ちはなしコンクリートと石膏ボードで、床はモルタル。そこにベッドがぽんと置いてある。ストーブもあるしトイレも部屋内にあるから件の京都の滞在施設よりはだいぶ良い。

・CAIシャワーを借りる。

●22:41温床内温度12.6

体重61.3キロ(あとから判明したのだが、測定した場所が平坦ではなかったのでこの数値は信用できない)

生活費

・弁太にてオムライス弁当:500円くらい

レシートを紛失したので思い出し書き。しかし、この弁当代にしても、私の体の燃料費として考えてみると、今日の私はこの家を作ることしかやっていないので、家の制作費と言えなくもない。「生活費」とはなんなのか。そんなもの存在しないのではないか

・夜、CAI部屋に電源があるのをいいことにパソコンでディズニープラスのドラマ「ボバ・フェット」を見始めてしまった。明日は11時に来客があるというのに。四話の途中で夜2時半、眠気が限界に達したので中断。しかしボバ・フェット、面白い。各方々へのリスペクトに溢れていて、観ていると元気がでる。

2月6日

・場所は今家を建てている下の駐車場のような雰囲気で僕は何らかの日帰りツアーの案内役のようなものをやっていて参加者が7、8人いる

。弟も案内役のなかにいる。休憩だか何だかを挟み、ツアー再開というところでお客さんは大きなバンに既に乗り込んでいて僕は少し遅れて2台目の車に乗り込もうとするのだが建物の窓から村上さんは助手席の方に座ってくださいと言われる。運転席には知らないおばあちゃん。僕が席に座るなりすぐに発進し駐車場を出ようとするとき、入り口のど真ん中、門の手前に1台のママチャリが横倒しに倒れていて、あ、自転車があります止まって下さいとおばあちゃんに言うところで目が覚める。

・雪すご。雪sugo!50センチくらい積もっている…。

・10時半まで寝て、11時に来客対応。雪がすごいので来ないかと思っていたけど、約束の時間ぴったりに現れた。どこで知ったんですか?と訊いたらアート関係のイベントのページと、「札幌 アート」で調べてたらたどり着いたと言っていた。なぞ。少し、声がつらい。でも「おもしろいですね」と言っていた。「午後にフライトがありますので」と、5分ほどで去る。

11:17温床内温度12.1度。

・温度はあがっていない。すぐには上がらないか。

・外気温を見ようとして外の温度計が落ちていたので雪の中を掘り返して救出したら2.9°cをさしていた。氷点下ではないという感動。やはり雪の中は少し暖かいらしい。

・温床を少し切り返し、平にならし、温度計を真ん中付近5センチのところに指してカバーをしたら、25度を指した。当分このまま放置して温度上昇を待つ。

・とんでもない雪なのだが三日ほど書いてなかった日記をまとめねばと思ってオフィスへ歩いていたら車が立ち往生していた。少し手前にもう一台、雪にはまっている車がありそれをほんの避けようと少し道から逸れたらハマったらしいと予想。一緒に押しましょうかと言ったら、「今ヘルパーを出そうと思っている」と女性が。(ヘルパーってなんだっけと一瞬考えたが、天神山で自分が雪にはまったときにそのワードが出てきたことを思い出す。雪を車から救出するための道具で、こちらの人は結構な確率で持っている。)夫婦(たぶん)で乗っていて、二人とも笑っている。僕も笑ってしまった。雪が凄すぎて笑うしかない。雪が凄すぎると、人は笑うのだ。「大丈夫です」と言うので「すごい雪ですね」と言って去ったら「本当にね」と言う。少し歩いていたらまたもう一台、車がはまっている。こちらでも「押しましょうか」って言ったら、奥さんのほうが「ねえ、本当にすごいですね」と言う。「どうしよっかなちょっと力を借りてもいいですか」と言ったところでJAFの車が近くに来た。JAFの人は、「電話しましたか?」と、先ほど僕が話しかけた人に訊いている。JAFの人は誰が電話をした人なのかわからないらしい。奥さんは「うちもついでにやってもらおう。お金払えばいいんだよね?そういうもんじゃないか笑」と言ってJAFの方へ歩いて行った。僕は「がんばってください」と言ってその場を去る。

・この10 M の間に車が3台も立ち往生している。

・積雪で道が変わっており、間違えようのないオフィスへの5分間の一本道を間違えてしまった。

・14年ぶりの積雪という情報。佐野さんからの。しかし、目の前のこの雪と14年ぶりという情報とは分けて考えたい。目の前のこの雪は情報ではない。世界を情報とそうでないものに切り分け、断定する仕草を体得したい。この凄まじい量の雪を見ると思う。

・さすがの札幌の人でもこれは不測の事態みたいだ。印象的なのは僕も含めみんな笑っているということだ。これだけの積雪を前にして、笑ってしまうしかないという。

・13時ごろオフィスに着く。

・なんとなく、予感と呼ぶにも満たない微かな種のようなものだが、今回の広告看板の家札幌は、僕の最後の「アートプロジェクト」になるかもなと。

・近くの席で男が、年収とか物件とか価値という言葉を使って捲し立てるように話していて辛い。その声もつらい。話の内容と一致している声。

・16時ごろオフィスを出る。雪がすごすぎて眠くなる。

・帰り道、メガデスを聞きながらコンビニに寄る。今日は日記を書くのと、ボバフェットをみる日にしようと決意する。作業は休みにして、しばし温床の様子をみる。

・日曜日なのもあるのかみんな家から出て雪かきをしている。子供から老人まで。また一台車がハマってた。少し血痕も見た。みんなドロイドのように雪をかいている。なにはともあれ、とりあえず雪を掻くしかないという感じだ。何をやるにも雪を掻かなければ始まらないのだ。

・家の屋根にも冗談みたいな量の雪が積もっていたので掻こうかと思ったが断熱効果がありそうなのでやめておいた。しかし、一応この家、「中からカッターで壁を切り裂いて脱出できる」という条件をクリアして「テント工作物」扱いにするために農業用ビニールで作ったのに、こんな積雪では中からカッターで壁を切って脱出するのは難しいだろう。

・ここで暮らしていると灯油の給油車を頻繁にみる。彼らは市民の命を背負っていると言っていいだろう。

・家で湯を沸かしカレーを食べ、その湯を温床にやった

・誰かと雑談がしたい

・プロジェクトを始めてからぱらぱらと知人たちが遠方から連絡をくれて嬉しい。人に告知メールなどできていないのに、どこからか僕が札幌でやっていることをキャッチしている。今日の札幌の雪はニュースになってたので思い出したのだろうけど。ニュースなどを見て、そこにいる人の顔を思いだすこと。思い出してしまうこと。これが結構重要なんじゃないか。

・テレビやらネットで見かけるような「編集された情報」を「生」の経験に「戻す」作業。調理されたものを、自らの体験に基づいてナマモノに戻す仕草。

16:10、温床内温度28.1度、ちなみに風除室(居間)はマイナス0.1度。すこし上がってくれた。

・先ほどまたコンビニに行ってみたが相変わらず雪だし、しかもまだ降り続けている。今日は雪にはまってる車を4台見た。昨日までの一ヶ月で1台しか見てなかったのに、一度カフェに行って帰ってきただけで4台。よっぽどらしい。

・自分の家で湯を少し、コンビニで買ったレトルトカレーを夕食に食べる。温床に声もかけつつ、サッポロクラシック500mlとオリオンビール350mlも。北海道と沖縄の味。米は、先日炊いたものが自然に冷凍されていたので、水をかけて火にかけて解凍した。

●21:58、温床内温度30.5度。すこしずつ元気になってくれている。ちなみに風除室(居間)は、火の影響で少し上がり5.2度。

・今日もCAI部屋で寝かせてもらう。何か日数をかけたプロジェクトをやろうとする時、メタな拠点はやはりあると便利だ。

体重59.45キロ

生活費

・蔵式珈琲店にて海老とトマトのドリアランチとオレンジジュース、プリンアラモードパフェ:1430円(ポイントが10個貯まったので440円値引きしてくれた)

・ローソンにて「スパイス楽しむキーマカリー」とビタミンレモンと煙草:1501円

・ローソンにて牛乳、オリオンビール、厚切りビーフジャーキー、ピザポテト、野菜ジュース、サッポロクラシック、レトルトの「肉厚!ビーフハンバーグ」:1803円

2月7日

・学校のような建物の中に入っているごはん屋さんのディスプレイをデザインしていて、3人くらいで話し合っている。僕は、海苔に似た薄っぺらい食品を指し、これを店の名前で切り抜いて看板にするのはどうかというアイデアを、デザイナーなのかわからないがその道のプロっぽい女性に相談したが、地味だと言われる。現場を見に行きましょうかという話になり、現場に行くのだが気がつけば僕はそこにあった空の浴槽に服を着たまま入っていた。次に瞬間には目の前に安藤忠雄さんがおり、シャワーで僕の頭に水をかけてくる。安藤さんに水をかけられるのは光栄ですよと言う夢。

●9:47、温床内温度33.9度。少しずつ上がってくれている。ありがとうありがとう…。ちなみに外気温は1.7度、風除室(居間)は、日光が差し込んでいることもあり、7.2度。

・フルグラを食べ、CAIの部屋を借りて昨日までの日記をまとめる。12時半。これから家に戻り昨日買ったレトルトのハンバーグを食べる米も炊けたら炊く。

・大家さんのお父さん?が道路の雪かきをしている。

●12:43温床内温度35.1度。

・育て中の温床の隣に座り、カセットコンロでお湯を沸かし、米を炊き、レトルトのハンバーグを作り、野菜ジュースと一緒に昼ごはん。

・ハンバーグを食べていたら大家さんのお父さんがノックで訪ね「だいぶ温まったの?」と聞いてきた。「温度が下がってしまったのでもう1回切り返して様子を見てるところです」と答えた。「この後何ヶ月ぐらいやるの?」と訊かれたので「あと2週間ぐらいで」と言ったら、「終わったらその堆肥が欲しい。袋を持ってくればいいか」と聞かれた。「はい必要なぶんの袋を持ってきてもらえれば」と答え「雪かきありがとうございます」と付け足した。彼はふふふと笑いながら去っていった。

・ご飯を食べた後、雪に埋もれていた鍬を掘り出し、温床を開け、少しだけ切り返し、湯たんぽを取り出し新しいお湯を入れ、もう一度入れる。これから木材の買い出し。温床が私の体重で沈まないように、ベッドを作ろうと思う。

・スーバービバホームにて自販機で「ザ・ソーダメロン」80円を飲む。

・欲しかった木材「プレハブ用浅木」は、スーパービバホームではなくジョイフルエーケーにあることを思い出し、何も買わずに店を出る。

・ジョイフルエーケーへ。例の1本160円の「プレハブ用浅木」を12本と、「ダイヤモンドフェンス」と名付けられた黒いフェンスを購入。

・帰りに三井アウトレットパークを通りかかったので、久々にショッピングにでも興ずるかと思い立ち、入って服屋をいくつか見て回った。モール内はとても空いていて、店員たちは暇そうにしていた。僕が「CAI」とデカデカと書かれた泥のついたスノーブーツでどかどかと歩いているのに対し、他の客や店員はみな洒落たブーツやスニーカーに小綺麗なダウンやコートという環境下で自分は場違いではないかという思いが胸をかすめ、買い物をする気が失せる。髭も全く剃ってないしショッピングをする服装ではない。

・もうすこしラフに古着屋でも行こうかなと思い、検索し、近くのセカンドストリートに入ったのだが、どれがかわいい服か、どれが自分に似合う服なのか、ということが全くわからなくて、結局何も買わず家に帰る。

・やってみてから気が付いたのだが、僕はショッピングを楽しめるような気持ちではなかった。いまの僕の関心はほぼ温床の菌たちと、この家をどう寝泊まりできるものにするかという、(嗜好品としての)ファッションよりも命に近い問題に向けられていて、仮に普段の自分なら「超かわいい」と即買いする服がそこに売られていたとしても、今の僕はそれに反応できないだろう。

・これに気がつけたので、服屋をぷらぷらしたのは時間の無駄ではなかった。ファッションを楽しむ精神状態になるには生活環境が最低限整ってからでないと難しい。

・ツイッターでこのプロジェクトのことを書いてみたら数人から連絡をもらい、ありがたいことにこの日記を読んでいる人がすくなくとも4人はいることが分かった。「四天王」という言葉が浮かぶ。

・四天王、なぜ三天王でも五天王でもなく、四天王なのか?

・買い出しから帰り18時。街なかに出て噂の地ビールの店「ビアセラーサッポロ」で晩御飯と酒でもと思っていたのに、車の後部座席で未開封の「サッポロ黒ラベル」が一本転がっているのを発見してしまい、開けて飲み始めたら街に出るのが面倒になってしまったので今日も弁当を買うか家で何か作って食べようかと思う。

・焼肉の誘惑をはねのけつつ「東光ストア」へ。ヘッドフォンとメガネとマスクという三つ道具を全て支えている耳、役割多すぎてかわいそう。

・「Long-forgotten fairytale」の「decked out like a christmas tree」というフレーズ、たまらなく好きだ。回転するように踊っている人のイメージ。

・生活それ自体を成り立たせるだけでものすごく忙しい毎日だが反比例的にというべきか意外にも生活のことで忙しくすればするほど映画や音楽や本など文化的なものに触れたいという欲望が強まる。本は一行だけでもいいから読む時間を作りたい。でも服は買えなかった。なぜだ。

・東光ストアで、200グラムのオーストラリア産牛ステーキ用肩ロースとスイートコーンを買ってきたので今日は贅沢晩御飯にする。今日だけは牛肉を買っちまうぜ。焼肉屋などには頼らない。まあ頼ってもいいんだけど。何も敵に回さなくていいんだけど。とりあえずいまは自分で贅沢を作る。カセットコンロに鍋をのせ、ごま油でみじん切りのニンニクを炒め椎茸を炒め、豆もやしを炒め、ステーキをどーんと入れて塩を振り、焼く。最後にコーンを入れ、味噌をごま油にとかしつつ味付け。昼間炊いて残った米に水をまぶして火にかけ、解凍。

・温床の菌に向かって「お疲れ様です!」と発声し、乾杯した。この家には俺とあんたらしかいない。俺にはあんたらがいる。あんたらがいればそれでいい。はたから見れば孤独に見えるかもしれないが、彼らには見えていないものがある。あんたらは一体何人いるのかわからないけど、まったく何億何兆といるんだろう。みんなで過ごしましょう。と、乾杯した。

・目の前にはビニール越しに積もりに積もった雪、落ち葉と菌たち、オーストラリア産肩ロースと米、そしてCOEDOの黒ビール。これらを食べながら「くらしのアナキズム」を読む。これぞディオゲネスの樽。

・ふと温床を見たら36.5°c。「いいね、俺の体温と同じぐらいだよ、今」と声をかける。

・大変心苦しいが今日も温床の上で寝れる状態ではないので食後はその場を離れ、CAIの部屋を借りる。

・明日こそ「ベッド」を作る。明日からはまた彼らと一緒に眠りたい。心底彼らと一緒に眠りたい。

・僕が離れている間もどうか生命活動を頑張ってほしい。

・CAIシャワーを借り、メールをいくつか返して、一時間ぐらいパソコンで事務仕事して0時に就寝。

体重59.45キロ

生活費

・ジョイフルエーケーにて、ブレハブ用浅木とダイヤモンドフェンスブラック:4540円

・スーバービバホームにて自販機で「ザ・ソーダメロン」80円

・東光ストアにてCOEDOビール漆黒、オーストラリア産牛ステーキ用肩ロース、おにぎり二つ、ライター、大豆もやし、トッピング彩りコーン:1471円

・東光ストアにてチョコパイ:213円

2月8日

・友人の家にいて、緑に黄色と赤の差し色が入った子供のインコを4羽ほど手の両手に包んで持っている。マンションの一部屋という感じで他にも人がいたような気がする。このインコはどこで手に入れたのかと聞くと、どこかの屋上にある、彼女が好きな映画にも少し出演したことがあるおじさんがやっているお店からと教えられる。同じ家で僕はもう一人とお泊りをしていて、どこで寝ればいいのかと聞いて、友人のあとについて家の中を案内され、部屋がいくつもあったので、思ったより大きな家だなと言った。ある部屋で、白い壁にアングロサクソン系の男の顔が埋まっていて、僕に話しかけて来る。その部屋には他にもアフリカ系の顔立ちをした背の高い男性と小人症のような背の低い人がいる。僕は、壁に埋まっているように見える男に話しかける。英語で挨拶をする。名前を聞いたのだけど忘れてしまった。壁の男は最初壁から顔だけが見えている状態で他は埋まっているのかと思っていたのだが、近づいてみると壁が男の体の輪郭に沿ってへこんでいるようだった。だから透明人間のようにも見えた。手も動かしていた。その壁の男も含めて彼らは、どうもこの家に居候しているようだったので、僕はその友人に、あなたは何者なんだと尋ねるが答えてくれない夢。

●9:14外気温マイナス1.8度、湿度63、温床内温度47.3度、室内温度2.1度。

朝ごはんに昨日買ったおにぎり(かつお)を食べる。

・ベッド作り開始。温床のカバーを外し、鍬で平にならし、「プレハブ用浅木」1820の木材を七本、カットせずに15センチ間隔で、温床の枠の長辺方向に渡す。その上にもう一度薄く落ち葉をかけて、1820×910の「ダイヤモンドフェンス」を敷く。ざっくりと、温床表面の右側4/5にフェンスがかかったような状態。その上から寝室に使っていた農ビをかける。端っこは落ち葉と枠の間にビニールを差し込むようにしてできるだけ隙間を塞ぐ。

・最後に温床の手前の枠の壁外側にビニペットをうちつけ、農ビを留める。余った農ビは丸めて、フェンスがかかっていない温床の左1/5のところに入れ込み、断熱効果を高める。

・とりあえずベッド完成。

・13時に読売新聞北海道支局の取材。1時間弱話した気がする。明日の記事に載るらしい。

・取材を受けベッドの中に試しに入ったりして14時半。悩ましい。敷ぶとん敷くか、毛布を敷布団にするか、このビニールの上に直接寝てしまうか。直接だと少し硬いのだけど、敷布団を敷いたら熱が遮断されてしまわないだろうか。それとも敷布団ごと温まってくれるのか。

・アースパイプを外したことで空間そのものの暖房は諦めたことになる。立地の厳しさに対して断熱が甘すぎた。また高さがないぶん寝室が狭苦しかった。寝室の壁を取り払い、家の見通しをよくした上で、ベッドだけを温めるという暖かければ良いという方向に完全に振り切る。

・寝室を取り払ったことで、家の骨組みに寄りかかれるようになった。

・下半身を布団の中にいれ、パソコンを開いて日記をかいてみるが手がかじかんで進まない。床もやはり硬い。とても暖かいのだけど。そして暖かいから眠くなってくる。そのまま昼寝に入ってしまいそうだったのでパソコンを閉じ敷布団を仕込む。

・敷布団を挟むと温床の温度が伝わらなくなるかと思ったがずっと敷いていればそんなもの関係なくなるだろう。布団の中がどのくらいの温度になるか測るため、温度計を敷布団と毛布の間に仕込む。

・コインランドリーへ。洗濯機に4日分ほどの服を突っ込み15時45オフィスへ。

・ハニーチーズトーストを食べる。

・日記を描き終わり17:50。まったく、毎度2時間はかかってしまうな。

・オフィスにて、リンスがなくなったことを幸いにも思い出す。リンスを買わねば…リンスを…しかし忘れそうだ

・鶴の湯へ向かう

・リンス忘れた。来る途中までは覚えてのだが聞きはじめたポッドキャストが面白くてすっかり忘れた。Call if you need meの最新回が神回だった。脱衣場のロッカーを開けたところで、あ、と思い出す。

・今日のシャワーはまた一段とぬるかった。めっちゃぬるくて、おまけに水圧も弱く、なんだか嬉しくなった。

・番台のおばあちゃんの、ありがとうございましたぁの言い方が、毎度きっちり同じ響き。完全に仕上がっている。

・今日つくったベッドで寝るのが楽しみすぎる

・帰りの自販機で「ぐんぐんグルト」を買う

うまい

・帰宅。匂いはいつの間にか、ほとんど気にならなくなっている。ビニールの匂いが取れたのと、僕の慣れもあるのだろう。

・夕食はセイコーマートで買った煮玉子2玉分と、「ターゲットがOL」っぽいサイズ感のザンギの小パックと「コスパ!たっぷり野菜サラダ」ときゅうりの酢の物のパックに昨日のスイートコーンを混ぜたやつ、そして米を新たに炊いて、サッポロクラシックと共に。

・今日も菌たちにお疲れさまです!と乾杯

・ご飯食べてたら21時ごろゆうやさんとその友人のペインターの方が来る。夜の来客は初だ。僕はベッドに座りペインターの方は椅子に座り裕也さんは床にしゃがんで3人で少し喋った。ギリギリ3人までなら屋内で話ができることが分かった・来客に備えてお茶を用意しておいた方が良い。

・ゆうやさん、ここが高床式で苦労したと言う話をしたら「やっぱり菌たちも、地球から離れちゃってるから不安なんだろうね」と。その通りだと思った。

・アトロクでミランダ・ジュライの新しい映画がサブスクで観られるという話を聞く。

・CAIの水道を借りて歯を磨き、床に着く。敷布団ごとぽかぽかになっていて、昼間に仕込んだ温度計は23度を指していた。

・ついに来たぜこの幸せの瞬間。あったけーあったけーありがとうありがとうと彼らにお礼を言う。ここで暮らし始めてから最高に快適な寝床がついに整った感。

・噛み締めるこの敷布団の下からくる遠赤外線のような熱、この頭と手を動かし試行錯誤でたどり着き、彼らとともに作り上げたこの熱、生き物の熱、菌たちが活動してる命の熱、プラスのエネルギー、太陽光を浴びているような皮膚感覚、エアコンやガスストーブでは絶対に感じられない。どこかポイントで熱いところがあるわけでなく、温床の体積全体が熱を発している不思議。温床から落ち葉を一枚取り出してみても、それは冷たい。しかし全体で暖かい。まったく神秘。

・吉野弘の詩に出てくる「他者の総和」という言葉を思い出す。彼ら菌たちは、それぞれの個体が自分として熱を発しているわけではなく「他者の総和」として発熱している。

・普通に東京の拠点に導入したいほどの心地よさ。肩の部分が特に発熱著しく、熱いくらいだ。布団越しでも。

・温床のベッドとしては一つ完成を見たのではないか。布団との組み合わせでまさかこのような暖房ができるとは思わなかった。空間を暖めるとか、あるポイントから熱を感じる暖房を作るとかではなく、布団と温床との組み合わせによって、いわば布団内空間のようなものが作れる。うまく言えないけど熱を発する寝袋に包まれているような感じ。これは普通に僕の東京の家のベッドよりも良いのではないか。エアコンやストーブのように乾燥で喉がやられることもない。

・冬の夜に布団に入った時にこれほどの幸せを感じたことはあっただろうか。湯たんぽを仕込んでおいた布団の気持ち良さを超える。

・何と言っても体を曲げた姿勢から足を伸ばしたとして、その伸ばした先も既に暖かいのだ。

・自分の体温と、菌たちの活動による発熱が掛け算のように合わさることによって布団の中が高温に保たれるという、この菌たちとの共同作業の感覚が何とも言えない。自分のこの体も彼らと同じ発熱機関であることを思い出す。取り込んだカロリーを消費することで熱を発するこの体は、炭素を分解して熱を発する菌たちとほぼ同じことをやっている。みんなであったまっている。おしくらまんじゅう。

・あとはこの温度がどれほど持続するかが問題である。また仮に温度が下がったとして、外から上げる方法はあるか、という点も。

・一つ不安なのは屋根の雪かきをサボりすぎたせいで屋根の農ビが伸びに伸びて室内側にかなりせり出てしまっている。寝ているうちにこれが破れて顔面に大量の雪が直撃するというようなことがないか。明日こそ朝雪かきをしようと誓う。

●22:05外気温マイナス3.6度、湿度71、温床内温度48.9度、室温1.6度。布団の中に仕込んでおいた温湿度計は23.8度、湿度60。

・夜中2時半に起きてしまった。腰のところがちょっと温度が高すぎる。靴下を脱ぎズボンを脱ぎ先ほど持っていて上着も脱いで下はヒートテック上はヒートテックとトレーナーだけになったがまだ暑い。温度調整が必要。

・暑くて寝れんので体を毛布と掛け布団の間に入れる。室温はマイナス0.6度とかなんだけど。薄めの羽毛ふとん。熱が下から来る効果すごい。

●生活費

・オフィスにて本日のストレートコーヒーとハニーチーズトースト:950円

・セイコーマートにて水2l、サッポロクラシック350ml、カップ味噌汁(しじみ)、煮卵、ザンギ、野菜サラダ、きゅうりの酢の物:977円

・コインランドリー(JABBA)で洗濯乾燥:800円

・鶴の湯470円

・鶴の湯帰りの自販機にてぐんぐんグルト110円

体重(夕食前)59.6kg

2月9日

・夢はかなり激しくて戦闘的だった気がするんだけど忘れてしまった。

・9時前には起床した

・携帯でガーディアンズオブギャラクシー(多分4回目)を見始めてしまい、中断したのが10時

●室温5.8度、温床内温度53.0度、外気温1.1度、湿度68

・昨夜腰の辺りに温度計を入れておいたのだけど朝見たら40°cだった。熱いわけだ

・ホームセンターで買いたいもの

お茶

来客用コップ

灰皿

ざぶとんかマット

・朝ごはん、昨日の残りの煮卵1/2個とサラダとしじみの味噌汁と白米

食べて11時10分。これから屋根の雪かき。

・足だけ布団の中に入れてご飯食べていたのだけど足元あったかいと眠くなってくる。

・ホームセンターへ行ってほうじ茶と紙コップと、オレンジ色のふわふわしたマット50×60cm二枚組を買ってきた。

・マットをベッドの上に敷いて日記作業。ベッドの一部が居間になった。これで、客が来てもここに座ってもらえる。座ってると下からどんどん熱が上がってきて、室温は5度に満たないが過ごせる。

・客が二組4人ほど一気に来て、手を布団の下とかに入れて暖かいとびっくりしていた。しかし、このマットの上でしばしすごさないとこの未知の熱は体感できないように思う。ぱっと瞬間的に感じる熱とは違う、設置面がじわじわと温められる暖房。

・まだ雪かきを始められず。なんだかんだ時間が過ぎていく。

・事前に見学予約をしてくれていた建築家の高木さんと一時間以上話す。途中、もう一人お客さんも加わり、札幌の暮らしの話や、雪にハマった車をみんなで押して救出できた時はものすごく盛り上がってお祭りのような感じになりますよね楽しいですよねあれは、という話など。久々に雑談ができた気がする…。

・高木さん設計の、ポリカで家からせり出した温室を作り、太陽光で暖まったその部屋の空気を家の中に入れることで暖房になるという住宅の話が面白かった。

・屋根の雪掻かないと、と思って何日もほっといてるんですけどさすがに今日やります、破れて雪で起こされるの嫌なんで、と言ったら「この荷重だと死ぬんじゃないですか」と言われた

・15時半、高木さんといれかわりで香港から留学しているという二人組。日本語があまり…と。ゆうやさんの友達らしい。なぜ札幌にきたのかと聞いたら札幌の景色が好きだからと言っていた。でもインディペンデントな本屋とか、アートスペースとかが少ない、とも。香港帰りたいですかと聞いたら、一人は「帰らない」、一人は「もちろん」と。「いま政府が…。」「いま心配ですよね、香港。」

・と、書いていたら高木さんが再訪、今夜飲みに行くことに。

・日記を書いていたらまた来客。2,30分話し、気がつけば4時半。

・雪かきをする。ようやく。屋根の雪を落とし、屋内から外の様子が少しわかるようになった。

・麦酒亭という、数百種類のビールを取り揃えている最高すぎる店で高木さんと飲む。地下なので圏外。素晴らしい。

・壁やら天井が様々なビールの栓でびっしりと覆われている。

・「だるま」というジンギスカン屋で、「ぜひお茶漬けを」と勧められる。ほうじ茶と肉のタレが合うらしい。

・途中から高木さんの友人でもあるらしいマユンキキさんが合流。

・まゆんさんから「きたこぶし」を酒に入れればベロベロに酔える。という情報。「落としたい子がいたら飲ませるといい」とのこと。

・あと「白樺の樹液もいい」と。お父さんが昔よくとってきたらしい。

・北海道百年記念塔の解体問題などを教えてもらう

・まゆんさんと高木さんと飲み終わってセイコーマートでトイレ借りてホットウーロン茶80円を買って帰る

・酔っ払っている。ビールしか飲んでないのだけど5、6本しか飲んでないのだけど。転ばないように気を付けなければ。銭湯はもうしまっている。あの人たちのもとへ温床のもとへ帰らねばここで寝たら死ぬ

・先程の飲み会、アイヌとして生きるのか否かという選択を、若い人たちが自らに課してしまうという問題。自分の存在を表明するためにアイデンティティをまとうことで、逆にその人の固有性をどこかで捨てるハメになるという問題。だからなんにせよ最終的にはそんな表明しない世界になればいいなという話。「穴と棒」の話でも盛り上がった。

・家にたどり着いて歯も磨かず菌たちの熱の中へ入って寝る。

●外気温測定負荷。室内マイナス1.4度、温床内温度55.1度、ベッドに入れておいた温湿度計は40.2度、湿度38

●生活費

・ビバホーム豊平店にて「吸着ジョイントマット」、煮こぼれ防止器(灰皿として)、顔のついたかぼちゃが「I’m a pumpkin」と話す絵柄などがあるかわいい紙コップセット:2712円

・東光ストアにて「おーいお茶ほうじ茶パック」と煙草2:1293円

・麦酒亭にて6160円(領収書の金額。実際に払った額はこれよりもずっと安かった気がするが覚えていない…)

・セイコーマートにてホットウーロン茶缶:80円

●当然だが体重は測り忘れた

2月10日

・この家を、ここではなく近くの公園に移していて、そこで作業していたら佐野さんがやってきて、何かを作ったよと言ってたような気がするがほとんど覚えていない。佐野さんが工具箱を勢いよく手に持ち、後ろに座ろうとした拍子に、後ろが階段になっていて、佐野さんが後ろ向きに落ちていき、その場にいた僕ともう一人が「大丈夫ですか!」と駆け寄ったことは覚えている。ここには「なんとか数えさん」みたいな名前の、口裂け女的な都市伝説のキャラクターが出没するから、もし出会ったらこの言葉を言いなさいと言われ、言葉を布団にマジックで書かれた。男の人と日比麻音子さんと、コの字型のテーブルに座って雑談しているところへ5、6人の会社員たち(一人は知人だった)がやってきてみんなで駄弁る夢。

・色々な夢を見たが酒が入っていたせいかどれも断片的だ。

・起きて、酒が残っている。体を起こし、飲み干す昨日買った烏龍茶の最後の数滴。

●9:03、室温0.6度、温床内温度56.2度、外気温マイナス5.0度、湿度62

昨日三人で飲んでいる時にウポポイの話になり、まゆんさんが「今度ご案内しますよ」と言った。アイヌでもあるまゆんさんのアテンドで行けば何倍も面白そうだと盛り上がっているうちに「この勢いでもう明日行きましょう」となった。朝、高木さんが車で我々二人を拾ってくれるということになったのだけど、かなり酔っ払ってたしどうなるかなあと思ってたら高木さんから「10時ごろを目指していきます」という連絡。

・みんな「◯時に行きます」とは言わない。聞いたとしてもあまり信じない。雪の影響による諸々で遅れるなんて日常茶飯事だから。だから「○時ごろ」とか「◯時を目指します」という。

・CAIでシャワーを借りて歯を磨いて、雪で見えなくなっていた家の看板前の雪を下ろしていたら、近くに赤くて車高の低いアルファロメオが停まった。久々にかっこいい車見た気がするなあなんて考えながらすこし眺めていたら、運転席から全身真っ黒でサングラスをかけた、マフィアに見えなくもないシュッとしたお兄さんが降りてきて、こちらに手を振った。高木さんだった。

・高木さんは朝一時間ほどかけて雪の中から車を掘り出したという。

・途中のセイコーマートでまゆん氏と合流。

・まゆんさんお洒落だった。マスクと髪の毛が玉虫色。

・僕は「CAI contemporary art institute」と背中に大きく描かれた青いダウンに、CAIと描かれた茶色いもふもふの帽子に、CAIと描かれたマスクといういでたち。それに髪が玉虫色のまゆんさんと、マフィアみたいな高木さんという、謎の三人組が完成した。集合写真は撮り忘れた。

・まゆんさんから「ほおの実」をふたつもらう。実家で採れたものらしい。煮出せばお茶になるという。体を温めてくれるという。

・1時間半ほど高木さんが運転する車で運んでもらい、ウポポイに入る前にマザーズというたまご専門のお店で親子丼を食べる。

・店で食べる親子丼の人生ベストでた。

・ウポポイは、ポロトコタンだったころに一度行ったことがあるのだけど、その面影はほぼなかった。宇宙船みたいな博物館がどんとあり、他には全体に統一性のない建築物がめっちゃ広い敷地内に点在している。

・ポロト湖は完全に凍って雪に覆われており、湖にはワカサギ釣りのテントがいくつも並んでいた。白い雪原に小さくてカラフルな三角形。かわいい。

・屋外に、謎の檻状の物体が10個ならんでいる。レーザーで実物大らしきサイズに切り抜かれたシカやオオカミなどの合板が、茶色い檻のような立方体の壁面に貼り付けられており、合板がない場所には電飾が施されている。夜には光って綺麗ですよ、って感じなのか?謎。

・どうも広告代理店が入り込んで敷地内をあれこれやっているらしい。なんか煌びやかにしようとしているのかもしれない。が、統一性がない。全体を考えるディレクターがいない感じだ。昨年の東京オリンピックの開会式のよう。なぜかアートへの侮辱を感じる。

・チセで見た、ガマのゴザがめっちゃよかった。アイヌはこれを頻用しているっぽい。藁のむしろよりもはるかに丈夫そうで、暖かそう。いつか作りたい。

・鮭の皮で作った靴があり、雪で滑らないように背鰭が靴の裏側に来るようになっているという話をまゆんさんから教えてもらう。

・まゆんさんはここで働いている人たちの多くと知り合いのようだ。

・非常に立派なシアターで、プロジェクションマッピングのようなものも交えてアイヌの踊りと歌を実演するプログラムを見る。ポロトコタンの時よりもはるかに、見世物感が強まっている。彼らの生活のなかにある踊りを、完全にダンスとして振り付け化し、人に見せている感じだ。

・ひとつ許せないのは、後ろのスクリーンの映像。例えば「鶴の舞」が始まったその瞬間、踊る人の後ろのスクリーンに、鶴がスローモーションで羽ばたいている映像がでかでかとプロジェクションされ、そのまま「鶴の舞」が終わるまで、鶴やら自然の風景やらの映像がずーっと流れていた。これは侮辱だと思った。人間の想像力への侮辱。踊り手も、観客の我々のこともなめている。いらんことすな。他にもムックリの演奏中に川やら森やらの安っぽい映像を流したりしていた。

・博物館、火の神への祈りの儀式を流している映像があり、しかし音声がなく、代わりにカタカナ表記のアイヌ語の文章が、煙みたいに登ってくる映像が流れている。その、煙みたいにカタカナが流れる映像のチープさに衝撃を受けたのだが、まゆんさん曰く、神様への祈りの言葉を録音で流すわけにはいかないということで文字だけになっているらしい。そう聞くと面白い。なぜそのことを書かないのか。

・不思議なところに謎の力が入っており、肝心なところに説明がないという体験の連続だった。

・つかれた。

・しかし高木さんは運転もしてもっと疲れているであろう。

・糖分が足りないという問題で三人一致し、途中の輪厚パーキングエリアで激うまソフトクリームを食べる。激うまだった。

・CAIについて17時半前、高木さんとは別れる。「またなにかあれば」と言って去っていった。CAIには丸田さんと詫間さんがきていた。

・まゆんさんにもらったほおの実のお茶を4人で飲む。ほおの実は長い松ぼっくりのようなシルエットで、赤い実がたくさんついている。この実を取って炒るのかと思ったら、房ごと直火で炙り、房ごとお湯の中へ入れて煮出すというスタイル。

・ちょっとミントのような香り、体に良さそうでおいしかった。

・丸田さんと詫間さんと「ほの路」で飲んで帰ってきて21時。端さんがまだ仕事をしていた。CAIのトイレを借りて歯を磨いて、おやすみなさいとドアから出て行こうとしたら、もう寝るんだ早いね随分、と端さん。笑いながら。その言い方がなんだか良かった。おやすみなさいと別れ僕はテラスにある自分の家に戻った。

・写真を撮っておけばよかったとあとから後悔するなんて久々

●21:20、外気温測定不可(つまり、マイナス5度以上ということだ)。室内マイナス1.5度、温床内温度54.8度。

●今日も今日とて体重測ってない。ほの路でお茶漬けとか食べたし60キロくらいだろう。

●生活費

・セイコーマートにて「野菜生活100オリジナル」:110円

・MOTHER’Sにて地鶏親子丼:870円

・MOTHER’Sにて赤たまご4個、たまごかけごはんのたれ:475円

・ウポポイ入場料:1200円

・輪厚PAにてミックスかりんと(北かり):388円

・輪厚PAにて牛乳ソフトクリーム:360円

2月11日

・後ろに乗れるハイエースのような形をした車の荷台に乗ったり降りたりしながら荷降ろしをしている。コンクリートに包まれた空間の中で荷物をどかしたり何かを積んだりブルーシート入れたり出したり。またその中をこの車が通れるように道を作ったりしている。そんでエレベーターに乗った。僕は荷台側にいて、もう一人同じ仕事をしている人がいて、車には知らないおじさんが二人助手席と運転席に座っている。一人が持っていたカレー弁当を見て別の一人が「それカレーしか入ってないけど甘いのか辛いのしか入ってないからもう美味しく見えない」というようなことを言っていた。エレベーターの待ち時間で。またカツオを一本釣りしようと港から釣り糸を垂らしていたんだけど、そこは海ですらなく、それは河だった。だから魚は連れたのだけど、それはカツオではなく鯉だった。あと知らない女の子とティモシー・シャラメみたいなイケメンとの性的な夢もみた。

・めっちゃ寝ためっちゃ。10時間は寝た。

●9:06、室温1.0度、湿度100、温床内温度53.8度、外気温マイナス4.1度、湿度64

・先日取材を受けた読売新聞の記事が届く。『「住むことがアート」実験』という見出し、「名刺広告で生活費」「東京の村上さん、札幌で」が小見出しだった。名刺広告という言葉を初めて見た。

ボバ・フェット最終回を鑑賞。マンドーの「I gave my word」という台詞で泣く

・朝、シャワー、家の整理、布団干し、棚の整理、雪かき、一段落して10:35。 雪かきは、

・卵かけご飯。激うま。MOTHER’Sで買った卵。激うま。

●11:10、室温17.2度、温床内温度53.3度

・断熱材でもある布団が外れたのと、少し太陽光が差しているのもあり、室温が17度まで上がっている。この家のなかだけ春。冬の終わりが近づいている。

・連日酒が続いたので今日は休肝日にするぞコラ

・見学予約の客が、来て、小一時間話し、11:30。「昔の石炭だるまストーブみたいに、中身の落ち葉入れ替え式のストーブがつくれるのでは」と言っていた。

・一昨日までの日記をまとめて13時40分。これから来客に備えて道路の、というか通路の雪かき。

・客を迎えて3時半。「移住を生活する」の1周目で、敷地を貸してもらっただけでなく風邪をひいた僕を家の中に泊めて色々食べさせてくれた二人と再会。7年ぶりか?家族が二人増えていた。今はもう、ああいうことできなくなっちゃいましたね、と。よそもんが泊まりにきて熱出したら、「隠さなきゃ」ってなっちゃいますね、と。全てが変わってしまった、そしてもう思い出せない。どうやって暮らしていたか思い出せない。コロナ禍になる前の生活、人とどうやって連絡を取り、ご飯を食べに行く約束をしていたのか思い出せない。コロナ禍で出会った人とどうやって親しくなればいいのかも探り探りだ。以前は、親しくなるまでは避けていた政治の話が、全ての人間関係の中に持ち込まれてしまったようだ。

・ながらく失われていた雑談を。雑談てどうやってやるんだっけと思い出しつつ。

・噂には聞いていた「パパによるひげじょりじょり」を初めて間近で見た気がする

・帰り際「またどこかで」と森本さんが言った。この旅人感。コロナ禍になる前、荒井良二さんに言われた「またどっかで会うでしょう」という言葉を思い出す。あれから2年か3年、荒井さんとはまだ会ってない。今回の二人は7年ぶりだった。きっとまたどこかで会うだろう。なんらかの制作を続けていればきっと。次は10年後か、20年後かはわからないけど。

・このマンションの公共スペースの階段上に張ったシートの雪下ろしをした。重みでシートが外れて下に人がいたら大惨事になりかねないので。雪、全部で百キロくらいはあったんじゃないか?

・家で仕事をするには耐えられない室温なのでオフィスへ。道中、「回復フィールド」にも寄る。二度目の発動。

・今日は末広湯も鶴の湯も休みの日だ。カレンダーにメモがある。

・昨日までの日記をオフィスで書いて18:50。

・唐突に「線路は続くよどこまでも」が頭の中で流れ、ネットで調べているうちに原曲は線路工夫の歌であることを知る

・車でスーパー銭湯「安らぎの湯処 たまゆらの灯」へ

・風呂に入る前にレストランでごぼうかき揚げうどんを食べる。マンボウとやらでレストランは8時ラストオーダー、9時閉店だった。「花ゆづき」と一緒だ。

・たまゆらめっちゃ混んでる。半分以上は10~20代の若い人のグループ。若い男子特有のあの目つきを久々に見た気がする。

・となりのロッカーでは二人組が、化粧水は五回に分けてつけるといいらしいよ、という話をしている。

・髭を剃った。今日雑談の中で髭の話になり、髭は清潔感がない、と人に言われたことがあると。コロナで髭への風当たりも強くなっているのでは。衛生的な意味での清潔感という観点からヒゲを考えたことがなかった。僕はスポンサーを色々と背負っているのに髭も剃らんでいいのか。いくら多少暖かいからと言って。スーパー銭湯の券売機の前でそう思いたち、120円のカミソリ購入ボタンを押した。

・露天風呂にテレビがあり、オリンピックのスキー中継番組が流れている。若者たち、今回は行けるんじゃない?ああ、だめかあ、やっぱもう歳かあと話している。

・浴室では彼らはグループ行動をする。3人で風呂に浸かりはじめたら、風呂からあがるときも3人一緒だ。誰かが立ち上がると、他のどちらかが、あ、もうあがる?と聞く。コンマ数秒の無言のやり取りがあり、みんなで立ち上がって露天風呂を出ていく。

・スーパー銭湯の露天風呂に行くといつも思いだす。この、風呂場内のグループ行動、苦手だった。友達も多い方ではなかったしそんな経験がたくさんあるわけではないのだけど、特に露天風呂。何故か内湯よりも露天風呂のほうが、一人立ち上がって先に湯船を出る、というハードルが高い。周りが静かだからか、シャワーが遠いからか。

・脱衣場、入った時より混んでる。着替えるときに隣とぶつからないように注意が必要なほどだ。一度、となりの青年のダウンの袖がわたしの体にあたる。

・大学生くらいの男の子が3人並んでドライヤーで髪を乾かしている。

・髪の乾かし方は個性が出るな。決して髪をかき上げず、撫でるように乾かし続ける黒髪の青年と、なぜか頭を頻繁に回転させるように振りつつ、手首のスナップをきかせドライヤーの先も振りつつ、下から指で、すこし乱暴に髪をすくい上げるように乾かす金髪の二人が対照的で面白い。僕は少し前までは髪をかき上げて慌ただしく乾かすタイプだったが、金石の「はいからさん」で言われてからは、かき上げないように注意するようになった。それでも時々やっちゃうけど。

・ドライヤーを終え鏡を見て驚く。自分の髪がつやつやになっていた。なぜだ。備え付けのリンスが良かったのか?とにかくつやつやだ…。

・髭もなくなり別人みたいになった。清潔な青年になった。髪型もなんか良い感じで、なんなら洒落ている。年末に仙川の美容室でやってもらった髪が、ここに来て活かされてきた。後ろだけ伸びるのが速いので、しばらく切らなくても変にならないようにします、と言ってやってくれたのだが、確かに、言った通りそうなっている…長濱さんはすごい…。

・自分の服を取り出すとき、かすかに落ち葉の発酵臭が香る。近くに鼻が利く人がいたら勘付かれるかもしれないレベル。

・もし誰かに、変なにおいしますね。と言われたら、「家の暖房が落ち葉の発酵熱を利用しているもので…すみません…」と蜉蝣のような声で答えようと思ったが、誰にもなにも言われなかった。

・歯も磨いた。洗面台スペースに集まる人々の邪魔にならないよう気をつけつつ。

・ロビーのソファ。となりの席に家族四人連れ。夫婦が

女性風呂すいてた?

ああ。すいてた。

男風呂、若者がいっぱいいてさ、大学生っぽい。

大学近いからね。

それが密集しててさ…

と話している。そうか今日は祝日だった。混んでるわけだ。休日のスーパー銭湯、賑やかで良い。

明日~~があるからさ、お昼二人で済ませてもらっていい?

と女性の方が夫に言うと、5歳くらいの女の子が、やあだ!やあだ!とぐずり始めた。

おやついっぱい買ってもらえばいいじゃん?

と女性、なだめる。女の子、

じゃあその間ディズニーランドに行ってよ…

と言った。子供ってすげえなあ

・一昨年、自らの手で向こうに行ってしまった人のことをふと思い出した。一度展示で一緒になっただけだし、何か話した記憶もないのだけど。これからもふと思い出せればいいなと。

●23:13、外気温マイナス4.3度、湿度70、室温マイナス1.2度、湿度100、温床内温度50.6度。

・家に付き、ベッドに触って驚く。すごいなこの菌たちは…本当に。なんのスイッチもいれず、帰ってから0秒で暖かいところに入れる。ありがとうみんな。

・そして、僕もここに入る。お待たせ、とでも挨拶すべきか。菌たちの「他者の総和」による熱のなかに、光栄なことに僕も混ざっているのだ。僕も、銭湯に温度を持ち帰り、彼らを温めることができる。ともに夜を過ごそう。

・顔がいつもより冷たく感じる…。顔に感じる空気の冷たさと布団内の温度差から、外が寒いのではないかと推論。で、ヤフー天気を見たら外気温はいまマイナス7度らしい。でも室温は0.1度をさしてる。昨日までのほうが全然寒い…酒が入っててわからなかったのか?

体重59.60キロ

●生活費

・オフィスにてオレンジチョコホイップどら焼き緑茶付き:640円

・「安らぎの湯処 たまゆらの灯」入浴代620円

・カミソリ男性用:120円

・ごぼうかき揚げうどん:520円

●日記が十万字を超えた

2月12日

・海辺のような、地面が濡れているところにいる。視界は開けていて、地面は石畳だった。3人で歩いていた。2人が先立ち、僕は後から。2人のうち1人は親戚のおばさんという設定のようだった。僕たちがそこにたどり着くと、地面に綺麗にくり抜かれた正円の穴が開いていた。穴は2、30cmというところ。で、そこから時々ポンっと白い棒のようなものが数十センチメートル飛び上がる。それは生き物のようで、白い犬だか鳥だか、よく覚えていないのだけど、何度目かの「ポンっ」でそいつは飛び出し、フィールドの周りをぐるぐると走り回った。我々3人はそれを手懐けようとして、動きを真似したりしてじゃれあっている。うち一人はいつの間にか鳥のような姿に変わっていた。相手も鳥のような姿だったので、動きのマネがしやすい。それは幽霊のようなもので、いつのまにかサイズが小さくなって、我々3人はシルバニアファミリーみたいな小さな丸い家を囲んで見下ろしている。その中にその幽霊のようなものが入っていて、我々は話しかけているのだけど、何かの拍子にそいつが4台の炊飯器と1台の電子レンジに変身する。4台の炊飯器は縦一列に積まれ、レンジはその横にあった。それら家電も、小さな家の中にあるサイズなのでミニチュアのようだった。幽霊は恥ずかしがって家電に姿を変えたらしい。みんなでその小さな炊飯器にキスをしたりなでたり可愛がる夢。

・言葉にするのが難しい夢だった。模型にしたら説明しやすいかも。

・なかなか菌の夢をみない。あるいは家電に姿を変えた幽霊は菌のメタファー?

・朝起きて、顎が痛い。顔面が寒すぎて寝ているときに歯を食いしばっている可能性。顎関節症にはなりたくない。

●7:29温床内温度50.4度、室温マイナス1.5度、湿度100、外気温測定不可(マイナス5度以上)

・じわじわと温床の温度は下がっている。外から棒を入れて中をかき回したり、ふいごで空気を入れたりはまだしていない。そろそろやってみてもいいかも。

・7:25に布団を飛び出しそのままユナイテッドシネマ札幌へ。「コーダ」7:50の回を観に。

・映画館の売店で食べ物を買い、それを朝食がわりにする狙い。

・トイレで顔も洗うつもりだったが到着した時には50分をオーバーしており洗えず。

・売店並んでた、フライドポテトとメロンソーダセット買う

・「CODA」めちゃいい映画だった~~~~めっちゃいい映画だった。シングストリートの彼が出ていた。客は他にも20人くらいはいたと思う。終わって劇場から出て行く時みんな鼻をすすっているのがよかった。入場前に時間なかったから終わってからトイレで顔洗ったのだけど混んでて、泣いた顔面をどうにかするための洗顔に見えそうで恥ずかしかった。

・映画館、札幌来て5本目だ。なんか雪に囲まれている日々のせいか、映画館行きたくなる。

・車まで戻ったところで丁度京都の菊池さんから連絡が来たのでつい今コーダ観てきてめっちゃいい映画だったと送ったらパンフレットが大島依提亜さんだと教えてもらい、買いに戻る。

・そういえば先日のウポポイ、駐車場でタバコに火をつけようとしたら案内の人が「すいません敷地内は全部禁煙なので車に戻ってからでお願いします」と言っていたことを思い出す。車の中でなら吸っていいということなのか。敷地内でも。ウェルベックが昔書いてたことは本当らしい。喫煙者には車だけが残った。

・家に戻って荷物おろし、近所のローソンに行って水とタバコを買い戻ってきてご飯を炊き始め、埋もれていた冷凍庫を掘り出し中からウイスキーを救出した

・MOTHER’Sで買った卵かけご飯と朴の実のお茶。卵食べると体が暖まるなまじで。

・ウイスキー「タリスカー12年」をプラカップで飲みつつ先ほど買ったパンフを読む。齋藤陽道さんのテキストよい。必死で歌ったり何かを話すときって、身振り手振りも自然と混ざるよねえ。

・温床は未だに50°で外気は0度前後、温度差50度。この温度差で発電とかできないもんかしら…。外気と温床内を垂直のパイプで繋ぎ、上昇気流を作って中のタービン回すとか?しかし金沢でつくった風力発電屋台の経験からするとそれで作れる電気はせいぜい2ボルトとか3ボルトとか…。

・ついったー開いたらめっちゃ通知がきていてびっくりした。人間・・・当たり前だがこの世には人間がたくさんいるということを思い出す。

・青柳さんから「明日の夜パフェ食べに行きませんか」とお誘いが入り、うれしい

・14時45分。なんだか頭痛がしておさまらなそうなので、ヘッドフォンをして家を飛び出す。

・「回復フィールド」に向かう。昨日使ったばっかりだけど。歩き始めたら頭痛が引いた

・「鴨鴨川」で鴨と話してるおばさんいた

・そのまま北海道立文学館加清純子の展覧会へ。入り口で検温と消毒と連絡先を書くというステップの窓口に座っているおじさんから「よろしかったらこちらに携帯でもなんでもいいんで」と紙を渡される。記入して差し返すと「本当ね、そろそろどうにかしてもらいたいですよね」と言うので「ほんと早くどうにかなりたいですね」と答えたら「だってね、本来かけちゃいけない人のところに電話かけるんですから」と言った。つらい。

・加清純子展。加清純子が魅力的すぎた。19歳で阿寒湖へ姿を消し、そのまま帰らなくなった作家。エッセイ読んでると救われる。絵画と文章の行き来で観ると胸に迫るものがある。今後人間との恋愛は一生涯しないという宣言文にしびれた。展示は見にくかったけど。

・家に帰って加清純子展のカタログを読んでいたらマユンさんが訪ねてくる。今日がゆうやさんの展示最終日で観にきたよう。三葉虫みたいなサイズと形の、でかいかりんとうを差し入れてくれた。

・まゆんさんと話していたら、再来週東京芸大受験しに東京いくんですよ、という高校生が友達と二人で訪ねてきた。四人で朴の実のお茶を飲んで小一時間談笑した。なにかできることはないかと捻り出したのが、差し入れとしてもらったかりんとうと、先日買ったほうじ茶パックにメッセージと、目の入っていないだるまを描いてプレゼントすることだった。「合格したらツイッターで教えてください」ということで合意。

・その後、ゆうやさんの展覧会お疲れ会。「500m美術館賞」の展示できていた白川さんというアーティストとキュレーターの荒木さんやきーぼーさんも交えつつ。しかし、こんなにたくさんの人に会う生活になろうとは思いもよらなかったな。

・白川さんから

「温床、触ったらぬるいくらいだったんですけど、あれで寒くないんですか」

と言われる。

「そういう近代的な熱じゃないから。古代の熱だから」

と答えた。あれは一瞬触ったくらいで感じられる熱ではないのだ。

・4人で「締めパフェ」を求めてイニシャルサッポロに行くものの、めちゃ混雑しており断念。代わりにすすきのにある「パフェ自販機」でパフェを買う。

・この家に住んでいる僕と、僕を訪ねる人、それぞれ時間の流れ方は当然だが違う。そこを歩み寄って、お互いの時間の流れをすこしだけ共有するのが「お茶」の時間なのだと思う。白川さんとはその時間がとれなかった。

・まゆんさんにまた「ケラピリカ」へ連れて行ったもらった。オーナーの中学の同級生や隣のお店のマスターが集まっていて、さっき釣ったばかりのホッケパーティーが開かれていた。みんなめっちゃめっちゃ良い人だった。僕などまだこの店に来るの二回目なのに常連のような気持ちになったぞ。よそもんが、みたいな顔など一切せず、「俺も東京住んでたんですよ」という切り出しから、お互いの共通の話題を探る。自分が釣ったホッケをみんなでおいしく食べるために。この迎え入れっぷり…。こういう席も久しぶりだ。コロナ禍で失われてしまった。

・ホッケは、ルイベとちゃんちゃん焼きとフライで提供された。フライは「生姜醤油」か「ウスターソース」かで論争が起こり、最終的に生姜醤油が勝利した。

・ケラピリカはまゆんさんが払ってくれた。「今度なんかおごってください」と。

・まゆんさんから「さっぽろどう」と「シーソーブックス」という本屋が良いと勧めてもらう。

●生活費

ユナイテッド・シネマ札幌にて「コーダ」鑑賞料:1400円

・フライドポテトセット(メロンソーダ):650円

・「コーダ」パンフレット:880円

・ローソンにて水2L、たばこふたつ:1178円

・加清純子展入場料:700円

・加清純子展カタログ:1300円

・美濃屋にて:2000円

・パフェ自販機にて「フワ缶(いちごとホイップクリーム)」:900円

●体重測り忘れた

●1:16、外気温マイナス0.8度、湿度100、温床内温度47.8度、室温0.9度

2月13日

・おはようございまーす大量だよ~と外から挨拶聞こえる(自由律俳句)

・CAI の奥の椅子に村上春樹が座っていて、春樹さんにこんなこと聞くのもなんなんですけど、と前置きをしてから僕が何か質問をする。すると村上春樹は「好きな小説を机に置いて、それを別の登場人物の視点で書いてみるといい」と答える夢。

・夢の中で村上春樹がこんなことを言ってたと、男の人に説明している夢。

・学校のような場所で、廊下の床をサメが泳いでいる。僕にとっては硬い床だが、サメにとっては水のようで、体の上半分を常に出しながら泳いでいた。僕が技を繰り出し、サメを切ってみたらプラスチックのおもちゃだった夢。

・昨日ケラピリカでもらったパピコ(大人の濃厚ジェラートピスタチオ味)がすっかり溶けてしまったので外の手すりにクランプで留めて再び凍るのを待つ。

・パピコ、二個で一セットというのが良い。

・昨夜は結構酒を飲んでそのまま寝たせいか目が覚めてもなかなか起き上がれず、24時間労働でがんばっているであろう菌たちの上でごろごろと怠惰に過ごしながら、一ヶ月無料だということで試しに登録していた「アマゾンオーディブル」で少しずつ聞いていた川上未映子「全て真夜中の恋人たち」をついに聞き終わった。聞き始めて1ヶ月、合計9時間くらいあった。小説を誰かの朗読で通して聞くという体験は初めてで、最初はちょっと抵抗があったけど読み手の方が感情を抑えて読むのがうまくて、それが内容と親和性が高くて聞き通すことができた。いい小説だった。終盤、それほど大仰ではないのに緊張感で胸がきりきりする二人の会話。鳥肌立った。

・青柳さんが訪ねてきて少々雑談。六花亭のお菓子と、野菜ジュース三本の差し入れ。また僕の絵本を駅前の紀伊国屋で買って読み、間取りが面白かったと言ってくれた。銭湯のことを「風呂場」と表記しているところ、お笑いでいえばツッコミ待ちだと。

●ようやく起きた11:46、温床内温度47.0度、室温4.7度、湿度83、外気温10.3度、湿度49

・昨日風呂に入らず寝たのだった。

車でスーパー銭湯「北のたまゆら」に着いて12時半。初めて来たけど、かなり良さげ。

・入浴料450円、ドライヤー3分10円。安い。

・風呂は非常に大変に混んでいた。こちらにきて入った風呂場の中で、最も混雑していた。みんな休日の昼はでかい風呂を求めるということか。僕は休日でもなんでもないけど。いや休日なのか?

・プールの匂い強めの湯船でしたが、とても広々としていてシャワーもばかみたいにたくさんあり、過ごしやすい。

・風呂場で本を読んでいる人を二人も見た。一人は内風呂で、60代後半くらいか、白髪に黒髪が混じっているおじさん。カバーを外した文庫本の冒頭1/4あたりを読んでいた。もう一人は露天風呂のテレビが見られる湯船にいた。黒い人工革らしきカバーをした分厚い文庫本を読む50代くらいのおじさん。かつて東京のスーパー銭湯で初めて風呂に入りながら本を読んでいるおじさんを見た時は驚いたものだが、こんなところに二人も棲息していたとは。東京で見たのは2,3年前の9月、露天風呂で年齢は60代くらいだと思うんだけど見た目若々しく、白髪で、近所に住んでいたら挨拶されただけで嬉しくなってしまいそうな良さげなおっさんが文芸誌の「新潮」を読んでいた。全員に共通するのは、眉間に皺が寄っているということだ。

・風呂からあがって、めちゃ広い座敷のテーブルをひとつ占領し、天ぷら定食を食べる。560円。安い。しかしすごい人だ。

・飯を喰い昨日の日記を、窓から日が差し込んで天国みたいに暖かくて気持ちの良い座敷で書いていたら館内放送が入る。「女性風呂にてトラブルが発生しました。誠に申し訳ありませんが、二時間ほどご利用ができません。ご了承ください」という内容。先ほどまでざわざわとしていたロビー一帯が一瞬静まりかえった。

・僕の正面の席の女性も本を読んでる。なにかの単行本。読書人が多いですなあ。

・隣のテーブルから「都営新宿線」という言葉が聞こえる。

・喫煙所広くてたまげた。小さな松屋くらいのサイズならこの中で営業できるレベル。

・「北のたまゆら」を出て、そのまま車で「seesaw books」に向かう。札幌には独立系の良い新刊書店がないなあと思っていたのだけど、あった。めっちゃ良い本屋。詩集1冊、エッセイ集1冊、SF1冊を買う。

・パソコンのバッテリー残り具合と、このあと19時から人に会う約束があることなど諸々鑑みて、コメダ珈琲に行くことにした。16:45コメダ珈琲北12条東店。

・まず充電、そしてさっき買った本を…。読書。これから読書という時間を過ごすぞ、と決めてかかる行為。久しぶりだ…。なんて幸せなことだろう。震える。最初の一行目に嬉しくて歯を噛み締める。

・帰りの車、唐突にブライアン・ジョーンズタウン・マサカーを聞きたくなり、赤と白と青のアルバムを流し始めたら新宿の「ダブリナーズ」で一緒に働いていたヴィンセントのことを思い出す。このバンドはヴィンセントが教えてくれたのだった。「パリはクソだ」と言っていたフランス人のヴィンセント。元気だろうか。結婚してどこか田舎に引っ越したヴィンセント。連絡とりようがないけど。

・18時半温床たちのもとへ帰り、荷物おろして記録写真を撮り、ヘッドフォンかけて文庫本ポケットいれて、18:40パフェへ向かう

●18:36、温床内温度46.1、外気温マイナス1.6度、湿度68、室温0.7度。すこーしずつすこーしずつ温床温度下がっている。24時間働いて酸欠になってきた。

・19時にHILOSHIという、前回の同じスポットで青柳さんと石川さんと待ち合わせ、予約してくれていた「HASSO」という店へ。

・パフェ専門店ではなく、パスタやワインやおつまみも充実のイタリア料理の店。

・関係ないけど「イタリア料理の店」と書くと少し高級な感じがするが、「イタリア料理屋」と書くと庶民派な感じがする。

・僕は赤ワインと、「道産かぼちゃのファゴティーニ、ボロネーゼ風」と、デザートに「イタリア産ゴルゴンゾーラチーズと日高産シナ蜜のクレマコッタセルクル仕立て」を食べる

・めっちゃ美味かった。一人でも行きたい。行く。

・石川さんから「就職」の話をいくつか聞く。今日は三連休の最終日の日曜だが、「金曜休みの三連休よりも、月曜休みの三連休のほうが良い」という。週の初めが一日遅いのは問題ないのだが、週のお尻が早まると、「今週まで」という仕事の締切がつらくなるから。納得。

・言われてみれば、金曜休みのほうが月曜休みよりも一週間が長く感じる。なぜだ。

・インスタグラムには「ストーリー」機能があり、友人のことを自然と思い出しやすく、連絡をするハードルが低い。だから友人とのやりとりはラインではなくインスタグラムのDMを使う。ラインでは、よっぽど強く「その人にメッセージ送る」と思わないと送れない。

・確かにそれはそうだろうな。僕もついったーで人のことを思い出すことはある。でも、そこから、その人に連絡をするということの間には、自分的には相当な飛躍が必要。というか、ほとんど繋がらない。「SNSの投稿を見たから連絡した」ということが先方にバレるのは、すごく恥ずかしいことのように感じる。

・SNSに投稿しないと、あるいはアカウントがないとその人が存在しないことになってしまう違和感に近い。

・SNSの投稿で誰かのことを思い出す、というメカニズムは、システム上仕方のないこととして、それに全てを支配されるのは悲しすぎる。

・誰かのことは、できるだけ自分のタイミングで思い出したい。人のことを思い出すというのは素晴らしいことだ。それはたぶん個人的なタイミングであればあるほど嬉しい。

・景色とか音楽とか、いま食べているものとか、夢とか、そういうものから「ふと」思い出すことを忘れてしまいそうでこわい。自分の感覚のハンドルを人に握られてしまいそうでこわい。この土俵は譲りたくない。保守的な考え方かもしれんが。

●23:13、外気温マイナス3.3度、湿度78、温床内温度45.0度、室温マイナス0.9度、湿度100

●生活費

・「北のたまゆら」入浴料:450円

・「北のたまゆら」ドライヤー3分:10円

・「北のたまゆら」天ぷら定食:560円

・Seesaw books本3冊:4950円

・駐車場料金:400円

・コメダ珈琲店にてレモンティーとコメチキ:990円

・HASSOにて赤ワイン、「道産かぼちゃのファゴティーニ、ボロネーゼ風」、「イタリア産ゴルゴンゾーラチーズと日高産シナ蜜のクレマコッタセルクル仕立て」:4300円

●体重測り忘れた

2月14日

 ・教室で(多分)倫理の授業を受けていて、抜き打ちの軽いテストをやらされる。後ろには幼馴染だった町田くんが座っていた。テストをやろうとするんだが筆記用具が何もない僕は左の棚の上で適当な鉛筆と消しゴムのかけらを見つけ出しひとまずそれで問題を解こうとする。しかしテストの紙がどんどん破れてしまって問題がわからなくなっていく。破れた紙をつなげて問題を読み取ろうとするのだけど紙が全然繋がらない。それだけでなく気がつけばなぜか机がものすごく狭くなっていて、なんでこんなに狭いんだろうと思っていたら後ろの席の町田くんと机をシェアしていた。そのことに気がついて、前にあった空いている机に移り、また紙を繋げようとする。中学の時の倫理の先生がそばまで近づいてきて何かを言ってくる夢。

・7時過ぎに起床。昨日の朝顎が痛かったことを思い出す。もう全然痛くない。昨日は夢のせいで歯を食いしばっていたのか

 ・いつもながら布団の中と室温の温度差が大きすぎて出るのが辛い今7時49分

・ジャンプ+の漫画など読んでたら8時54分。起きるか

●9:16、温床内温度44.1度、室温3.9度、湿度100、外気温0.7度

卵かけご飯を食べて CAI で水場を借りて顔を洗う

・温床の温度が下がってきたので、少し内部をかき回して空気を入れる試み。作業を始めた最初の温度は43.8度。10:46。

・布団を畳んで奥に押しやり、温床の手前1/3ほどのシートを剥がす。それから温床枠の、玄関側の壁。既に開けていた穴と合わせて13箇所の穴を開ける。そこへ長さ2mの金属のパイプを入れ、ハンマーで叩いて奥まで差し込み、ぐりぐりと動かして中をかき混ぜる。12時ごろに作業終了。結構筋肉を使ったので疲れた。

・コインランドリーにて洗濯

・かき回したので、一旦温度が下がった。37度くらいまで下がった。

・僕の体も菌たちを暖める助けになればと温床の上に座り、「銀河ヒッチハイク・ガイド」を読む。散々噂には聞いていたけど初めて読んだ。超おもしろ。モンティパイソンとかデイヴィッドシュリグリーにも通じるイギリス的なひねったユーモア感。異常論文ぽいところもあり最高。1/3くらい読んでしまった。自分としては異例のペース。外から佐野さんとゆうやさんらしき声がしたが「いるかな」「いないね」と言って引き返していったので居留守した。

・洗濯物を回収して、すすきのへ出かける。

・ジンギスカンの店「だるま」に入る。16時。高木さんからはお茶漬けを頼むと良いと言われていたことを忘れていて、気がついた時には白ごはんを半分食べ終わっていた。

・「だるま」を出てからどこかよい酒場はねえかとすすきのをうろうろするも、あてにしていたパブやバーがコロナ禍の「マンボー」とやらの影響で臨時休業の張り紙がドアに張り出されている景色の連続。

・ブラックニッカの看板で有名なニッカバーも臨時休業していた。入ってみたかったけど、札幌滞在中に営業再開はなさそうだ。

・結局一時間半くらいすすきのをうろうろしていたらしい

・しゃあない

・帰ろうと思って市電を待つも、電車内がめっちゃ混んでおり、歩くことにした。三十分。混んでる電車やだ……歩ける距離でよかった。札幌はコンパクトで良い。京都ほど小さくはないけど全然歩ける。でも気温は0度。これでも暖かい方だ。マイナス5度とかなら諦めて電車の中で鮨詰めになっていたかもしれない。

・歩いて末広湯に直行。19時前。

・待合室で一人のおばちゃんが座っていた。番台さんは携帯電話を耳にあて、「タクシーお願いします」と電話してる。僕はお金を払い、脱衣所に入り、着替えてる最中に入り口のドアが開く音がして、「タクシーお願いしますって言われた方!」という男性の声。おばちゃんの笑い声。続い番台さんの「はやい。はやいね」という驚きの声。

・すすきので散々店にフラれ、敗残兵のような気分で馴染みの銭湯まで来てみると、まるで我が家に帰ったような気分。本当に自分ちの風呂感がある。

・ティッシュの位置を知っている喜び。ドライヤーが20円で動くことを知っている喜び。震える。なんにせよ物事の道理を知っている場所にいるということは、心休まることだ。

・「ティッシュの位置を知っている」ことは、親しさの象徴である。

風呂上がり体重58.5キロ

・末広湯の脱衣場の張り紙「おしゃべりしないで!!」(白い紙に赤いマジックで)

・森本めぐみさんがツイッターで面白いことを書いていた。「別の生き物たちと一緒に寝ている感じがする」という僕のフレーズから「外臓」という言葉を思い出したと。まったく不勉強で知らなかったのだけど石倉敏明さんが生み出した言葉らしい。エクリというウェブサイトに載っていた石倉さんのインタビューがめっぽう面白かった。デカルトの「我考える故に我あり」に対して「我食べる故に我あり」というフレーズを置いているのが象徴的で、何を考えるにしても、作るにしても、まずは何かを食べなくてはいけないと(昔「夜戦と永遠」でlこれに近い主張を見たような気がする)。そして「食べることと食べられることは対関係ではない。一対多の関係を孕んでいる。わたしは常に世界に食べられている。我食べられるゆえに世界あり」というようなことをおっしゃっておる…。素晴らしい…。

石倉さんは主に食の観点から考えているようだけど、熱にも言えるのでは。札幌にいると自分の「熱」について強く意識させられる。僕は常に熱を生み出さなければ活動できない内燃機関である。そしてその熱は常に世界によって奪われている。世界に熱を与えているとも言える。

・熱の循環装置として世界を考えてみる。この世界には大いなる熱の循環があり、自分もそこに組み込まれている。

・何を考えるにしても、作るにしても、僕には熱源が必要である。暖まらなければ、食べなければ、僕は何かを考えることも作ることもできない。それは僕の「臓器」が行っている。そして、今回の落ち葉の土着菌による「温床」のベッドは、その役割の一部を肩代わりしている。

・そしてこの札幌という「街」も、僕の臓器の役割の肩代わりをしてくれている。それは銭湯で暖まることや、レストランで調理されたご飯を食べること、暖房の効いたコンビニでしばし暖を取ること。

・街が、自分の「臓器」として立ち現れる。街が体になる。

・これを、僕の「間取り図」という考え方と組み合わせれば、僕は「街に住んでいる」どころか「街を体にしている」ことになる。

・熱でもって街を捉える「地図」を描けばいいのだ。内蔵の裏返しとしての街。私の体としての街。

・カロリーを消費して熱を出している内蔵と、お湯で体を温めてくれる銭湯は、熱源としては同じだ。どちらも、僕が生きるための熱を得ているのだから。

銭湯は僕の「皮膚」である。カフェやバー、レストランは僕の「口」である。そしてこの温床。これは皮膚でも口でもない、新しい臓器。強力な、熱専門の臓器。

・もっといえば、トイレが使えるカフェやコンビニは肛門か。

考え事で興奮しながら家につき、20時12分、温床内温度46.1度!あがってる!えらいぞ!偉いぞお前ら~

・すこし中を掻き回したのが良かったのか?だとしたら、「温度調整可能な温床のベッド」も夢じゃ無い。

・20:00から「広告看板の家名古屋」でお世話になった人々とズームで飲み会。

・沖縄はなんと今20度らしい。20度!!!!!!

・「分単位で区切るような、きっちりした時間は近代の時間」(道家さん)

・完熟堆肥を開発している「曼珠園」という植木屋が調布にあるらしい。匂いや温室効果ガスを出さない温床の暖房は可能か、という議論。

・0時半くらいに解散。僕は温床の上にあぐらをかいて、スーパーの冷凍餃子を焼きながら飲み会に参加した。室温は3度くらいしかなかった。なので吐く息は白く、上半身はあたたかいとは言えないが、輻射熱暖房のような、床からの熱で4時間程度の飲み会には参加できることがわかった。

●そのまま寝てしまったので寝る直前の温度見るの忘れた。

●よって体重も忘れた。

●生活費

・コインランドリーにて洗濯乾燥:800円

・「だるま」にて:生ビール、ジンギスカン、ライス小、お通し代:2180円

・ローソンにてたばこ3こ:1768円

・東光ストアにて、ギネス瓶、「羽付き餃子」冷凍、サッポロクラシック2缶、ビーフジャーキー:1399円

2月15日

●12:22、温床内温度42.8度、室温7.5度、湿度95、外気温2.6度、湿度56

・起きて差し入れの野菜ジュースのむ

・昨日上がったと思われた温床内温度は一昨日の水準に戻っている。朝ものすごく冷えたから無理も無い。今後も注視が必要。

・12:50車で回転寿司の「トリトン」へ、行こうと思って平岸店の駐車場に入ったのだが隣にトンカツ屋があり、そちらへ入店。しかし大変な行列になっている。みな寿司よりもトンカツが食べたいらしい。もしかしたら、僕と同じように寿司を食べに来たがトンカツに心変わりした輩も数名はいたかもしれない。並ぶのは嫌だったので結局トリトンに。寒ブリとエンガワとサバと汁物を食す。暖まった。熱源熱源。

・その後14時にコメダ珈琲店へ。二日分の日記をまとめに。

・カフェラテと「純栗いむ」と「コメダ特製ピザ」

・僕の家は室温の数値は低い。だからパソコンとかドローイングの作業はできない。でも夜は暖かく過ごしている。なんのスイッチを入れずとも、家に帰れば菌たちが布団を既に暖めている。その「快適さ」は、ガスストーブを備えた家に住む快適さとは質が違う。なので僕の言う暖かいと、君の言う暖かいは違う。僕も昔は君のように考えていた。菌たちと共に過ごしてみるまでは。僕も、やる前はこの不思議な熱を想像できなかった。彼らの熱を感じるためには、自分の感覚を更新する必要がある。小さく生まれ変わる必要がある。

・宇垣さんもコロナ陽性になったらしい。アトロクのパートナー陣が次々とかかっていく。昨日の飲み会でも話題に上がったが、「オミクロン」という名前、ラスボスっぽい。これで最後、という感じがある。

・日記書き終えて18:40。14時からいたから、4時間40分の滞在。最高記録か。

・この問題には何百回も悩まされてきたのだが、日記の中に「日記を書いた」と書くのはアリなのか?

・熱源としての世界、熱としての体。明日から札幌の地図を描いてみる。

・19時に、月寒体育館で青柳さんと待ち合わせ。卓球をした。2時間280円で卓球台が借りられる。シューズやラケットは青柳さんが貸してくれた。

・卓球めっちゃ楽しかった。久々に運動のための運動をやった気がする…。僕たちの他はマジなウェアを着た人々がマジな感じで卓球をやっていた。信じられないくらい機敏な動きですげープレーを連発している卓があった。あの人たちを路上で見かけても、あんな早回し再生みたいな動きをイメージすることはできないだろう。僕は今までいったい何人の「卓球が超うまい人」と、そうとは知らずに道端ですれ違ってきたんだろうか。

・からだめっちゃ熱くなった。

青柳さんを駅前まで送り、つきさむ温泉へ。お腹すいたまま真っ黒い湯に浸かる。

●「つきさむ温泉」で測った体重58.95キロ(超空腹)

・脱衣所の自販機で森永「マミー」を買う。

・マミーうま

・帰りにコンビニでカップの「小松菜とほうれん草の味噌汁」と、なんとなく目に入った「一度は食べていただきたい」シリーズの燻製チーズを買う。「一度は食べていただきたい」。今までコンビニで何度、この文言を目にしたことか。ながいあいだその願いを叶えてあげられなかったが、今は「広告看板の家」に住んでいるので、食べてみるか、と素直な気持ちに。

・今の僕はなんでも買ってしまいそうだ。この勢いに任せてすごく良い服とか買ったりしたいもんだが。でも服を買う気にはなれなんだなあ。

・家に帰り、先日炊いた米の残りを温め、お湯を沸かし、味噌汁をつくり、米を入れて食べる。超夜食っぽいメニュー。うまい。

・味噌汁がもたらす猛烈な多幸感に包まれる。

・外に干しているパピコはなかなか凍ってくれない

●23:35、外気温マイナス2.8度、湿度82、温床内温度40.8度、室温マイナス0.7度

●生活費

・トリトンにて寒ブリとエンガワとサバと汁物:1177円

・コメダ珈琲店にてカフェラテと「純栗いむ」と「コメダ特製ピザ」:1320円

・コメダ珈琲駐車場料金:1200円

・月寒体育館卓球代:280円

・つきさむ温泉入浴料:1300円

・脱衣所の自販機で森永「マミー」瓶130円

・ファミリーマートにて「小松菜とほうれん草の味噌汁」と「一度は食べていただきたい燻製チーズ」:517円

2月16日

●9:41、温床内温度38.9度、室温3.0度、湿度100、外気温マイナス0.3度、湿度73

・数日前のご飯を温めて最後の卵を割り卵かけご飯。

・10時半、温床にパイプを指しふいごを取り付け、五箇所くらいの穴から空気を中にシュポシュポと入れてみた。作業開始時38.9度。

・地図を描くための紙とペンを手に入れるために近所の文房具店をグーグルマップで探し、徒歩10分ぐらいの吉田文具店へ。いい店だった。店のおばちゃん、僕が入るなり優しく「何かお探しですか」と聞いてくれたので「A4のケント紙がバラで欲しいんですが」と言ったら、棚から出してくれ、触って厚みも確認させてくれた。ボールペンも買いたかったので眺めていたら一緒に考えてくれた。「文字ではなく線を書きたいんですが、細い線を」と言ったら0.3mmのぺんてるのスリッチと言うボールペンを勧められる。「結構人気ですけどね」と言っていた。そうなのか。「今出ているペンでは一番細いかもしれません」とも。ケント紙3枚とボールペンを310円で購入。手ぶらできてしまっていたので「何か袋ありますか?」と聞いたら、ちょっと大袈裟なほど大きな茶色い包装紙に、丸めたケント紙を大事に包んでくれた。買ったケント紙よりも包装紙の方がずっと大きい。「領収書は要りますか?」と、310円の領収書を切ってくれた。

・レジの隣に「お楽しみ袋」というコーナーがあり、「お楽しみ袋というのは何ですか?」と聞いてみたらおばちゃんは笑って「子供たちが来るもので。お子さん用ですね」と答えた。お楽しみ袋コーナーには透明なビニール一つ一つの袋の中に筆記用具や財布が二つずつぐらい入っている。200円均一。安すぎるのでは。また文房具だけじゃなくて文庫本や漫画や駄菓子屋タバコなども売っていて、万屋という感じだった。念の為「前科者」が売ってないか調べたがなかった。なんとなく、能登半島を歩いてる時にケント紙を買った店のことを思い出す。

・ケント紙だけでなくボールペンも、わざわざピンクの帯のギンガムチェックの細長い紙袋に包んでくれた。袋にはテニスラケットやフライパンの目玉焼きやかじられたにんじんやコップと歯ブラシなど可愛いイラストが印刷されている。

・11時40分家に帰ってきたら温度が38.0°cに下がっている。冷たい空気を入れたせいで下がってしまったのだろう。ここから上がるといいんだけどどうだろう。野菜ジュース最後の一本を飲みながら菌たちに頑張ってくれと声をかける。

・数えたら、このベッドを作ってから9日経っている。一度切り返せば9日は40度以上を保つということらしい。この悪環境でも。でもふいごで空気入れるだけだと温度は上がらないらしい。やはり切り返しが一番効果的なのか。

・オフィスへ向かう

・なにかにつけて「クソが」と想うことが日に一回はあるのだが、そういう時脳内でいつもリリー・アレンが流れることに気がつく。ファッキュー

・14:45、オフィスで日記をまとめおえ、地図を書き始めるがお腹が減ってきたうえに、久々に出したラピッドグラフのインクが詰まっており描けず、やる気もでない。そして思い立ち、ネットでホテルのデイユースを検索。ここから歩いて15分のところに22時まで利用できるホテルを発見。

・道中のセイコーマートで食料を買い込み、15時過ぎにチェックイン。入室してすぐに、ラピッドグラフ0.2mmのペン二本を分解し、お湯で洗い、綿棒とティッシュで詰まったインクを拭き取り、再び組み立て、カレーを食べて地図制作開始。

・ラピッドグラフは線の細さとその安定性と黒色のインクの濃さは他の追随を許さないのだけど、インク詰まりには時々うんざりする。

・地図を描いているときに気が付いたのだが、いちごの断面、炎みたいだ。体を暖めてくれそう。

・ケラピリカの二人が家を訪ねてくれたらしい。佐野さんから連絡。

・ゆうやさんの個展も終わり、CAIで開催中のものは僕のプロジェクト一本になっている。僕も家にいないのに、来客に備えて佐野さんたちが昨日からCAIに13時-19時で居てくれているようだ。なんかもうしわけない。

・風呂に入り10時にホテルをチェックアウトし歩いて快活 CLUB すすきの店へ。筒井さんがでている0時からETV特集が始まる。

人と付き合うのが下手すぎる。何もかもが裏目にでてしまう。人間扱いできていない。やはり私は一度就職した方がいい。

●01:51外気温マイナス2.7度、湿度80、温床内温度33.4度、室温マイナス0.9度、湿度100

・すっかり温床温度下がってしまった。へたに空気だけ入れない方がよかったか。

●体重はかりわすれた

●生活費

・吉田文具店にてA4ケント紙3枚とボールペン「スリッチ」:310円

・オフィスにてココア:490円

・セイコーマートにてクリームステッキ(菓子パン)、煙草、ポークカレー、レッドブル、大粒ラムネ(ド派手フルーツミックス)、ドリトスナチョチーズ味、明治アーモンドチョコ、サッポロクラシック、手巻き寿司(納豆):2026円

・ホテルマイステイズ札幌中島公園別館にてデイユース:2800円

・快活CLUBにて三時間パック料金:1310円

・快活CLUBにてマイクポップコーン購入:160円

2月17日

・オリンピックのような大規模な大会が開催されているらしい体育館が、小さな窓から覗き見れる部屋にいる。それはスポーツと音楽の祭典らしい。部屋には僕の他に何人かいるのだけど、一番喋ったのはカート・コバーンだった。カート・コバーンはミュージシャンではなくスポーツ選手としてこの大会に出ているようで「今回はテニスしかやってねえ」と言っていた。「でも俺にとってはロックスターだ」と僕はカートに言った。体育館ではバレーボールのような競技が行われている。夜に飲み会があるので、早く店に入って先に酒を飲み始めようと外に出て、歩いている途中で「あとでカートと記念写真を撮ろう」と思う夢。

・起きてからもめっちゃごろごろした。ごろごろごろごろ

●11:34、温床内温度30.8度、室温10.4度、湿度100、外気温10.5度

・顔洗いにCAIに入るドアの前の階段をほうきで掃除しているおばちゃんがいて僕におはようございますと明るく挨拶をしてくれた。僕がやって来た道はこの広告看板の家にしか繋がっていないのだが、おばちゃんはそのことを気にせず自然に挨拶をしたように見えた。僕は家ごとこのマンションの住人になったような気分

・12ごろオフィスへ。チョコバナナフレンチトースト食べる

・夕方、丸田さんがデザイナーの友人と来る。その人の話によると、酪農家たちが牛フンの処理を考えた末、発酵で生じるガスを利用してタービンで発電し、その電気を売る施設をつくるところまでやっている事例がいるという。やはり似たようなことを考える人がいるもんだ。

・丸田さんは、僕の家を訪ねたことが、家を改善することへモチベーションにつながったらしく、家の結露対策を今後人生かけてやっていこうと一念発起し、色々とやり始めたら三日でかなり良くなってしまったという。

・ウーバーイーツでスープカレーを頼む。すぐに来てびっくり

・私は熱であり、熱源は私の中にはなく、街の中にある。レストランや銭湯など。石倉さんの「外臓」という概念を借りると街は私を生み出す臓器である。銭湯は「皮膚」であり、ジンギスカン屋は「消化器官」である。私は街から熱を得て蓄熱し、それによって活動する。そしてまた、常に世界から熱を奪われている。奪われるのと同じくらいの量を街から得ることで、私は保たれている。すると私は現象だ。

 わたくしといふ現象は

 仮定された有機交流電燈の

 ひとつの青い照明です

・「春と修羅」をいま読むと泣ける…。遠い昔生き別れた兄弟と再会したような。

スーパーで売られている米、ジンギスカン屋のラム肉や中華料理屋の紹興酒、スープカレーなどには何度も助けられた。食べ物だけではない。銭湯は強力な熱源である。入浴による蓄熱は、私を長時間高く保ってくれる。

・私は肉の断熱材に包まれた熱という現象である。

・「北のたまゆら」へ。風呂ついでに地図を描きに。前回ほどでは無いが混んでいる。

・内風呂に浸かってる20人、シャワー台に20人、合わせて40の裸体群を180度ワイドビューで眺めるのはなかなか壮観だ。いまはみな似たり寄ったりの裸体だが、一人一人それぞれに「ファッション」があると思うとたまらん気持ちになる。ここにいる全員がパンツを履く。めっちゃ眉間に皺を寄せて難しい顔をしている、なんとなくポスドクっぽい感じがする青年もパンツを履く。タオルを頭に載せて目の前に鎮座しているおっさんもいずれパンツを履くのだ。脱衣所には服たちが、それぞれの主を待っている。卸したての服もあれば、もう何年着ているのか誰にもわからないPEANUTSのキャラクターが描かれたトレーナーなんかもあるかもしれない。いやいやいやいやいやいや…文明文明

・銭湯上がり、脱衣所のトイレで知らんおっさんの糞の残り香を嗅ぐほど嫌なことはない

・23時前に切り上げ北のたまゆらを出る。CAI の流しを借りて歯を磨

き23時半に就寝

●23:30外気温マイナス1.6度、湿度72、温床内温度29.0度、室温マイナス0.4度、湿度100

●体重58.95キロ

●生活費

・オフィスにてチョコバナナフレンチトースト、ブレンドコーヒー:1150円

・ウーバーイーツにてスープカリーSuageでゆず胡椒風味せせりカレーと配達チップ:2004円

・北のたまゆら桑園450円

ドライヤー3分10円

2月18日

・アヒルの子供を貰ってきて家で買おうとするが父親にそれは食べるものだというようなことを言われる。しかし僕はそれを飼い始める。いつのまにかそれは小さなイノシシだかブタだかになっていて、昔飼っていた犬と一緒に飼おうとしている。場所は建て替える前の実家の廊下。犬の方が体が小さくブタに気圧されがちなので僕は豚の方を小突いたりして犬が安心して過ごせるように計っている。しかし僕はそのブタがいずれは殺されて食べられるものだということをどこかで分かっている夢

●9:28温床内温度26.9度、室温3度、湿度100、外気温1.3度、湿度58

・温床内に差した温度計の数値は低いが、それはセンサーをさしているところが端のあたりだからだろう。真ん中あたりはまだ暖かい。多分体温よりも高い。40度はありそう。だから横になると背中と腰はぽかぽか。そこさえ暖ければ人間眠れることがわかる。温度計真ん中に指すべきだったか。

・現在9:40、10時から来客があるのだがガスボンベがないことに気がつき急いでコンビニへ。

・昨日のカレー(カリー)の余り食べる

・村上さんがやってくる。ARAMAKIというユニットの村上智彦さん。同じ苗字の人と知り合ったのは、ここ10年で覚えている限り2回目。ルーツを聞いたら、やはり瀬戸内海周辺らしい。廃材集めに集め、大量の木材やら1000箱以上の鮭箱やらが大量にあり、広い畑もあるし使っていない家もある。最近はサウナも作っているという。一度遊びに行ってみたい。発酵熱でサウナ作りましょうという話で盛り上がる。畑の上なら落ち葉を遠慮なく大量に使えるし、米ぬかなどの窒素剤も近所でたくさん手に入りそう。

・11時頃に村上さんと別れる。

・しかし、サウナになるほどの発酵にはまた別の問題がでてきそうだ。温室効果ガスの問題。

・今日は一応「広告看板の家札幌」最終日なので、急な来客に備えてオフィスには行かず、CAIの2階の部屋を借りて文の仕事。

・いま「文の仕事」と書いた。「執筆」という言葉を使えばいいのだろうけど、どうも苦手だ。パソコンを使ってがーっと書く作業のことを言い当てていない気がする。

・18時に事前に連絡をもらっていた二人が来客。SIAFにボランティアで関わっているらしい。そのほかに客はこなかった。

・子供であることをやめろ。言い切れ。ここまでに過ぎた時間を受け入れろ。背負え。過去も周りの人々も。この機会を使って、ひっくり返せ。自分が書いた文によって、自分を作り変えろ。

・原稿かけた…。私は肉の断熱材に包まれた熱という現象である。結局締め切り当日になってしまった。魂抜けた。風呂に行く気力がわかん。

・最後に来たお客さんがくれた差し入れのビールとおつまみを晩御飯にした

・そして気がつけば21時。CAIからは誰もいなくなっていた。

生活費

ローソンにてガスボンベ:298円

体重59.1キロ

●3:04外気温測定負荷(マイナス5度以上)、湿度測定負荷、室温マイナス3.3度、温床内温度23.6度。

・温床ずいぶん下がってしまった。真ん中も体温より冷たい。明け方に起きてしまった。流石に寒い。初めて布団の中で寒いと思った。ダウンを着てようやく普通に眠れる。

・こうして「広告看板の家札幌」の「会期」はしれっと終了し、外に干してあるパピコは最後まで凍ってくれなかった。もう気温が上がってきており、最高気温が0度以上の日が続いている。春が近い。

2月25日20時59分

18日に会期を終えて21日ごろから片付け始め、家の中の棚やら何やらを片付けて車に積み、温床のベッドも解体して中身の落ち葉は丸田さんの家に2/3ほどを運び、1/3ほどをここの大家さん用に袋詰め。しかし札幌市民も史上最悪レベルだという暴風雪と大雪に阻まれ家本体の解体は進まず、結局雪が溶けたころにまた札幌に来て片付けることに。25日「新さんふらわあ ふらの」苫小牧→大洗夕方便船内。行きに乗った「さんふらわあ だいせつ」と比べて桁違いに広く、船内も綺麗で自販機の種類も豊富でレストランもある。行きもこれに乗ればよかったごめんなさいと内田に写真を送って謝る。「ふらの」は、完全に一般客をターゲットにした、半ば娯楽をかねた船のようなものなんだろう。スマートフォンを自撮り棒に付けてウロウロしている若い女性客も目にした。ただ一つ、喫煙所だけは「だいせつ」のほうが広くて快適だ。トラックドライバーがあまり乗ってないように見えることがその理由だろう。種類も豊富でどれも美味しい夕食ビュッフェ(思い出せる範囲で、ローストビーフ、チーズフォンデュ、鰹のたたき、蕎麦、白米、きゅうりとニンジンとレタスのサラダ、ブロッコリーとニンニクのドレッシング、蒸し野菜、ハンバーグ、ライチ、トマトとモッツアレラチーズ、エビフライ、味噌汁、ソフトクリーム、シリアル、ドリンクバー、生ビール、があった)を食べてサウナもついてる海が見える大浴場のなかでずっと考えていた。ロシアのウクライナ侵攻が昨日から世界的なニュースになっておりコロナウイルスの件が吹っ飛んでプーチンは一躍、きっと彼の思惑通り時の人になっている2月25日21時。こういうときTikTokは有益で、ウクライナ国内で自宅から窓の外の景色をライブ中継している人がたくさんいた。どのチャンネルからも、同じサイレンが聞こえた。とても静かな雑木林、郊外の風景のなか、サイレンだけが響いていた。その不気味なほど静かな映像に、0.1秒単位で世界中の人々からのコメントが流れ続ける画面。民間人含む150人以上のウクライナ人が死んでいるという報道。人が死んでいる。昨日までは私と同じようにこの世界で生きていた人が殺され、今日はもうこの世界にいない。人が死んでいる。例えば昨日の夜は私と同じようにシャワーを浴びTikTokなんかを見て歯を磨いて眠りについた人がいまは死んでもういない。2度とシャワーを浴びることはない。150人死んでいるなら、友人や家族はその何倍いるのだろうか。いまはわからないが一昔前プーチンは元KGBっていう肩書きも手伝ってネット上ではすこしネタ化した存在として面白がられていたということを思い出して反省しなくてはいけないな、そんでプーチンてどうしようもないやつだったんだなと目が覚めたような気持ちになる。今回のことは苫小牧から大洗のフェリーに乗っている僕の目に見える範囲では今の所何も影響がない、お昼に入れたガソリンも一昨日までとあまり変わらない料金だったので、ネットや、ロビーで閲覧できる新聞を見なければ知りようもない情報としての戦争。プーチンて支持率下がってたんじゃないの?なぜこんな力を行使できるのか。しかし状況がどうであれ私は私の日常に問いを立て、作品を作り続ける。それだけじゃなく昼に寄ったラーメン屋で遭遇した、独特な発声で客に礼を言う店員のことなどを書き留め続ける。はっぴっんにありあー。にひゃっんのおつりでえ。レシートにありあー。ありっっとうっしあー!しかし人が死んでいるということを詳細に想像していくとひたすらに落ち込んでいく。今私がすべきことはロシア大使館前に飛んで行ってデモに参加することか、ジャーナリストになって現地を取材し声を伝えることか、ハッカーになってアノニマスの攻撃に参加することかあるいは莫大な資産を築いて影響力を持ち制裁を加えることかなどと思うのだけど、私には月曜日に歯医者の予定がある。今月中に助成金の中間報告をしなくてはいけないし確定申告も…いったいなにをどう考えればいいのか。知人の奥さんのロシア人が変な迫害にあっていないといいのだけど連絡先わからないなどと、シャワーで頭を流しながらうーうーうーうーとやっていたら、後ろの湯船から「ああ~さいこう~」というおっさんの声が聞こえる。思いもかけない方法でいまこの場所に連れ戻される。私の他にはその人しかいないので、彼は本当に気持ちが良くて声が出たんだろうと思われる。そのおっさんは脱衣所でも一人「ああ、きもちいなあ」とつぶやいていた。たしかに風呂は気持ちよかったなあ。風呂ってのはなんだってあんな気持ちいいんだろうな。とかそんなことを呟いた。声には出してないが。

・船の中で助成金の中間報告をやろうとパソコンをひらくも、船が揺れるので集中できない。

2月26日10時43分

・さきほど、福島第一原子力発電所の沖合を通過した。遠くに建屋が見えた。いまでも毎日数千人の作業員が仕事をしていて、汚染水を処理し続けていると思いつつじーっと見る。ここで働いてみてもよいかもしれないと思いたち、原発の求人をネットで探すと大量の募集を見つける。どうやら継続的に募集があるらしい。「震災後から現在に至るまで長期継続しているお仕事になりますので、今後も安定した収入が見込めます。」という文言すらあった。絶句した。

・ウクライナ大使館がUFJ銀行に支援口座を作っていたが、個人が政府にお金を送るという構造にすこし違和感がありUNHCRに募金をした。またウクライナ大統領が、誰も助けにはきてくれないようだ、我々は首都に残って戦うというようなことを言い、ちょっと感動しそうになるのだが危ないと思った。国家が消えることと、そこに暮らす人間の営みが消えることを一緒にする動き。国家と市民を一体化して、そこに感動の物語を見出したいという欲望。またウクライナは国民総動員令とやらに署名し、「国家を防衛」するために18~60歳の男性市民の出国を禁止して、逃げられないようにしている。ロシア各地でも反対のデモが行われている。誰がなんのために戦っているのか全くわからない。ロシアが孤立して経済制裁を加えられたりサイバー攻撃を受けたとして、そのダメージはプーチンではなくロシアの市民が被り、ロシアがアメリカやヨーロッパへの原油の輸出を停止したとして、その全ての影響を受けるのは欧米の市民。まだまだ我々は馬鹿だったらしい。

 

【フォトギャラリー】

(《広告看板の家 札幌》のために制作したアイテムの一部)

(1月8日)

(1月9日雪かきで現場作業終了)

(1月10日イメージドローイングと丸田さん作成の図面)

(1月10日)

(1月10日骨組み組み立て、ビニール仮止め)

(1月12日骨組みにビニペットを取り付けるための穴あけ)

(1月12日ビニペット取付け。専用のくねくねした針金のようなものでビニールを固定)

(1月14日大雪)

(1月14日温床木枠作り)

(1月15日温床づくりの続き。菌の保温のためにむしろを壁と床に敷く。アースパイプ設置。温度の高い気体は上に登るので、吸気口が一番低いところにあり、勾配をつけ、排気口を一番高くする。落ち葉に鶏糞、米ぬか、切り藁を混ぜながら入れていく)

(吸気口)

(十一月に紅桜公園で集めた落ち葉は、保存していたビニールの中で既に発酵が進んでいるものもあった。白い菌糸が確認できる)

(集めた落ち葉のサンプル。樹種は調べ中)

(1月15日温床ができたところ)

(1月15日温床内温度2.1度。上の数字は室温)

(1月16日温床内温度1.5度。下がっている)

(1月17日温床の断熱が足りず、菌が活動を始められないのではないかと考え、壁と床下に厚さ50mmのスタイロフォームを入れ、作り直す)

(追加した材料。鶏糞15kgと、籾殻4kg、米ぬかも。むしろは一部切って切り藁として使い、残りは断熱用に回す)

(1月18日温床内温度2.2度。上がらない)

(融雪剤として使われている塩化カルシウムに水をかけ、発熱させたものを蓋のビニールシートの上に置いてみたが、塩化カルシウムはそれほど温度も上がらず、焼石に水とはこのことだった)

(1月19日菌が活動を始める起爆剤にするため、CAIの佐野さんから譲ってもらった湯たんぽにお湯を入れ、中央の深さ約30センチのところに埋める。この後さらに、温床の上にビニールを敷き、ホッカイロを十個置いてその上から蓋をした)

(仕込んだ直後の温度は4.4度。ちなみにこの温床内温度を測る計測器は、温床の手前の、深さ10センチのところに埋めてあるので、湯たんぽやカイロからは離れている)

 

(「ケラピリカ」の鮭のルイぺ)

(1月20日空の色が綺麗だった。これは「美しい」と言えるのではないか)

(1月20日14時40分、温床内温度は24.9度まで上昇。起爆剤が効いたと思われる)

(1月21日56度まであがる)

(ようやくドアが完成。世にも珍しい、角材だけで取り付けたスケルトンドアノブ。これで「広告看板の家」の鍵が閉まるようになった。と言っても壁はビニールだけど。)

(1月21日「幌平橋の奇跡」(日記参照)の様子。温床の蓋を外したら、室内が一気にサウナになった)

(1月21日温床に農ビで蓋をした上に、寝室用テントのフレームを制作)

(1月22日。就寝始め。温床内温度は44.9度。上から蓋をして踏み込んだからか、下がっている。テント内の室温は7度くらいだけど、床はかなり暖かい。炬燵みたいに、座るとだらだらとしてしまう場所になった。まだまだ先は長いが、ようやく「電気やガスを使った暖房に頼らずともひとまず居られる場所」ができた。温床と布団の間に温度計を入れてみたら35.7度まで上がった。眠るのに最適の温度。これは人に伝えねばと思い、その場にいたみんなに入ってもらった。端さんが「あったけえ〜!」というリアクションをした動画は撮影させてもらった)

(アースパイプもうまくいった。手をかざせば、ここから暖かい空気が出てきているのがわかる。下に見えているのは酸素濃度計。室内の酸素濃度は18パーセント前後。)

(1月23日ポートレート)

1月23日

1月25日近所の「たいやき工房」の袋

1月25日

1月25日外のビニールの下部を切り取り一部を持ち上げ、通気口に

1月25日昆虫食自販機タランチュラ2700円

1月26日

1月27日寝室にむしろが掛かる

1月27日ふいごにパイプを取り付けて温床内に空気を入れる試み(失敗)

1月27日寝室の内側にプチプチを貼る(断熱及び結露対策)

1月28日

1月28日床の一部にスタイロフォームを敷き、その上から床全面にパンチカーペット(足りないところは合板)

1月28日頭を何度も打ってしまうので、水道管用のスポンジをドアの上につける

1月29日

1月29日ふいごの隙間をボンドG17でふさぐ。空気漏れを防いで温床内に空気を入れるため

1月29日ポートレート

1月31日丸田さんにもらった布(ビニペットの針金とそっくりの模様)をかける

1月31日ちょっと油断したら雪が積もりドアの前はこうなっている

1月31日大雪

2月1日

2月1日温床切り返し

2月1日

2月2日

2月2日冷蔵庫作る(後に冷凍庫であることが判明)

2月3日雪原を見て「回復フィールド」という言葉が浮かぶ

2月3日「鴨鴨川」という川

2月3日家の骨組みの内側にも膜を貼り、二重断熱構造にする。床の残りの部分にもスタイロフォームを敷く。

2月3日シモーヌヴェイユ誕生日

2月4日ようやく机を導入

2月4日牛乳が凍ってしまったので、雪の中に突っ込む

2月4日初めて家の中で調理。胡麻豆乳味噌鍋(ラム肉)。これからは落ち葉の菌たちとともに過ごす時間を増やしたい。

余った鍋と食材を雪の中に突っ込む(冷蔵庫)

2月4日菌たちが活動するきっかけになればと、再びカイロを床のビニールの間に貼ってみる

2月5日ベッドを作り直すため、寝室を解体して再び温床を切り返した(一旦落ち葉を全て掻き出し、もう一度入れ直した)。

2月5日この日は昼から突然雪が降り始め、作業のために外に出していた家具全てに雪が降り積もる。

2月6日切り返した温床の温度を上がるのを待つ。

夜22時には30.5度まで上昇。

2月7日、落ち葉の菌たちと仲良くなるため、夕食を意識的に家の中で作って食べるようにし始める。この日は贅沢をしようと、ステーキを焼いた。

2月8日11時46分、温床の上にベッド制作開始。温床を踏み込まないよう慎重にプレハブ用浅木を渡し、ダイヤモンドフェンスをかけ、その上から農ビをかける。温度45.3度。

12時半、温度46.4度。製作したベッドの上に掛け布団をかける。

9日10時。敷布団も敷く。

10日。アーティストでアイヌのマユンキキさんが朴の実をくれる。火で炙って煮出すと美味いお茶になる。

11日11時10分、温度53.3度まで上昇。

15日7時。室内の様子。温度は徐々に下がっている。

16日12時。外観。

21日12時。温床解体途中の写真。びっしりと白い菌糸が張っている。表面だけでなく内部も同様だった。

母の影響もあり携帯のミュージックライブラリにはサラ・ブライトマンが入っていて、いつものように音楽聴きながら歩いてたらランダムでquestion of honorが流れてきて、懐かしいなあと思っていたのだけどサビのところでぼろぼろと泣けてきてしまった。この歌は騎士道精神の「勝つか負けるかの問題ではなく、名誉の問題なのだ」という態度について歌っている。その道が間違っているのか正しいのかを、私は答えることはできない。ただ言えるのは、これは名誉の問題である。生か死かの問題ではなく、名誉の問題である。

先日たまたま買って読んでいたアガンベンのコロナ後のテキストをまとめた本の中で、彼はコロナ禍の混乱で人々が、文化的社会的な生とは切り離された、ただ「できるだけ長く生きたい」というだけの「剥き出しの生」に、なんの抵抗も示さずに、それに気がつくこともないまますっかりと支配されてしまっていて、感染リスクを減らすというただそれだけの理由のために、アンティゴネーから今日に至るまで歴史上一度も起こったことのない、愛しい人が、人間たちが、独りで死ぬのみならず、その死骸が葬儀もされずに燃やされるという事態が起こっている、リスクなるものの名のみにおいてそれを受け入れることができてしまった、それだけでなく、移動の自由の制限を、リスクなるものの名のみにおいて受け入れてしまった、と書いていた。かつては一つだった私たちの精神的な生と肉体的な生が、近代医学によって二つに分割されてしまった、とも。つまり僕たちは純粋な生物学的な生と、文化的な生が分たれた場所に放り込まれてしまっている。

「延命以外の価値を持たない社会とはどのようなものなのか?」という彼の問いに僕は、「宛名も文面も印刷物でしかない年賀状を互いに送りあう社会だ」と答ることができる。僕は10枚くらいしか年賀状は貰わなかったのけど、そのなかで裏も表も印刷物でしかない、手書きのメッセージが全く添えられていないものが3、4通あった。すごい比率だ。薄ら寒いものと、好奇心が湧いてくる。いったい年賀状にどんな意味を込めているのか。聞いてみたい。その「年賀状」は果たしてどういうものなのか。それは年賀状なのか?印刷物であるだけの年賀状は延命だけを価値とする態度そのものではないか。河原温の「I am still alive」も同じ郵便物で印刷物ながら、これほどまでに次元の違うものが可能なのかと驚いてしまう。

アガンベンの後に、年末に読み始めてこれは人生の一冊になるという確信を得た「重力と恩寵」を風呂場で読んでたら、シモーヌさんも「むき出しにされた生」という言葉を使っていた。「形のくずれてしまった生」とも。

「すなわち、生への執心がほかのあらゆる執着にとって代わってしまうとき、極限の不幸がはじまる。そこでは執着がむきだしにあらわれる。自分自身の中にどんな対象もない。地獄である。」

アガンベンが書いてることとまるっきり同じような気がするのだけど、どうりで彼の卒業論文はシモーヌ・ヴェイユらしい。(ジョルジョ・アガンベンも卒業論文とか書いてるのか!という純粋な驚き)

「歴史の概念について」の原稿を入手したのもアガンベンらしいし、彼は良いかもしれない。思想書は全然得意ではないのだけど彼のは読めそう。

とにかくサラ・ブライトマンの歌と、コロナ禍における移動の自由の制限や葬儀なき火葬と、ついでに言えば花の慶次における佐々成政の「よかろう、この首を打ち取り、末代までの栄誉とせよ」という台詞のメンタリティには関係がある。

やはりどう考えても抵抗する必要がある。それはシモーヌさんの言うことに近い、自分が堕落しないというかたちでの抵抗になるだろう。

あいみょんばっかり聞いてしまう

実家にて1998年10歳の頃に書いた日記から大学時の殴り書きのエスキース帳やメモに書かれた、自分でも半分くらいしか解読できない文字を読んでみると僕は昔から「いっぱいいっぱい」だったことがよくわかり、ひどく安心した。We Are Dinosaurs!と可愛い恐竜のイラストが描いてある青くて薄いノートに書かれた10歳の日記には毎日「今日も学校に行けた」「今日も学校に行けた」とある。全く覚えていないが、人生の峠を一つ一つ越えているような必死さが伝わってくる。極め付けは最後の方、もう書くのも面倒になったのか「なしほんとはある」という一文だけが五日連続で書かれ、日記は突然途切れている。この時の気持ちを覚えている。書くのがもう面倒なので今日の出来事「なし」と書きたいのだけどそれでは嘘になってしまうと思った。だから「ほんとはある」と付け足した。エスキース帳の方には「3/25朝」に電車に乗ってきた「キチョウメンな男性」を観察した文章「メガネを取り、キチョウメンに上着の内ポケットにしまった。どうやらねる気らしい。目をつぶったはいいが、何か気になるのかしょっちゅう目を開けては体を動かしているそんな神経質な人が電車で寝られるわけがない」とか長々と記され、最後に「でもなんとなく僕はその人が好きになった。」と書かれていて、この一文がなぜかマルで囲まれている。他にも魚のシルエットのようなものや三角形が組み合わさった絵などがたくさん描かれ、おそらく建築の設計課題を検討しているページには「あいつが話をややこしくしている.」という一文がある。他に言葉は書かれていない。あいつとは誰で、なんの話をややこしくしているのか全く思い出せない。別のエスキース帳には「相手の精神にどううてるか」という一文の下に丸と線の繰り返しの図形を二重線で消したような跡。そして下に「何で僕はこうなってしまうのか」とあり、「ボウシとしたことが・・・・」「・ねてないから?」「・歩いたから」「・水」と続く。そしてもう一度「何でこうなってしまうのか?」と書かれ、こちらは赤いアンダーラインが引かれている。さらにその下に何故か「南方マンダラ」が描かれていて、「各々の線が交わるのは必然性によらない」とあり、「必然性によらない」の部分にアンダーライン、さらにその下に「必然性によらない」と再度強調している。また別のページには「会社をロックンロール退職した二人(ストロークスとの出会いがきっかけ) よってお金がない」とあり、その下に四角形を重ねたような、複雑な図形が二つ書かれている。昔からずっと、けっこうぎりぎりだったのだ。今に始まったことではないのだ。すぐに忘れてしまうなあ